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ニンテンドースイッチは売れているのか、売れるのか?

発売日から品薄が続くニンテンドースイッチ。欲しいのになかなか手に入らないという人も多いんじゃないかと思います。しかし、本当にニンテンドースイッチはたくさん売れているのでしょうか? 実は、品薄ではありますが、過去のハードと比較してとても多いかというと、そうとも言えないかもしれません。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

品薄が続くニンテンドースイッチ

ニンテンドースイッチの図

発売以降、なかなか手に入らない状況が続いています

発売以来、品薄が続くニンテンドースイッチ。欲しいのにまだ買えていないという人も少なくないかもしれません。いまだに店頭では、入荷するもかなりのスピードで売り切れる店舗が多く、購入者を抽選で決める場合もありますし、一部ECサイトでは希望小売価格よりも高い価格で販売されていることもあります。

今回はそのニンテンドースイッチがどれだけ売れているのか、あるいは、売れていないのか、そして今後どうなるのかというお話をしたいと思います。売れているに決まっているだろう、と思うかもしれませんが、実は少なくとも国内市場で考えた場合に、これほどの品薄状態からイメージするほど売れているかといえば、そうではなさそうです。


発売当初はWii Uよりも売れていなかった

Wii Uの図

実は発売2ヶ月ぐらいの間でみるt、Wii Uの方が売れていることになります

実のところ、ニンテンドースイッチは発売当初、国内市場において、前世代の任天堂ハードであるWii Uよりも売れていませんでした。

Wii Uと言えば、販売台数が振るわずに伸びなかったハードというイメージがあります、しかし絶好調であるはずのニンテンドースイッチはそれを下回っていました。

答えを簡単に言ってしまえば、出荷が少なかったのです。Wii Uは2012年12月8日に発売され、年末商戦で一気に販売台数を伸ばします。しかし、年末年始商戦が落ちついたあたりで、一気にペースダウン、そこから低迷が始まります。

一方ニンテンドースイッチは、2017年3月3日発売で、年末商戦を逃したスタート。発売と同時に品薄に突入するも、年末商戦でスタートしたWii Uよりも、そもそも出荷台数が少なく、品薄なのにWii Uの発売当時に追いつかない、という状況が続いていました。

これが逆転するのが発売9週目、ゴールデンウィーク頃のタイミングです。Wii Uの9週目と言えば1月末頃で、初回需要が大分埋まって、販売台数が落ち着いてきたころですが、ニンテンドースイッチは、ゴールデンウィークに突入するタイミングで「マリオカート8 デラックス」も発売されるということで出荷も多めとなり、販売台数を伸ばし、ここで両者の累計販売台数(発売9週目時点)が逆転する形となりました。

ちなみに、ニンテンドースイッチの現状は、Wii Uよりは何とか売れているものの、Wiiと比較するのであれば、ニンテンドースイッチは遠く及びません。年末商戦に向けて発売され、かつ、「Wiiスポーツ」というキラータイトルを擁し、さらには出荷も順調だったということで、Wiiは現状のニンテンドースイッチよりもはるかに好調でした。

直近のニンテンドースイッチの販売台数を見ても、2017年5月15日~21日で3万台に届かず、出荷の少なさがボトルネックになっていることは否めません。一方で、品薄が続いているということ自体は事実ですから、ポテンシャルに関してはまだまだ期待ができるとも言えます。


スプラトゥーン2でさらに加速を目指す

スプラトゥーン2の図

勢いのついた状態でスプラトゥーン2の発売につなげられるのは、とてもいい流れであると言えます

というわけで、Wii Uと比較すると、逆転したもののどっこいどっこいという数字なわけですが、それでも、WiiはともかくWii Uと比べるのであれば、数字以上に現状はニンテンドースイッチの方が良い状況でしょう。

初期のゲームハードの販売において非常に重要なのは、期待感、ハードの勢い、といったものです。ゲームユーザーはなんとなく盛り上がっているハードに期待しますし、期待感のあるハードを購入したいと考えます。

数字上はそれほど違わなくとも、年末年始商戦が終わった途端に失速したWii Uと、品薄が続いているニンテンドースイッチでは印象が大きく違います。そして、ニンテンドースイッチはこの勢いのある状態で最大のキラータイトルである「スプラトゥーン2」につなげられることが非常に大きいと言えるでしょう。前作にあたる「スプラトゥーン」はWii Uで最も多く売れたタイトルで、150万本以上も売れています。

スプラトゥーン2は2017年7月21日発売予定ですが、2017年5月18日にスプラトゥーン2同梱版本体やスプラトゥーン2のamiiboの予約が開始されると、あっという間に売り切れ、発売前にして価格が高騰するという現象が起こっています。スプラトゥーン2と一緒にニンテンドースイッチを購入したいというユーザーが非常に多いことがうかがえます。

夏のスプラトゥーン2、そして冬に予定されている「スーパーマリオ オデッセイ」へと繋げていければ、ニンテンドースイッチはさらに販売を伸ばすことが見込めそうです。


サードパーティーのタイトルは売れるのか

モンスターハンターダブルクロスの図

モンスターハンターダブルクロスが発表されたことは、追い風ではありますが、決定打とは言い難いでしょう

しかし、不安要素もあります。その最たるものはサードパーティータイトルの充実と拡販でしょう。

もともと、Wiiは大変好調なスタートを切りましたが、サードパーティーのタイトルが充実せず、任天堂のタイトルだけではどうしても全体のタイトル数が少なく、後半に勢いを落としていったハードでした。Wii UはそのWiiの状態を払拭することができず、最初からタイトル数がなかなかそろわず、販売を伸ばすことが困難になりました。

ニンテンドースイッチのサードパーティに関していうと、まず、大きなタイトルとして「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて(以下ドラクエXI)」も、ニンテンドースイッチ版の発売が予定されていることが挙げられます。

また、「モンスターハンターダブルクロス」のニンテンドースイッチ版が、2017年8月25日に発売決定となったことも、追い風となりそうです。ニンテンドースイッチの特性を生かして、オンラインマルチプレイだけでなく、ハードを持ち寄って遊ぶローカルマルチプレイに対応していることは、過去の据え置きハードで発売されたモンスターハンターシリーズと比較して、大きく違うポイントでしょう。

しかし、それでもモンスターハンターダブルクロスは既にニンテンドー3DSで発売されているタイトルの移植であることを考えれば、これがキラータイトルと言えるかといえば難しいかもしれません。また、ドラクエXIに関してはPlayStation4版とニンテンドー3DS版の発売日が発表されているものの、ニンテンドースイッチ版については情報がなく、後発となる可能性が高いとみられています。そう考えると、これらのタイトルはそれ自身がキラータイトルというよりは、今後もニンテンドースイッチで大型タイトルが発売されるか、その試金石となるような存在でしょう。

サードパーティーはニンテンドースイッチにどの程度リソースを割くか、まだ様子見の状態です。ニンテンドースイッチ向けのタイトルがより多く発売されること、そしてそれらが成功を収めることによって、ようやく多くのメーカーが動き出します。そしてそれは、おそらく簡単なことではないでしょう。


ポテンシャルはあるが課題もある、ニンテンドースイッチ

ゼルダの伝説undefinedブレスオブザワイルドの図

ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルドが作った良い流れを、生かしていかなければいけません(イラスト 橋本モチチ)

さあ、最後にニンテンドースイッチの現状とこれからについて整理してみましょう。現状は、Wiiには遠く及ばず、Wii Uの販売推移をようやく超えてきたという状況です。しかし、販売数が伸びないのは出荷数が少ないことが要因で、店頭に並ぶとすぐに売り切れ、まだまだ需要は大きく、今後さらに数字を伸ばす可能性はあります。

需要が高い状態で、スプラトゥーン2やスーパーマリオ オデッセイなどのキラータイトルを発売するスケジュールが組めており、その意味ではWii Uよりも大きく数字を伸ばしていく期待感があります。一方で、サードパーティーのタイトルに関しては、モンスターハンターダブルクロスやドラクエXIが予定されているものの、他ハードで先行して発売されてしまうこともあり、それ自体がキラータイトルとは言い難いでしょう。むしろ、こういった大きなIPの売れ行きによって、今後サード―パーティの動向が大きく変わってくことが考えられます。

ニンテンドースイッチが大きく数字を伸ばしていくかのポイントは、まず、ハードの供給を増やしこの品薄状態を解消することが第一です。そのうえで、スプラトゥーン2やスーパーマリオ オデッセイが期待通りのヒットを飛ばすこと。そして、サードパーティタイトルも堅実に売れて、市場にメーカーが集まってくる状態を作れるか、ということになります。

さらに付け加えるならば、現状は「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」が大きくハードを牽引し、さらには品薄でもある為、どちらかというとゲーマー層がハードを買っている状況です。ここから年末年始に向けて、任天堂が得意なファミリー層にも火をつけられる状況に持っていけるか、というのも重要なポイントになるでしょう。

今、ニンテンドースイッチに勢いがあり、チャンスがあることは疑いようもありません。しかし、数字そのものは楽観できるようなものではなく、また課題も多くあります。それらを解決して、さらに願わくばユーザーの期待をいい意味で裏切って、ゲーム業界を盛り上げて欲しいと願います。


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