税金/所得税

源泉分離課税とは?銀行利息の他、どんなものがある?

源泉分離課税とは、税金が源泉徴収(天引き)され、その処理だけで課税関係が完了し、確定申告が不要になる課税方法のこと。銀行預金の利子所得がその代表例ですが、給与からも源泉がなされています。その違いはどういうことなのでしょうか。

田中 卓也

執筆者:田中 卓也

税金ガイド

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銀行の利息に確定申告の必要がない理由とは?

パート収入で103万円ちょうどに給料を調整している主婦がいたとします。パート収入で103万円の場合、給与所得控除で65万円差し引くことができ、さらに所得控除の基礎控除(誰でも無条件で活用できる所得控除)38万円を差し引くことができるので税率の課される所得が0円となるため所得税がかかりません。
  • 年収103万円ー給与所得控除65万円ー基礎控除38万円=0円
では、この人の給与振込口座に金融機関から800円の利息が入り、あわせて年収が103万800円になったとします。
 
銀行の利息はどうして確定申告の対象とはならないのでしょうか??

銀行の利息はどうして確定申告の対象とはならないのでしょうか??


このような場合、たとえばこの800円のために確定申告が必要なのでしょうか。その理由が、「源泉分離課税」を理解するポイントでもあります。
   

総合課税と分離課税の違い

税金がかかることを課税といい、その方法のことを課税方法といいます。課税方法は次の2つに分けられます。

■総合課税
おおまかにある区分の所得をひとくくりにしてから課税する方法
(例)
アパート・マンション経営に代表される不動産所得
フリーランスに代表される事業所得
サラリーマンに代表される給与所得 など

■分離課税
ひとくくりにせず、ある区分の所得を単独で課税する方法
(例)
土地・建物を売却したときの譲渡所得
銀行預金の利子所得
株を売却したときの譲渡所得 など

分離課税では、土地・建物の譲渡所得、株の譲渡所得といった、ある区分の所得を分けて離して課税します。総合してから課税されるのが総合所得、単独で課税されるのが分離課税所得、というイメージでおさえておけばいいでしょう。
 

分離課税は、確定申告が必要な場合と不要な場合がある

分離課税はさらに、次の2つに分かれます。
  • 申告分離課税:確定申告を行う必要あり
  • 源泉分離課税:確定申告を行う必要なし
申告分離課税では確定申告を行うのですから、税金がかかる時期は翌年の確定申告時期、つまりは後日課税となります。一方、源泉分離課税では、確定申告を行わないかわりに支払の源、つまり支払い元が税金を徴収するので、そのつど税金が課されています。
 

銀行の利息からいつ税金がとられているのか

源泉分離課税の代表例は預貯金の利子です。支払い元が税金を徴収する義務を負っているため、銀行が利息から税金を徴収した上で口座に入金しています。その税率は所得税15%・住民税5%(基準税率といいます)と決まっています。

※平成25年から平成49年までの間は復興特別所得税の増税期間となり、2.1%が基準税率に乗ぜられます。そのため、所得税15.315%、住民税5%となります。ここでは、説明を簡略化するために基準税率で説明します。

冒頭のケースのように、「800円の利息が振り込まれた」というのは、所得税150円と住民税50円、あわせて200円の税金が差し引かれた後の金額ということです。
  • 所得税 1000円(額面の利息)×15%=150円
  • 住民税 1000円(額面の利息)×5%=50円
  • 手取り 1000円-(150円+50円)=800円
「利息はそもそも1000円だが、所得税と住民税をあわせて200円の税金が差し引かれて800円が入金された」というのが、預貯金の利子、つまり利息にかかる税金の説明です。
 

配当金はいつ税金が取られているのか

未上場株の場合は所得税20%の税率となります

未上場株の場合は所得税20%の税率となります

配当金も利息と同じように、支払うつど税金が徴収されます。その税率は、上場株であれば平成26年1月1日以降は所得税15%・住民税5%となります。

※これも復興特別所得税の対象であるため、平成25年は所得税7.147%、住民税3%、平成26年1月1日以降は所得税15.315%、住民税5%となります。

たとえば、額面10万円の配当金をもらった場合、手取りは次のとおりです。
■平成26年1月1日以降の場合
  • 所得税 10万円×15%=1万5000円
  • 住民税 10万円×5%=5000円
  • 手取り 10万円-(1万5000円+5000円)=8万円
※この事例でも、説明を簡略化するために基準税率で計算しています。
 

税金が天引きされ、課税が完結するのが「源泉分離課税」

配当にかかる税金も利息にかかる税金も、同じく源泉徴収されています。ただし、配当所得と利子所得で決定的に違う点があります。それは、利子所得は源泉徴収だけで課税が完結し、確定申告が不要となることです(※)。

(※ 平成28年1月1日以後に支払いを受けるべき特定公社債等の利子等については、その支払を受ける際に税率15.315%(他に地方税5%)により所得税・復興特別所得税が源泉徴収されるとともに、税率15%(他に地方税5%)の申告分離課税の対象となります。つまり、その後、確定申告をするのか、しないのかの選択権が与えられています)

このように、
  1. 税金が源泉徴収(天引き)され、
  2. その処理だけで課税関係が完了し、
  3. 確定申告が不要になる
という課税方法を「源泉分離課税」といいます。

源泉分離課税の代表例は上記のほか以下のようなものがあります。
  • 私募の特定目的信託のうち、社債的受益権の収益の分配に係る配当
  • 私募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る配当
  • 懸賞金付預貯金等の懸賞金等
  • 一時払養老保険や一時払損害保険などの差益で保険や共済の期間が5年以下のもの
です。
 

給料は源泉分離課税ではないのか

「支払い元から税金を徴収する」という面から考えれば、給料も同様です。しかし、給料は源泉徴収の対象ではありますが、それだけで課税関係は完結せず、年末調整や確定申告によって精算がなされます。

給料は源泉徴収されているものの、あくまでも税金の「概算」による前払いです。そのため、課税関係が完了していることにはなりません。源泉分離課税とされるのは、源泉徴収され、課税関係が完了するものだけです。

したがって、冒頭のケースが確定申告の対象とならない理由は、「利息についてはすでに税金が課されている。それで課税関係が完了しているのだから、確定申告の対象とならない」といえます。
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