漢方・漢方薬

これも漢方だったの!?薬局で買えるロングセラー漢方

ドラッグストアで買える便利な市販薬。一見漢方薬に見えない人気商品があることをご存知でしょうか? もしかしたらあなたが愛用されている市販薬も、実は漢方薬かもしれません。意外なネーミングで愛される身近な漢方薬をご紹介します。

杏仁 美友

執筆者:杏仁 美友

国際中医師 / 漢方・薬膳料理ガイド

実は生薬!? 漢方薬の名前ではないロングセラー市販薬

お腹の脂肪…漢方でなんとかならない?!

お腹の脂肪…漢方でなんとかならない?!

薬局などで買える市販の漢方薬は、「わかりやすいネーミング」や「面白いキャッチコピー」で、思わず手に取ってみたくなるものが多いようです。ロングセラーの市販薬の中にも、実は漢方薬というものが少なくありません。ヒット商品の漢方薬を挙げながら、それぞれの魅力を探ってみたいと思います。

肥満症対策の漢方薬
『ナイシトール』『コッコアポEX』

ナイシトールの漢方薬名は防風通聖散

ナイシトールの漢方薬名は防風通聖散

肥満症対策薬としてテレビCMでも有名になり、ロングセラーになっている商品、『ナイシトール』(小林製薬)。

中高年男性をターゲットにしていることもあり、CMではお腹を輪切りにしたイラストや、中年男性の脂肪たっぷりの揺れるお腹の映像はなかなか衝撃的でした。

商品名はカタカナですが、この漢方薬の中身はおなじみの「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」。もとの処方には麻黄、荊芥、防風、薄荷、大黄、芒硝、滑石、山梔子、石膏、黄ごん、連翹、桔梗、当帰、芍薬、川きゅう、白朮、甘草など数多くの生薬が配合されています。皮下脂肪が多く、便秘がちなタイプにオススメの漢方薬で、余分な汗、便、熱、尿などを排出しやすいしくみになっています。

コッコアポLは防已黄耆湯

コッコアポLは防已黄耆湯

なお、防風通聖散はほかのメーカーでも数多く出しています。クラシエでは、『コッコアポEX』という製品が防風通聖散の位置づけになっていますが、疲れやすく筋肉にしまりがないタイプには『コッコアポL』の防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)、ストレスがあり、わき腹からみぞおちあたりが苦しいタイプには『コッコアポG』の大柴胡湯(だいさいことう)と分類されています。コッコアポシリーズは、1982年より発売されておりますが、肥満タイプを体質別に提案した先駆けブランドといえるでしょう。

こむら返りの漢方薬『コムロン』

コムロンは芍薬甘草湯

コムロンは芍薬甘草湯

足が急につったり、筋肉がけいれんしたり……という経験が、誰でも一度はあるかと思います。そんな症状にも使える漢方薬が「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」。筋肉のひきつりを緩和し血を補う芍薬と、その働きをサポートする甘草の2種類の配合のみですが、効き目がシャープだといわれています。

この芍薬甘草湯は、小太郎漢方製薬から『コムロン』という名称で販売されています。こちらも元々の漢方薬名よりも症状がイメージしやすく、親しみやすいネーミングですね。

排尿痛の漢方薬『ボーコレン』

ボーコレンは五淋散

ボーコレンは五淋散

泌尿器のトラブルで代表的なのが、残尿感や排尿痛、そして頻尿です。それらで起こる尿路の炎症を鎮め、利尿作用のある漢方が「五淋散(ごりんさん)」です。

また、女性は男性よりも尿道が短く直線的なこともあり、細菌が侵入しやすく膀胱に炎症がおきやすいのですが、五淋散は急性だけでなく、消耗したうるおい成分などを補えるものが配合されているので、慢性化した膀胱炎にも用いられるのが利点です。

小林製薬では『ボーコレン』という名称で販売されていますが、これには私も思わず吹き出してしまいましたが、説明抜きで伝わりますね。ネーミングに膝を打つ思いです。

不眠の漢方薬『ナイトミン』『サイリュンN』

サイリュンNは柴胡加竜骨牡蠣湯

サイリュンNは柴胡加竜骨牡蠣湯

不眠の原因もいくつかあるのですが、今回は2つのタイプをご紹介します。ひとつは心身が疲れているのになかなか眠れないとか眠りが浅いなど、虚弱体質や貧血気味の方が起こりやすい不眠です。この場合は鎮静作用とともに栄養を補う、酸棗仁が主に配合されている「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」が代表的です。小林製薬では『ナイトミン』という名称になっています。

もうひとつはイライラや動悸、のぼせなどをともない、精神不安がある場合の不眠です。胸脇が張って痛いとか、ヒステリー気味のタイプにも使われるのが「柴胡化竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」です。小太郎漢方製薬では『サイリュンN』。漢方薬名を省略したような名前なので、提供する側にもわかりやすいかもしれません。


ちなみに、漢方薬と民間薬の違いのひとつは、生薬の割合が決められているかどうかです。漢方薬に含まれる生薬の配合や分量はあらかじめ決まっており、もちろん「医薬品」ですので、お間違いのないように。
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