退職金があれば老後の生活は安泰?
日本経済団体連合会発表の「2016年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」によると、回答企業数は283社で大学を卒業してすぐに就職し、60歳まで勤めた総合職の平均的な退職金額は、2374万2000円でした。退職金は、とても大事な老後の生活資金の原資です。恐らく、50代会社員の多くは、たとえ現在の貯蓄がゼロに近い状態でも、退職金さえ受け取ればある程度、人並みの老後生活が送れるだろうと考えているでしょう。
たとえば2374万円を年平均3%で運用しながら、90歳までの30年間、一定額を取り崩しながら生活した場合、毎月取り崩せる金額は10万円です。
また、厚生年金の毎月の受給額ですが、2017年度の夫婦2人分の標準的な厚生年金は、モデル夫婦の事例で22万1277円ですから、これに退職金からの取り崩し額である10万円を加えると、毎月の生活費に充てられる額は32万1277円。老夫婦2人が暮らしていくには、まあまあの資金だと思います。
中小企業の退職金は大企業の半分
でも、あなたが勤めている会社は、退職金として2374万円も払ってくれますか?経団連の調査に回答した会社は283社。このうち従業員500人以上の会社が80.2%を占めています。しかも経団連に加盟している会社が対象ですから、ある程度、大きな会社になります。
少し古いデータで恐縮ですが、総務省の「経済センサスー基礎調査」によると、2014年時点における日本の企業数は382万社で、このうち380.9万社が中小企業です。かつ、この中小企業のうち325.2万社は、小規模事業者なのです。
もちろん、大企業は従業員数が非常に多いので、たとえ大企業が1.1万社であったとしても、従業員数で見れば1433万人で、中小企業の3361万人も合わせると、全体の3割近くの従業員は大企業所属になりますが、それでも7割の会社員は中小企業に所属していることになるのです。
では、中小企業の退職金はどうなっているのでしょうか。
東京都労働相談情報センターが2016年12月に発表した「中小企業の賃金・退職金事情」の数字が参考になると思います。
まず、退職金の有無についてですが、集計企業のうち退職金制度がある会社は69.8%であり、退職金制度なしは29.5%でした。
また、中小企業のモデル退職金を見ると、退職一時金のみの場合で、定年まで勤めた場合の退職金は、大学卒で1016万4000円でした。この金額は、前回(2014年)調査の1276万6000円に対して20%超の減額です。つまり、中小企業で働き、定年を迎えた人が受け取れる退職金の額は、経団連に加盟している大企業に勤めていた人が受け取る退職金の額に比べて、半分程度になるのです。
中小企業に勤める人こそ資産運用を重視すること
しかも、前出の従業員数で見れば、この日本で会社員としてキャリアを積んできた人たちの約7割が、「2000万円の退職金は受け取れない」ことになります。1016万円を年平均3%で運用しつつ、毎月10万円ずつ取り崩していった場合、残高がゼロになるまでに要する期間は9年9カ月です。経団連企業のように2374万円の退職金があれば、同じ年平均3%運用で、毎月の取り崩し額を10万円にしても、30年は持つのに、中小企業の平均的な退職金額では、退職してから退職金が底を尽くまで10年もかからないのです。
だからこそ、多くの人にとって、退職前にきちんと自分の資産を築くことが大事なのです。
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