時間外労働に厳しい上限規制がかかる

今後の時間外労働規制の方向性を先読みしておこう

今後の時間外労働規制の方向性を先読みしておこう

人事労務管理における旬のテーマが「働き方改革」。本テーマにより昨秋から今年3月まで、政府により「働き方改革実現会議」が全10回開催されました。その中の主要テーマのひとつが、今回解説する「長時間労働の是正」、いわゆる残業時間の規制です。

会議体で公表された実行計画によると、時間外労働については厳しい上限規制がかる方向性となり、今後法案となって国会審議等が進められる見込みとなっています。本記事で今後の時間外労働規制の方向性を先読みしていきましょう。

現時点での時間外労働の法規制を確認

それではまず、現行の労働基準法による規制はどうなっているのか確認をしてみましょう。

1.労働時間
原則1日8時間・1週間40時間まで

2.時間外労働
時間外労働・休日労働協定(36協定)を企業と従業員側で締結し、所轄労働基準監督署に届出をすることで、協定内容の範囲で時間外労働をさせることができることになっています。皆様の企業でも本協定を結んでいることでしょう。

3.時間外労働の上限
現在の上限は、厚生労働大臣の「告示」による「基準」により、1月45時間、1年360時間とされています。また一方で繁忙期には、労使により特別条項を締結していれば、条件を満たすことにより更なる延長ができる仕組みになっています。延長時間については法的規制がかかっていないため、昨今過重労働などのトラブルに巻き込まれている企業が多く見受けられるようになっているのです。

次に、今後の時間外労働の法規制動向について解説します。

36協定の時間規制が「労働基準法」となり、罰則も

時間外労働規制の例外は詳細なので定期チェックは欠かせません

時間外労働規制の例外は詳細なので定期チェックは欠かせません

大手広告代理店社員の過労自殺事件は記憶に新しいところです。この企業では、そもそも前述の36協定を超過した時間外労働が存在し、適正な時間管理がなされていなかったことから発生しました。「労使合意」で36協定が締結されていても、実際遵守されないのであれば類似の事件がまた生じてしまう恐れがありますね。

冒頭に挙げた「働き方改革実現会議」では、36協定の定める時間外労働の限度時間について強い強制力を持たせる、とまとめられたのです。以下その概要を見ていきましょう。

【時間外労働の上限規制】
厚生労働大臣の「告示」から「労働基準法に格上げ」し強制力を持たせることとしました。規制内容は次の通りです。

<原則>
週40時間を超えて労働可能となる時間外労働時間の限度を、原則として、月45時間かつ年360時間とし、違反には次に掲げる特例を除いて罰則を課す。

<特例>
(1)特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない時間外労働時間を年720時間(=月平均60時間)とする。

(2)かつ、年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限を設ける。

【上限】
イ.2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで80時間以内を満たさなければならないとする。

.単月では、休日労働を含んで100時間未満を満たさなければならないとする。

ハ.加えて、時間外労働の限度の原則は、月45時間かつ年360時間であることに鑑み、これを上回る特例の適用は、年半分を上回らないよう、年6回を上限とする。

二.他方、労使が上限値までの協定締結を回避する努力が求められる点で合意したことに鑑み、さらに可能な限り労働時間の延長を短くするため、新たに労働基準法に指針を定める規定を設けることとし、行政官庁は、当該指針に関し、使用者及び労働組合等に対し、必要な助言・指導を行えるようにする。

(企業実務の留意点)
この規制内容は、今後の法改正動向を注視していく必要があります。上記の<原則>限度時間は従来の「告示」と同じですが、法令に格上げされ、厳しい罰則が設定されることに要注意です。

また<特例>はかなり詳細に渡りルール化されますので、特別条項を設ける企業では、今まで以上に単月・複数月、年間を通した定期チェックが必要になります。既記事「ご存じですか労働時間把握のガイドライン」も参考に自社の管理体制の見直しを強くお勧めします。

勤務間インターバル制度

また「働き方改革実現会議」では、勤務間インターバル制度が取り上げられています。労働時間等の設定の改善に関する特別措置法を改正し、事業者は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務を課す、とまとめられました。また本制度の普及促進に向けては、労使関係者を含む有識者検討会を立ち上げ、制度を導入する中小企業への助成金の活用や好事例の周知を通じ取り組みを推進する、とされました。

(企業実務の留意点)
長時間労働が続くと十分な休息が確保できなくなり、過労状態の恐れが生じます。実際、既に勤務間インターバルに取り組んでいる企業も見受けられるところです。法改正後に体制作りをするのではなく先読みして自社の体制を整えていくことで他社との労務管理の差別化を図っていきたいものです。また、平成29年度から新規助成金として「職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」が導入されています。条件を確認の上活用をお勧めします。

今後の見直しタイミングについて

法改正がなされた後は、法律施行後5年を経過した後適当な時期において、この法律による改正後の規定の実施状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うもの、とされました。労働時間管理の問題は、企業が存続している限り永続的テーマだと言えるでしょう。


<参考記事>
ご存じですか労働時間把握のガイドライン
<参考資料>
時間外労働の上限規制等に関する政労使提案(首相官邸)
勤務間インターバル(厚生労働省)
職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)(厚生労働省)





※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。