新築マンション市場の実際
「首都圏マンション市場動向調査」(不動産経済研究所)によれば、2017年3月度における売れ行き指数「初月契約率」は66.2%であった。好不調の目安となる70%ラインを、今年に入ってまだ一度もクリアしていないことになる(1月度61.6%、2月度68.4%)。最大の要因は価格高騰といわれるが、平均価格は同5,588万円で前年同月比0.9%(50万円)ダウン、m2単価@79万円も同1.5%(1.2万円)ダウン。相場は調整局面に入ったように見受けられるが、なぜ売れ行きは戻らないなのか。不明瞭なマーケットの動きは「個別性の深耕」が原因とみる。個々の現場を見ていると相当な値段でも「見合った質」があれば順調に売れ、逆に値ごろ感はあっても魅力に欠けるものは売れていない。単純に値付けの問題ではなく、かつすべての物件に66.2%申込が入っているのではなく、90%以上売れているものがある一方でなかには契約済が半分にも満たないプロジェクトが存在する。
では「質」とは何を指すのか。わかりやすい例として「都心」=利便性、「駅近」=資産性、「タワー」=眺望、「大規模」=スケールメリットといった特徴が最近はウケるといわれる。が、何もそれだけではない。たとえ規模が小さく、20階建以下のマンションであっても売れ行きの良いものはある。そこで今回は、小ぶりでも住居用不動産としての魅力に長け、顧客から高く評価されている販売中物件に焦点をあててみた。
総戸数24戸、14階建て。所在地は千代田区三番町
「ザ・パークハウス三番町テラス」(売主:三菱地所レジデンス)は東京メトロ半蔵門線「半蔵門」駅徒歩7分の分譲マンションである。3階~14階が分譲対象で1フロア2戸、全24戸。物件の特徴、価格、販売状況の順に解説しよう。まずは物件の特徴から。立地と建物の評価ポイントを簡略に述べてみる。広域でみたときの「番町エリアの希少性」については前回記事で書いた。昼夜間人口比率でみても千代田区が「職住近接」ニーズを(断トツに)満たしきれていないことは明らか(上のグラフ参照)。需要はマグマのようにたまっているとみる。敷地も好条件。起伏の激しい同エリアにあって、現地は南傾斜の高台地(現地写真参照)。しかも、角地で南間口が広い。さらに接道が南方向斜めに横切ることで前立ての圧迫感が低減されるという恵まれた条件を多く有している。
建物は2戸1のため、全戸南向きで角住戸。内廊下でありながらも、住まいに重要な通風・採光が十分手に入るというわけだ。天井高2.65m。逆梁工法の梁はバルコニーの壁の一部に。中高層建物が並ぶ当該エリアでは開放的な手すりはプライバシーがさらされることをも意味し、カーテンを閉め切った時間がことのほか多くなってしまう可能性も。その心配がなく、さらに大きな梁が窓の上部にかかることもない(85m2台:Bタイプ)。そのように考えれば、周辺環境を考慮したバランスのとれた選択をした住宅設計といえる。専有面積は(南面3室南間口約9.4m)の70.53m2と85.43m2の2タイプ。ともに3LDKである。
実績が信頼を築く
価格は坪単価にして@約610万円。販売価格は70m2台が1億300万円~1億5300万円。85m2台が1億3900万円~1億8600万円。昨年同エリアでは坪700万円を超えるプロジェクトが複数登場しているがスケールや住戸割り、眺望等総合的に鑑みれば、値付けは高値チャレンジとはいえないが、かといって割安感があるわけでもない。公式サイトは2016年9月公開。モデルルーム集客は2017年1月開始。第1期分譲は2017年3月。2017年4月25日時点において反響総数約1300件、来場数約200件、24戸中19戸を売り出し、残1戸である。来場申込率、売れ行き、どちらも不況を感じさせない商況だ。契約者世帯は3人家族が最も多く、次いで2人。年齢は40代後半から60代。千代田区はもとより世田谷区や杉並区、千葉県や埼玉県等広域から集まる。すべてといっていいくらい自宅用途という。決め手は「番町で三菱ブランド」「教育機関が多い、落ち着いた住環境」等。三菱地所グループは番町エリアのマンションは今回で16棟目。
第2期は5月下旬予定。モデルルームインテリアは一見の価値ありだ。オプションは参考程度に、というがエントランスをはじめ高級感をうまく演出できている。引渡しを受けたその日から、カスタマイズされた空間に住めることは青田売りメリットのひとつ。賢く使えば住んでからの満足感は一層高まるだろう。
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