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消えゆくメディアとメルカリとゲーム屋さん

リユース業界、つまり中古品市場を扱う業界が、フリーマーケットアプリのメルカリにマーケットをとられて苦戦している、というニュースが話題になっています。そのリユース業界大手の中には、ゲームユーザーに馴染みの深いゲーム店のゲオを経営するゲオホールディングスも含まれています。一見ゲームと関係なさそうな話に思えますが、実はそうでもありません。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

メルカリに阻まれるリユース業界

メルカリの図

メルカリは、スマートフォンで簡単に、売ったり買ったりができるフリマアプリです

リユース業界、つまり中古品市場を扱う業界が、フリーマーケットアプリのメルカリにマーケットをとられて苦戦している、というニュースが話題になっています。そのリユース業界大手の中には、ゲームユーザーに馴染みの深いゲーム店のゲオを経営するゲオホールディングスも含まれています。

ゲオは、総合リサイクルショップの「セカンドストリート」と2006年に資本、業務提携し、2013年には吸収合併しました。ゲームユーザーに馴染みのあるゲオは、実はいつの間にか洋服やバッグなどのリサイクル品の市場へ経営を拡大させていたんですね。

洋服のリサイクルなんていうとゲーム業界と全く関係が無いようにも思えますが、この流れはゲーム業界の変化と繋がっています。今回は、このメルカリとゲオのニュースから、ゲーム業界の変化や、ゲーム屋さんの現状について、お話してみたいと思います。


メディア複合店

メディア複合店の図

ゲーム専門店はどんどん減り、メディア複合店が生き残ります

そもそもなんで、ゲーム屋さんのゲオが洋服のリサイクルに手を出したのでしょうか。ここにはゲーム販売店の状況が大きく関わっています。おそらく多くの方が想像する通り、ゲーム販売店は今とても厳しい状況です。といっても、厳しい状況になったのは今に始まったことではなく、以前から続いていたことでした。

厳しい状況になって真っ先に淘汰されていったのは、ゲーム専門店です。ゲームだけを扱い、ゲームだけで集客する店舗の状況はどんどん悪化し、そんな中で生き残って大きくなったのは、コンテンツを複合的に扱う店舗です。

具体的には、ゲーム、書籍、音楽、映像、これらを扱う店舗ですね。思い浮かべれば、ゲオや、ブックオフ、そしてTSUTAYAなどがこれにあたります。わりと、ゲーム販売店の中でも生き残っている店が多い印象ではないでしょうか?

こういった店舗を「メディア複合店」などと呼ぶことがありますが、そのメディア複合店の扱う「メディア」が、さらに厳しい状況に追い込まれます。


消えゆく「メディア」

メディアの図

コンテンツはメディアに収録されて売られる、という構造はどんどん崩れてきています

メディア複合店が扱う各メディアがどうなっているのか、ゲームを例にあげてお話してみましょう。ゲームを売る店舗の利益の多くは中古です。新品は薄利であまり儲けがありませんが、中古は買値と売値を店舗でコントロールしやすいので、利益を出しやすくなっています。

多くの店舗は、後で買い取りをする為の種まきとして新品を売り、ユーザーが遊び終わったゲームを買い取り、次のユーザーに売るビジネスをしていました。

しかし、状況が刻々と変化していきます。1つは、オンラインダウンロード販売の環境が整い、パッケージをお店で買わずに、データだけを買うユーザーが増えていったこと。もう1つは、コンシューマーゲーム業界の市場そのものが縮小傾向となり、モバイル端末向けの市場が大きくなったこと。モバイル端末向けのゲーム市場に対して、ゲーム販売店はほとんど何も関わることができません。

この話はゲームに限ったことではなく、多くのコンテンツ業界がデジタル化とオンライン配信が進み、ゲーム、書籍、音楽、映像その全てにおいて、ユーザーは店舗を介さずにデータ配信を受けて楽しめる環境が整ってきました。ゲオのようなお店をメディア複合店と呼ぶ、というご説明をしましたが、その「メディア」というものが使われなくなってしまったということなんですね。


デジタル化しないものを売ろうとしたゲオと、それを阻むメルカリ

こういった業界の流れに対応すべく、ゲオが目をつけたのが、洋服などのリユースです。遅かれ早かれ、ゲームを含めたコンテンツ業界はますますデジタル化、そしてオンライン配信の割合が多くなっていくことは明らかです。であれば、デジタル化できないものを扱うことで、解決が図れるのではないか、ということです。

そこで冒頭のニュースに戻ります。デジタル化できないものに関しても、インターネットによるビジネス構造の変化が起こっていました。フリーマーケットアプリのメルカリが、気軽に自分の持ち物を売りにだすことができ、そして買うことができる仕組みを作ったところで、リユース業界に関しても、リアル店舗の市場がインターネット上の市場に食われていくという状況が起こっています。

ゲームの中古に関してもそうですが、こういった業界のポイントは販売よりも買い取りです。品揃えが悪い店にユーザーは足を運びません。まず買取がありきですが、店舗にもっていくよりもメルカリで出品した方が高く売れると判断すれば、そちらに流れる人は多くなります。


ゲームの中古もメルカリは進出している

スマートフォンで遊ぶユーザーの図

ゲームを遊ぶ姿も、売られる風景も、大きく様変わりしてしまいました(イラスト 橋本モチチ)

ゲーム専門店が淘汰されつつある中で、メディア複合店が生き残るも、オンライン配信によってメディアそのものが使われる機会が減っていきます。そこで、デジタル化できない商材に目をつけましたが、そこにもインターネットによるビジネス構造の変化が待ち受けていた、ということなんですね。

さらに付け加えれば、考えれば当たり前のことではありますが、ゲームパッケージの中古に関してもメルカリは市場に食い込んでいます。店舗は買い取り価格に利益をのせて販売するわけで、手数料などを支払ってもメルカリでユーザー同士が売り買いした方が高く売って安く買えるという状況はでてきます。価格を調べて、店で売ったり買ったりするよりもメルカリを使った方が得だ、ということになれば、そちらに流れるユーザーも当然でてきます。

ガイドは子どもの頃からゲーム屋さんに行くのが大好きで、買うお金もないのに、お店をウロウロして、店員さんの書いたポップを読み、プロモーションビデオを何度も何度も繰り返し眺め、面白そうなゲームはないかと探すのがとても楽しかった記憶があります。

しかし、ガイド自身も、ゲーム屋さんに足を運ぶ機会は、昔に比べてずいぶんと減ってしまった気がします。パッケージはオンライン通販で購入することも多いですし、本体に常に入れておきたいゲームはダウンロードで購入します。スマートフォンでゲームを遊ぶ機会も増えました。

もちろん、何年も前からゲーム販売店が厳しい状況に陥っていくということは分かっていたことではあります。ゲーム業界を取り巻くビジネスの環境は大きく変化し、かつて当たり前だったものが、新しい波に飲み込まれて確実に淘汰されていきます。ゲオがリユース業界に進出するもメルカリに阻まれるというニュースは、そういった流れを象徴する出来事の1つのようにも思えます。


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