クラウドゲームがゲームビジネスを変えるかも?

スマートフォンの図

特別意識していなくても、スマートフォンで使っているサービスがクラウドのものだったりする時代です

「クラウドゲーム」、あるいは「クラウドゲーミング」という言葉、ご存知でしょうか? 「クラウド」とは、インターネット上にあるコンピューターにアクセスしてサービスを受ける仕組みです。クラウドメールと言えば、インターネット上のメールサーバーにアクセスして、メールのやりとりができる仕組みですし、クラウドストレージと言えば、インターネット上に自分のデータを保存しておくサービスです。

ポイントは、手元のコンピューターで複雑なプログラミングを処理させたり、手元にデータをダウンロードする必要がなく、そういうことはみんなインターネット上のコンピューターにさせて、自分は好きな端末からアクセスをすれば良い、ということですね。メールの話で言えば、おうちのPCでも、スマートフォンでも、外出先のPCでもIDとパスワードさえあれば、いつでもメールのやりとりをすることができます。これってもう当たり前のことですが、クラウドサービスだからできることなんですよね。

さて、そんなクラウドのサービスが、いよいよゲームにも広がりつつあります。その1つが、ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下SCE)が推し進める「PlayStation Now(PS Now)」です。もっとも、まだ日本ではPS Nowのサービスは開始されていませんし、いつ開始されるかも発表されていません。準備は進めてますからね、というアナウンスだけ。

これが実現していくと、1つ大きな変化は、ゲームハードに縛られず、同じゲームを色んなハードで遊べるようになる、ということが言えます。メールをスマートフォンでも、PCでもやりとりできるのとおんなじですね。それからもう1つ大きな変化があります。それは、ゲームに対するお金の払い方です。

多くの場合注目されるのは、ハードの制約を受けずにゲームが遊べるようになる、という方なんですが、今回はちょっと、ゲームに対するお金の払い方のほうに注目してみたいと思います。PS Nowがもし普及していくと、ゲーム業界にビジネスの面からも大きな変化をもたらすかもしれません。

PS Nowってなに?

PSVitaの図

PS3のゲームが普通にPSVitaで遊べたりするわけです。ゲームに詳しい人ほどビックリします

そもそもPS Nowというのがどういうサービスなのか、まずは簡単にご紹介したいと思います。普通、ゲームというのは、ゲームソフトを買ってきて、ハードに挿入するか、あるいはインターネットでダウンロードして遊びます。PlayStation3(以下PS3)のソフトはPS Vitaでは遊べませんし、PlayStation4(以下PS4)でも遊べません。

PS3のソフトを、PS3で動かして、遊ぶわけです。これをですね、PS3のソフトをクラウド上で動かして、インターネット経由でアクセスして遊ぼう、というのがPS Nowです。

手元にあるゲーム機などのコンピューターはゲームの処理をしていません。ものすごくザックリいうと、コントローラーで操作した情報をオンラインで送信、クラウド上のコンピューターがゲームの処理をし、そしてその結果出てくる映像や音声を受信する、ゲーム機は主に送信と受信をしていて、実際のゲームはクラウド上で動かすと、こういうわけです。

これを使うと、PS3はもちろん、PS4でも、PS3のソフトが遊べるようになりますし、PS Vitaでも遊べるようになります。なんなら、もうゲーム機じゃ無くてもいいんですね、ソニーの液晶テレビ「ブラビア」でPS Now対応のものがあれば、テレビにPS3のコントローラー「DUALSHOCK 3」を接続してゲームが遊べるようになると言います。なんだかすごい話ですよね。

2014年6月10日から12日にロサンゼルスで行われた世界最大のゲームの祭典「エレクトロニック エンターテイメント エキスポ」に際して、SCEは2014年7月31日から、米国とカナダでPS4のユーザーを対象としたオープンベータテスト、つまり広く一般を対象にしたテスト展開を開始すると発表しました。続いて9月からはPS3ユーザー向けに、さらに2014年内にPS VitaとPS Vita TV(海外名称はPlayStation TV)でもオープンベータを開始します。

また、ブラビアでのPS Nowについても、こちらは対象者を絞ったプライベートベータを展開するとしています。

やっぱり、テレビにコントローラを接続してPS3のゲームができちゃうとか、 PS Vita TVが超小型で安価のPS3みたいになっちゃうかもしれない、なんて考えると、そっちに注目がいくわけです。ただ、今回はそことはちょっと別角度で、ゲームビジネスが大きく変わる可能性、メーカーがこれまで手が届かなかった市場へ手が届く可能性についてのお話です。

ゲームのレンタル

PSVitaの図

オンラインに繋がれば、旅行先でも、据え置きのゲームをPSVitaで遊べちゃったりするわけです。

PS Nowでは、ゲームは手元に残りません。パッケージはもとより、ダウンロードすらしないんですからね。オンラインでゲームを利用するだけです。そうすると、ゲームに対するお金の払い方が大きく変わります。

今、SCEが提案しているやり方の1つはレンタル方式です。実際には、レンタルというより、利用料、と言った方が適切かもしれません。なんのゲームを、どのくらいの期間遊ぶ権利を買うか、で値段が決まるわけです。

オープンベータでは、2.99ドルから、19.99ドルでほぼすべてのゲームが遊べる、とされています。300円から2,000円ぐらい、というイメージでしょうか。数時間だけ試すのか、1週間で急いでクリアするか、1か月間ゆっくり遊ぶのか、そういったことで値段が変わってきます。

実はこれ、ゲームの中古市場が担っていた役割を、メーカーがやろうとしている、という見方ができます。

遊ぶ期間で払うお金が変わるゲームユーザー

ゲーム販売店の図

中古市場が、時間によって変化するゲームの価値と価格のバランスをとっていました

例えば、あるゲームを発売日に買って、数時間遊んだがどうも自分には合わないという時、すぐにお店に中古で買い取ってもらう、という選択をするユーザーがいます。発売日直後は中古の買い取り価格が高いですから、ユーザーは事実上、その差額だけを使ったことになります。

あるいは、発売日に買って、そのまま一気にクリアし、1週間後に売る、なんていうユーザーもいます。発売直後よりはやや買い取り価格が下がっているかもしれませんが、それでも少ないお金で遊べるでしょう。

逆に、発売日からしばらくまって、中古販売価格が下がってきたころに買う、というユーザーもいるでしょう。もっと言えば、安くなってから購入し、さらに遊んだあと中古に売る、というユーザーもいますよね。

ゲームの中古市場というのは、ユーザーがゲームをどのくらいの期間楽しみたいのか、どのタイミングで楽しみたいのか、という需要と、それに支払ってもいい金額がいくらであるか、この関係を調節する役割を持っています。

ゲーム店が中古市場でユーザーに提供しているサービスというのは、概ねここにあります。遊ぶ期間やタイミングで変化するゲームの価値とユーザーが支払う金額を一致させる、そういうことです。

そしてクラウドゲームによるゲームのレンタル方式というのは、このサービスに非常に似ているわけです。

クラウドゲームと中古市場の近い関係

PS4の図

そのうちPS4のゲームだって、PS Nowで遊べるようになる日もくるかもしれません

ゲームの販売はみんなダウンロードにとって代わられてしまって、お店なんて今よりもっともっと減ってしまうだろう、ということをなんとなく思っている人は結構いるでしょう。しかし、具体的にその過程を考えた時、「遊ぶ時間やタイミングで変化するゲームの価値とユーザーが支払う金額を一致させる」というポイントにおいてはまだ、パッケージと中古市場に優位性があることに気がつきます。ダウンロード販売は、ちょっとだけ遊ぶ人も、ずっと遊ぶ人も、基本的には同じお金を払うのです。

ですからユーザー側から見ると、PS Nowは、ハードの垣根を越えてゲームが遊べる、というようなメリット以外にも、その料金体系が中古を利用して遊んだ場合と同等か、お得なのか、というのが1つの判断材料になっていくはずです。もしも、1週間でぱっとクリアするならPS Nowが安いし手軽だ、となれば、使う人はいますよね。逆に、中古で売り買いした方が安くすむや、と思えば敬遠されるかもしれません。実際すでに海外ではそういう議論も起きているようです。

もし、クラウドゲームのメリットと、適正な価格の設定によって、中古を利用していたユーザーがPS Nowを利用することでその代わりとする、というような変化が起こるとしたら、それはメーカーがいままで介入できなかった中古市場に流れるお金を回収することになりますから、ゲームビジネスが大きく変わる可能性を秘めています。

もっとも、PS Nowは2014年夏に米国などでやっとベータテストが入るという段階、日本でもサービスを行う予定はしているものの時期は発表されてません。ですから、実際にこういうことが起こるとしても、それはもっとずっと先のことでしょう。PS Now自体、新しい試みでどこまで普及するのか、普及するのにどのくらい時間がかかるのかはまだ分かりません。また、現状はPS3のソフトの一部が遊べるという状態で、最新の大作ゲームが発売日から遊べる、というわけでもありません。

それでも、クラウドゲームによって、ゲーム業界は大きく変わっていくかもしれない、という期待感はあります。SCEはレンタル方式のほか、定額制についても準備を進めているとしています。これも、ゲームの消費のあり方を大きく変える可能性があります。

まだまだずっと先のことようにも思えますが、おうちのPCで使っていたメールが、あっという間にいつでもどこでもどのデバイスからでも使えるのが当たり前になったように、クラウドゲームが当たり前になる未来も、意外とそこまで来ているのかもしれません。

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