月2万~4万円を「少ない」という人もいるものの、進学をあきらめかけていた学生によっては人生を左右する資金になることでしょう。
ついにスタート!国の給付型奨学金
低所得世帯の大学進学費用は大きく前進します
一方で、子どもの貧困問題も深刻で、全く解消に向かう様子がない中、ようやく今回、低所得層への給付型奨学金が実現しました。
2016年11月に進学セミナーを担当し数か所を回らせていただいた際、多くの高校の進路指導の先生方とお会いして現場の話を伺いました。公立高校、私立高校の先生もいらっしゃいましたが、経済的な事情で進学か就職か悩んでいる学生は少なくないと感じました。今回の動きによって、学生にチャンスが与えられるのであれば、よいことだと思います。
給付型奨学金の内容は?
今回、創設された給付型奨学金制度は、厳しい経済環境にある学生に進学の道を開き、格差是正につなげるためのものです。ポイントを整理すると、次のような内容です。
<給付型奨学金のポイント>
・低所得世帯の大学生に返済不要の資金を提供
・2018年度に本格導入される
・住民税非課税世帯の学生に月2万~4万円を給付
・1学年あたり2万人程度を想定
・必要な資金は200億円程度を見込む
・2017年度は、児童養護施設出身者と低所得世帯(住民税非課税世帯)で私立自宅外の進学者が対象
給付額は月2万~4万円
新設される国の給付型奨学金の給付額は月3万円をベースに、進路など負担に応じて給付額が調整されます。進路によって次のような給付額が想定されています。
<給付額>
国立・自宅=月2万円
国立・自宅外=3万円
私立・自宅=3万円
私立・自宅外=4万円
*児童養護施設退所者等には別途24万円の入学一時金
2017年度は、
・児童養護施設退所者で国立・自宅外月3万円、私立・自宅外月4万円
・低所得世帯で私立・自宅外月4万円
のみ先行実施。
1学年あたり2万人程度
2018年度以降に本格的にスタートしてからの人数は、1学年あたり2万人程度と見込まれています。その内訳は次の通り。・無利子奨学金を受けている成績優秀な生徒(1万人)
・部活動などで成果を出した生徒(5000人)
・経済的理由で高校卒業後に就職したが、給付型があれば進学していた生徒(5000人)
どうやって対象者を選ぶかですが、高校が推薦した生徒の中から文科省や日本学生支援機構が選ぶ形になりそうです。全国に約5000校ある高校等に最低1人以上を割り当てるとのこと。推薦時に活用するガイドラインも策定中です。
財源はどうなる?
財源については、所得税の特定扶養控除を縮小する案が財務省から出されているようです。また、給付型奨学金ができたことで、ほかの手当などで出していた生活支援分を減らせる分もあるとみられています。給付型奨学金以外の2つの対策
低所得世帯の進学サポートとして、給付型奨学金以外にも、2017年度から2点の変更があります。1つは、日本学生支援機構の「第一種奨学金」。これまでは成績が平均3.5以上でないと申し込みすらできませんでしたが(実際に採用されていたのは4.1以上という噂もありました)、2017年度からは要件を満たせば無利子で借りられ、特に、住民税非課税世帯であれば成績要件もなく希望者全員が無利子で借りられます。高校などを通じて、すでに募集も行われています。
もう1つは、卒業後の年収に応じて奨学金の返済額が変わる「所得連動型返還制度」の創設です。こちらも2017年度から始まります。卒業後に年収が約144万円未満であった場合、月返還額は2000円に抑えられます。
大きな一歩です
親からのサポートが十分にない状態で進学し、アルバイトに追われ、ブラックバイトにはまったり、授業中に寝てばかりで単位を落とす学生もいるようです。「規模が小さい」との批判もあるものの、月3万円分のアルバイトの時間が減ると考えれば、週約8時間の勉強時間やサークルを楽しむ時間、学生によっては睡眠時間を増やすことができるのです。こうした対策が実行されたこと自体、まずは大きな一歩だと思います。
【参考】
「給付型奨学金制度の設計について」 文部科学省
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