人の悩みをいつまでも聞いてあげるのは、本当に必要な援助ですか?
たとえば、友人のグチを何時間でも聞く。それは、本当に必要な援助なのでしょうか?
困っている人の力になりたい……そう思えるのは、素晴らしいことです。しかし、ただの親切心だけで援助をしていると、結果的に相手のためになっていないことも少なくないのです。
たとえば、ささいなことで不安になり、すぐに誰かに話を聞いてもらいたいという人がいます。こうした人から連絡があったときに、「すぐになんとかしてあげなくては!」「気が済むまで付き合ってあげなくては」という気持ちで、何度でも、何時間でも、無制限に話を聞いてしまう方もいます。でもそれは、本当に相手のためになっているのでしょうか?
困ったときに、何度でも、何時間でも話を聞いてもらえば、たしかに、相手はいっとき楽になれるでしょう。でもこれが続くと、相手にとってよくないことも起こります。困ったときにすぐにストレスを解消してしまうことで、不安に耐える力や自分で考えて行動する力が育たなくなってしまうからです。
勝手な判断でお節介を焼くと、相手の迷惑になることも
「君をためを思ってやったのに」…相手の気持ちを聞かずにサポートすると、結果的に迷惑をかけてしまうこともあります
他人がむやみに援助してしまうと、結果的に迷惑をかけてしまうこともあります。たとえば、「他人から嫌なことを言われて頭にきた!」と打ち明けられたとき、その人に代わって、嫌なことを言った相手に注意をしてしまったら、気持ちを打ち明けた本人はどうなるでしょう? 自分に断りもなく余計な介入をされたことで、人間関係が悪化し、余計に困ってしまうかもしれません。
つらい気持ちを抱えている人に接する際に大切なのは、相手がどんな援助を望んでいるのかをしっかり確認することです。「話を聞いてくれるだけでいい」と思う人もいれば、「善処するためのアドバイスがほしい」「自分に代わって、相手に注意してほしい」と望む人もいるでしょう。どんな援助を望むのかは、人それぞれです。
相手の望みをしっかり確認せず、自分の勝手な判断でむやみに行動してしまうと、結果的に相手に迷惑をかけてしまうことがあります。
相談する人と援助する人が守るべき、時間の「境界線」
困っている人を援助する際に、もう一つ大切なことがあります。それは「境界線」を設定することです。境界線にはいくつもの種類がありますが、なかでも大切なのは「時間」の境界線です。境界線とは、自他の領域を分けること。境界線は英語で「バウンダリー」といいます。バウンダリーは、壁(バリア)ではありません。一線を引きながら相手の様子を見守り、必要なときには声をかけたり、助けたりすることのできる立場でいることなのです。
そして、「時間の境界線」は、相手のために使う時間を設定することです。際限なくいつまでも話を聞いてしまうと、自分の自由が侵され、相手もストレスに耐える力が育たず、自他どちらのためにもならなくなってしまいます。
「時間の境界線」を引くには、「〇時までしっかり話を聞くから、何でも話してみて」「今日話し合ったことを振り返って、明日また話しあいましょう」というように時間の設定をして話を進めること。すると、相手もその時間の中で効率的に相談したいと思うようになります。自分が求める援助についても、よく考えながら話すようになるでしょう。
困っている人にとって、本当に必要な援助とは何か?
そもそも、困っている人とって必要な援助とは何でしょう? 本人が自信を回復し、自分の力で解決できるようになるためのサポートをすること、ではないでしょうか。これを実現するためにも、「時間の境界線」をしっかり引きながら、限られた時間の中で相談してくれた人の気持ちに寄り添い、相手は何を望んでいるのか、そのために自分がするべき援助とは何かを考えながら、接していきましょう。
繰り返しますが、困っている人にとって必要な援助とは、本人が自信を回復し、自分の力で解決できるようになるためのサポートをすることです。ぜひ、限られた時間を有効に使いながら、本当に相手のためになる援助をしていきませんか?