メンタルヘルス

失恋して辛い……精神療法的な抑うつ感への対処法

【医師が解説】失恋して辛い、忘れる方法を知りたい……。バレンタインデーに限らず、恋愛や告白が期待通りに実を結ばず失恋してしまったときの抑うつ感は辛いものです。気持ちが落ち込んでしまったときの効果的な方法として、精神療法に基づいた対策法、簡単に取り入れられる認知行動療法的なアプローチをご紹介します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

告白失敗、失恋……恋愛に辛い体験はつきもの

告白イメージ

告白や恋愛は、いつもうまくいくものではありません。失恋などがきっかけで気持ちが落ち込んでしまったら、どう対処すればよいのでしょうか?

バレンタインにパートナーからプレゼントをもらう予定がある人や、意中の人へ告白しようと思っている人、あるいは告白されるのではないかと期待している人もいるかもしれませんが、告白や恋愛はいつも期待通りにいくとは限りません。

もし、告白や恋愛がうまくいかずに失恋してしまい、気持ちが落ち込んでしまった場合、辛すぎて日常生活に支障が出てしまう方もいます。中には一時的な落ち込みであれ、辛すぎて死にたい、生きていく希望が見いだせない……とまで深刻に思い詰めてしまう方もいるかもしれません。失恋による辛さから何とかして立ち直りたいとき、精神療法的なアプローチを試すことも有効です。詳しく解説します。

失恋しても、決して「自己否定」してはいけない

告白してよい返事がもらえなかった場合はもちろん、意中の人に他に好きな人がいたとわかっただけでも、失恋の辛さはあるものです。

「あんなに好きだったのに、ふられてしまった」「相手に選んでもらえなかった……」と、しばらく落ち込んでしまうのは無理はありません。ただ、その暗い気持ちを引きずってしまうか、前向きに処理できるかは、その時の対応の仕方で変わります。もし気持ちが落ち込んだときに、自分を否定するような事ばかりを考えてしまうと、なかなか前向きな切り替えができなくなるものです。

どんな失敗に対してでも、自分自身を否定することは、暗い気持ちをさらに暗くしてしまいます。うつ病を精神療法で治療する際も、抑うつ症状を増幅させやすいこうしたネガティブな思考にストップをかけることが、まずは必要になってきます。

もし日常的に、嫌なことがあったときに、何か他のことに注意を向けるようにしている人は、良い思考法です。場合によっては嫌な予定がありそうな日にはあえて忙しく予定を入れて、ネガティブな思考のために頭を使う暇をなくす…といったアプローチもよいかもしれません。

「自分にご褒美」も実は精神医学的に有効な対処法

「自分にご褒美」というよくある表現に、もし大人げなくて少し恥ずかしいといった印象を持っているならば、「自分に適切な報酬を出す」と言い換えても構いません。精神療法的なアプローチでも、何らかの方法で気持ちを上げる手段をもっておくということは、実は有効な対策の一つなのです。

告白の失敗や失恋など、何か嫌なことがあった場合、欲しかった何かを買って気持ちを慰めるようなことは、誰にでも経験があるかと思います。もしも自分でプレゼントを買った場合は、その時に頭に浮かんだ内容もぜひ覚えておいてください。その時の気持ちには、いわゆる「心の防衛機制」がしっかり反映されている可能性があります。言い換えれば、何かに対して自分の心を保つためにそれが頭に浮かんできた可能性があるのです。

例えば、もし「こんな嫌なことも我慢しなくてはいけない……。こんなに辛いのだから、自分はこれくらいの贅沢をしてもよいだろう」といった考えが頭に浮かんだならば、辛い状況を理詰めでとらえることで、心にダメージが及ばないようにするタイプだとも考えられます。あるいは、大好きな甘いものを買ってきて口に入れただけで少し気分が変わり、あとは何も考えずにその日の仕事に集中できたというような人は、不快な気持ちが頭に浮かばないようにそれを上手に「抑制」できるタイプと見ることもできます。

一般に、辛い時に頭に浮かんだ内容や思考法は自分の心の防衛機制のタイプをはっきり示しているものです。心の健康を保つためには自分自身をよく知ることも重要。バレンタインデーに限らず、恋愛の失敗などについて心の防衛機制はうまく働いているか、もし気持ちが暗くなった人はチェックしてみて下さい。

気持ちが落ち込んだときは、新しいことの始め時と考える

私たちは普段何かしら、あれをしたい、これをしたいと思っているものです。「部屋をきれいに片づけたい」「新しいヘアスタイルを試したい」「習い事を始めたい」……。しかし毎日忙しく過ごしていると、それらを始めるきっかけが掴めないこともあるでしょう。

もし、失恋や告白の失敗などで気分が塞がってしまった方は、新しく何かを始める必要があるかもしれません。先述したようにそれまでしたかったことでもいいですし、何も思い浮かばない人も、もし運動不足を感じているならばウォーキングやジョギングなどでとにかく身体を動かすといった簡単なことから始めてみると良いかもしれません。定期的な身体運動は心の健康を維持していくうえでとても重要です。うつ病などの回復期において、患者さんに定期的におこなう身体運動のメニューを示すことも精神療法の一環として、治療内容に組み入れられることもあるくらいです。

また別の方法になりますが、ペットを飼うことで毎日が楽しくなった人は少なくないと思います。私自身の話になり恐縮ですが、私の家にも犬がいます。何もなかったバレンタインデーの日には愛犬にご褒美としてプリンをあげたりと、何かすることを思いつくと、ちょっとしたことでもなかなか楽しいものです。

いずれにせよ、以前からやりたかった何かを始めるには、辛い出来事はよいきっかけになりえます。辛い気持ちを受け止めながらも、いつまでも抑うつ状態を引きずらないように、上手に自分のメンタルを管理していきましょう。
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