マスクをすると安心する―「マスク依存症」って良くないの?

マスクをつけようとしている女性

「マスクがあれば安心できる」――それならマスクをつけるべし!

風邪や花粉症の季節になると、オフィスでも教室でも、家庭内でもマスクを常用し、鼻と口を大きく覆った人たちであふれかえります。最近では、「忍者?」と見紛うばかりの黒マスクを着用する男性や、ファッションとしてカラフルなマスクを愛用する女性もちらほら。

主に感染症や花粉の予防・対策法の1つとして巷で常用されているマスクですが、今回お話するのは、風邪や花粉症とは関係のない「マスクの意外な効果」について。

みなさんは、マスクするとコミュニケーションが取りやすくなると思いますか? それとも、支障になると思いますか? ある女性のエピソードをもとに、コミュニケーション力、いわゆる「コミュ力」とマスクの関係について考えていきます。

マスクは「心の杖」? 人前での緊張を落ち着かせることも

カウンセリングの場でも、マスク愛用者にしばしば遭遇することがあります。悩みを抱えている人やコミュニケーションに自信がない人は「気分が落ちつくから」「人と関わりたくないから」「顔を見られないで済むから」といった理由でマスクを着用していることも多いようです。

このような場合、マスクは、人前に出ると気分が沈み、緊張しがちな人の心を落ち着かせてくれる「心の杖」の役割を果たしているとも言えます。人は誰でも、外では他人に気を使っているもの。意識していなくても、自然と心に負担がかかっているものです。外向的で対人関係も得意で自信に満ちあふれている人は、「マスクをつけると話しにくくない?」と感じるかもしれません。しかし、マスクを使って逆に「コミュ力」をアップさせている人もたくさんいると感じます。

マスクという「心の杖」を使うことで、プチひきこもり生活から脱することができるようになった知人の女性(Aさん)の体験談をご紹介します。

新しい一歩を後押ししてくれた「マスクの力」

マスクをつけた女性

「マスク」をしているからこそ口下手な私でも本音を話せる――そんな人は意外に多い

マスクを着用することで、新たな道を切り開くことが出来た女性、Aさん。Aさんは人とのかかわりが苦手で、必要のある時以外は外出しようとせず、家事手伝いのみの内向的な生活を続けていました。

そんな自分の生き方に悩み続けていたAさんに、私がカウンセラーとしての経験を元にアドバイスしたのが「マスクをつけての街歩き」。「マスクをつけてただ街を歩いて、気になったものがあれば覗いてみたり、書店で雑誌をめくったりしてみては?」と提案したのです。

すると1か月後、Aさんから出る「話題」そのものが変わってきました。それまでは劣等感や対人緊張感など「自分のこと」にばかりに意識が向いていたAさんでしたが、街歩きを始めるようになってからは、街の風景やお店の情報など「外で見つけたもの」に意識が向くようになってきたのです。

その後、私はAさんに「次は講習会や教室などに参加して、人とかかわりながら自分の世界をさらに広げては?」と提案しました。もちろん、「まずはマスク着用で」。Aさんは新しい出会いに緊張し、そのたびに不安定になりましたが、「マスクがあるから大丈夫」と思い直し、勇気をもって自分の気持ちや意見を少しずつ言えるようになっていきました。

しばらくたつと、Aさんはマスクなしで外出ができるようになり、講習会や教室を通じて数人の友達ができ、なんと1年後には接客業の仕事に就くことができたのです。

マスクという「心の杖」によって、まさに人生が大転換した瞬間でした。

使わなきゃ損!? マスクのメリット・感染予防以外の効果

コミュニケーション力を伸ばすには、「外出ができること」「他人とかかわりをもつこと」「フェイス・トゥ・フェイスで会話ができること」が重要な課題です。

Aさんのように、手軽なアイテムであるマスクに守られることで外出や人とのかかわりが楽になり、自分の気持ちや意見を主張できるようになる人もいます。マスクによってこれらの行動のハードルが下がるなら、ためらわずにマスクを使えばよいのです。「マスク依存症」といった言葉もありますが、冷え性の人が一枚多く服を羽織れば外出しやすくなることと、なんら変わりはありません。

「行動」が変われば、「認知」も変わります。つまり、外出や会話が苦手な方も、まずは自分にとって楽なやり方で外出や人とのかかわりを続けて行けば、必ず意識も変わってくるのです。そして、行動と意識が楽になれば、自然とマスクなどの小道具に頼らなくても、人とかかわり、コミュニケーションがとれるようになっていきます。

もし「マスクをつけなければ外出できない」という方がいたら、そのことを恥ずかしく思ったり、「マスク依存症かもしれないから、早く治さなくては」などと心配する必要はありません。堂々とマスクをつけていれば良いのです。「私は、このマスクを使って、“コミュ力”を上げているのだ!」と自分自身に言ってあげましょう。

マスクという「心の杖」を活用して、世界を広げている人が世の中にはたくさんいます。その方が快適にコミュニケーションが取れ、対人関係のストレスが下がるのであれば、マスクをつけて、思い切って外に飛び出してみましょう!