管理職の労働時間は無制限なのか
管理職は労働時間規制の対象外です
このニュースを聞いて、「あれ?管理職は、労働時間規制は適用されなかったのではないの?」と思われた方も多かったのではと思います。
いわゆる管理職は、労働基準法上は「管理監督者」と呼ばれ、法定労働時間(1週40時間、1日8時間)の規制(労基法42条)が適用されません。そのため管理職になったら、どれだけ長時間働いても残業代は一切支給されなくなるのです。
管理職は法定労働時間規制が適用されないので、会社としては労働時間を把握する必要はありません。もちろん一般従業員であれば労働時間管理の対象となるので、使用者自らが現認するか、タイムカードやICカード等で入退時の時刻を記録しておく義務が会社にあります。
報道によると、関西電力の管理職は、1か月の残業時間が多いときにはおよそ200時間にも上っていたそうですが、労働時間の正確な記録は残されていなかったということです。
関西電力に限らず、多くの企業では、管理職の労働時間管理はなおざりにされているのではないかと思われます。
管理職でも労働時間管理は必要です
管理職は労働時間の規制が適用にならないので、会社は「労働時間の適正な把握」は義務づけられていません。しかし管理職といえども労働者に違いはありませんので、会社は管理職の安全に配慮する義務(安全配慮義務という)があります。特に長時間労働は健康を害するものなので、健康確保の観点からも、会社は管理職の労働時間を管理する必要があるのです。厚生労働省が発出している公式文書に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」があります。
この文書を読むと、労働時間の適正な把握を行うべき対象労働者から管理監督者は除外すると書いてある一方で、「除外する労働者についても、健康確保を図る必要があることから、使用者において適正な労働時間管理を行う責務があること」とはっきり書かれてあります。
つまり管理職についても、労働時間を適正に管理しなければならない法的な義務が会社にあるということです。今回、関西電力が労働基準監督署から行政指導を受けた根拠は、実は上記の文書にあったのです。
管理職に対する労働時間管理の仕方
管理職に対する労働時間管理も一般従業員に対する労働時間管理も、実は変わりはありません。タイムカードや自己申告によって毎日の出退社時刻を記録させ、在社時間などから長時間労働が疑われる場合は、会社(使用者)が管理職に直接状況をヒアリングし、本当に長時間残業をしているならば、それが解消されるように対処法を管理職本人といっしょになって考えればよいのです。一般従業員の長時間労働については、これまでも行政や社会から厳しい目が向けられてきましたが、管理職については「長時間労働をさせる側の人間」ということで、あまり関心を持たれていなかったと思います。
関西電力の事件を契機に、管理職の長時間労働問題にも社会の目が向けられるようになればと思います。