「運転して楽しい」と思える外車に乗っていたい人へ
クルマは100%移動のためのツール、などと思っている人(世の中の大半はそう)が、そもそもこの記事を読むことなどないだろう。つまり、今、これを読んでくれている皆さんは、愛車に実用性プラスαを求める人たち、ということになる。
そのプラスαは、たとえばデザインであったり、ステータスであったり、と、人それぞれであっていい。なかには、“やっぱりクルマは走りだよな”という方も、まだまだ多くいらっしゃるはず(だと信じたい)。つまり、運転が楽しいと思えるクルマに乗っていたいという人……。
それも、走りが良くて当然という高価なスポーツカーや有名なラグジュアリィカーの類ではなく、所有するのに現実的で、日ごろは実用的に使え、それでいて、時々は運転で楽しませてくれる、その気になればファンな“走り”をみせてくれる、そんなクルマがあれば、カーライフももっと充実するに違いない。
というわけで、今回は、実用性に運転する歓びという+αをもつガイシャたちを取り上げてみることにした。
運転して楽しいオススメ外車1.日常的にクルマを毎日使う人向け
通勤や買物、用事、仕事といった日常的な用途にクルマを毎日使う、なんていう人が選ぶべき楽しい実用車から挙げてみよう。
そういうクルマが圧倒的に多いのは、やはり欧州車、それもイタリアやフランス、イギリスといった、根っからの運転好きが多くいる国のクルマだろう。
特にイタリアやフランスでは、狭く入り組んだ道が都市においても多いため、昔から小さくて楽しい実用車が多い。フィアット500やルノートゥインゴあたりはその典型だろうし、もう少し大きめのハッチバック、アルファロメオミトやルノールーテシア、プジョー208も運転していて楽しいコンパクトカーの代表だ。もっとも、このあたりの小さなモデルは、独り用用途の実用車。人や荷物を積むのは苦手。
広く使い勝手の良い室内空間をもつ人気のルノーカングー。1.2Lターボに6MT(235万円、247万円)とデュアルクラッチのEDC(259万円)の組み合わせと、1.6Lと4AT(241.5万円)をラインナップする
びっくりするほど実用的で、子供が小さなファミリー世代までをカバーし、何なら自営業でもフルに活用できて、しかも運転がベラボーに楽しいという、世にも稀なクルマがある。
ルノーカングーだ。このクルマ、フローリスト御用達風のユニークなスタイリングを見ても分かるとおり、人も荷物も十二分に積み込める。それでいて、運転してみれば、その的確な運動性能でベテランドライバーもあっと驚かせる。交差点を曲がるところから“おおーッ”と言わせて、高速道路のクルージングだって大の得意。こんなに凄い超実用車は他にない。
実をいうとカングー、ヨーロッパでは配達系プロ御用達(だからこそ運転してマトモなクルマなのだ)で、一般人はほとんど乗りたがらない。けれども、日本人だけはカングーが運転の楽しい実用車であることを知っている。メーカーの本国サイドが驚くほどの人気を誇っている。実はわれわれ日本人にだって、運転して楽しいクルマを見る目はある、のだった。
MINIのステーションワゴンモデルとなるクラブマン。外観には専用デザインを採用、テールゲートにはスプリットドアが備わった。1.5Lターボ(290万~384万円)、2Lターボの4WDモデル(410万円)、2Lディーゼルターボ(364万~404万円)を用意する
もう少しサイズが大きくてもいいのであれば、いわゆる欧州Cセグメント相当のハッチバックカーであれば、どれを選んでも運転していて楽しいと思えるだろうし、そのエステート版ともなればベラボーな実用性の高さを誇っている。VWゴルフヴァリアントやミニクラブマンなどはその際たる例だ。
アルミを75%以上用いたモノコックボディを採用する、FRのプレミアムコンパクトサルーン、ジャガーXE。2Lターボ(439万~655万円)と3Lスーパーチャージャー(809万円)と、2Lディーゼルターボ(507万~561万円)をラインナップする
最後に、普段はセダン派という人へ。Dセグメントで今、最も運転が楽しいモデルといえば、ジャガーXE。ディーゼルも選べるけれど、長距離移動が多くないのであれば、ガソリンターボの清々しいフィールを楽しむのも手。とにかく、意のまま感はハンパない。
運転して楽しいオススメ外車2.週末にドライブすることが好きな人向け
BMW初となるFFの3列7人乗りMPV、2シリーズ グランツアラー。前後に130mmスライドする2列目やフロア下に収納できる3列目など、多彩なシートアレンジが可能に。パフォーマンス・コントロールを標準とするなど走りにもこだわられた一台。価格は368万~462万円
ふだんは滅多に乗らないけれど、週末は家族や友人たちとドライブすることが好き。そんなとき、運転手の自分だけが仲間ハズレになりがち、なんだけれども、運転することも楽しみのひとつ。こっちはこっちで楽しくやらせてもらうよ、なんて言えるクルマがあれば嬉しい、という方がいてもおかしくない。
BMWが出した初のファミリーミニバン、2シリーズのグランツアラーなどが真っ先にイメージとして浮かぶ。BMWとしてみれば、ちょっとモノ足りないところがあるのも事実だけれど、他のミニバンたちに比べれば、走りに振ってあるのも確か。人をのせて運転に張り切るわけにはいかないだろうけれど、その手応えをしみじみと楽しむというのもオツ。ドライバーにしか分からない、それは独占的な楽しみだ。
ミニバン系では、VWゴルフトゥーランも実に快活な走りをみせてくれる。国産ミニバンとは大違いの確かさで、走る・曲がる・停まる、の基本が実に素直。清々しいほどマジメなところが、今の時代、かえって楽しいと思わせるあたり、VWの底力を知る思いだ。
VWの上級モデルがパサート。セダンに加えヴァリアントと呼ばれるステーションワゴンもラインナップする。質実剛健という賛辞が似合う実用車、1.4Lターボ(348.99万~519.9万円)と2Lターボのスポーティモデル(R 519.9万円)、プラグインハイブリッドのGTE(539.9万~599.9万円)を用意する
多人数乗車ではなく、荷物をいっぱい積み込んで、気分よくドライブへと出かけたい、という人には、前述のゴルフヴァリアントに加えて、ルノーメガーヌエステートもオススメ。予算に余裕があるのなら、VWのパサートヴァリアントも使い勝手に優れ、ライドクォリティも高く、それでいて値段を考えるとラグジュアリィ感も十分。CPの高いクルマだと思う。
現時点で筆者は未試乗だけれども、シトロエンC4カクタスも週末用として、面白い存在だろう。
運転して楽しいオススメ外車3.ロングドライブ向け
日本ではスポーツモデルのルノー・スポールが人気のメガーヌ、そのワゴンモデルがルノー メガーヌエステート。2Lツインスクロールターボに6MTを組み合わせたGT220(327.9万円)と、1.2LターボにデュアルクラッチのGTライン(285.9万円)というスポーティモデルのみをラインナップ
ロングドライブが得意なクルマというと、やはりドイツ車のパフォーマンスが一歩、抜きん出ていると思う。以前はフランス車もなかなかのものだったけれども、選択肢がちょっと薄くなってきた。あえて選べば、DS5やシトロエンC4ピカソあたりだが、それでも以前に比べるとインパクトが薄い。前述の週末ドライブと重なるが、メガーヌのGTワゴンあたりは、ロングドライブ派にもオススメだ。
日本に導入されているドイツ車で、欧州Cセグメント以上のモデルなら、たいてい、長距離ドライブが得意だと思ってもらっていい。そのなかから、さらに運転の楽しいモデルを選んでみたい。
クーペのスポーティさとセダンの快適性を両立させた“4ドアクーペ”、アウディA5スポーツバック。ラゲージスペースはワゴンモデルと遜色のない広さに。2Lターボを積む4WDモデル、2.0TFSIクワトロ(615万円)のみをラインナップする
まず、長距離ドライブそのものが楽しいと思えるモデルから。その素晴らしい安定感と確実なレスポンスで、クルージングそのものが楽しく思えてくるのが、アウディA5スポーツバックだ。スタイリングも優雅で、実に輸入車らしい佇まい。この飽きのこないカタチと、奥深い走りの性能は良いモノを長く乗り続けたいという人にぴったり。
クーペのエレガントさとハッチバックの利便性を兼ね備えたという、BMW3シリーズ グランツーリスモ。ツーリングより全長200mm拡大、後席レッグスペースは70mmラゲージも25~100L広く、より快適に。価格は523万~805万円
高速道路を降りてからも楽しんでいたい、という欲張り派には、BMWのDセグメント、3シリーズ派性となる3モデルを強力にプッシュしたい。究極の実用車というべきツーリングや、スタイリッシュな4シリーズグランクーペもオススメだが、その名もグランツーリスモという3シリーズを忘れてはならない。大人4人が楽々くつろげるスペースと、積載能力の高さ、そしてシリーズ中最も優れたGT性能を誇りつつ、運転する楽しさは3リーズならでは。セダンに負けず劣らずファンなモデル。現代の隠れた名車である。
やっぱり全てを捨てても、走りを最優先で
フィアット500をベースに復活したアバルトがチューンしたアバルト500。チューニングや装備の違う4モデルを用意、最高出力135ps~180psを発生する1.4Lターボを搭載する。価格は286.2万~369.36万円
なんだかんだ言っても、やっぱりドライビング第一優先で、という、そもそもこの企画に合わなかったよね、という方にも、ひょっとして読んでいただけたかも知れない、ということで、最後に、企画的には台無し(笑)だけれども、全てを捨てて走りを最優先に選ぶ、現実的でいて、何とか最低限の実用性も保っているというモデルを紹介しておこう。
小さいクルマでは、何といってもアバルトだ。それも今話題の124スパイダーではなく、500シリーズ。とにかく、七面倒くさいドライビングメソッドなんてカンケーなし。踏んで曲げて停める、という極めて人間くさい楽しみ方を許容するパフォーマンスが素晴らしい。走っていることが常に楽しいと思える一台だ。
スパルタンなミドシップ2シータースポーツのロータスエキシージ。内外装共に走りに特化したスパルタンな仕様に仕立てられている。350psの3.5Lスーパーチャージャーを搭載、価格は972万~1022.76万円
1000万円以下で、リアルスポーツカー御三家と言われているのが、ポルシェ718ボクスター&ケイマンに、アルファロメオ4Cクーペ&スパイダー、そしてロータスエリーゼ&エキシージ。このなかで、ある程度の実用性に耐えられて楽しいといえばポルシェでキマリ、なんだけれども、その逆にスポーツ性能に特化したモデルでいいというのであれば、レーシングカー級のハンドリング性能を誇るエリーゼ&エキシージを選ぶべきだろう。
CFRP製モノコックボディ構造を用いたミドシップ2シーター。ボディパネルにはSMCを用いるなど徹底的に軽量化されている。1.8Lターボを搭載、クーペ(806.76万円)とスパイダー(861.84万円)をラインナップする
アルファ4Cもまた、実用性には乏しいし、パワーステアリングも付かないなど硬派で、所有するにはかなりの覚悟が必要だ。ロータスかアルファロメオか、悩むところだが、より本格的なスポーツ性能が欲しいというのであればロータス。本格CFRPボディの価値を確かめてみたいという人は4Cだ。なんといっても、スーパーカー級のボディ骨格。その乗り味を1000万円で楽しめると思えば安い。リセールバリューも4Cが上だ。
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