VRの細かい話がしたい!
出荷台数が少なく、市場価格が高騰してしまっているのが残念なところです
さて、幸運にもPS VRを購入できた人は、色んなゲームを買ったり、体験版を端からダウンロードして試してみたりと、VRの世界を堪能していることかと思います。そんなVRの素晴らしさを伝えたいと思っているのですが、ちょっと変わった角度からお話してみたいと思います。
というのも、今回はとても細かい話をしてみたいと思います。もしかすると、そんな細かいところがリアルになったってゲーム性には影響しない、と思われるかもしれませんが、これは普通のゲームとはちょっと話が違うんですね。VRの体験というのは、その場に自分が居るという感覚自体に驚きと興奮がありまして、その「自分が居る」と思わしめる要素というのは、とても細かいことの積み重ねだったりします。
これがとても良くできているのがSIEから発売された「PlayStation VR WORLDS」に収録されている「The London Heist(ロンドンハイスト)」です。このゲームは、ロンドンでギャングになるゲームなんですが、実に細かく、VRの面白さを引き出しています。
見えないところにあるものが取れてしまった
ロンドンハイストは、PS Moveを使うか、そうでないかで、楽しさがまるで違います
PS Moveを2本使うとどうなるのか。PS Moveを通じて自分の両手をVR空間上に再現することができます。PS Moveを持っている自分の両手と同じ位置に、ゲーム上でもゲーム内の手が現れます。トリガーを握ればVR空間上の手も握る動作。これを利用し、そこらへんにあるものを掴むことができます。初めて遊ぶと、目の前の拳銃を拾うだけで「おお」と声をあげてしまうぐらい、新鮮な感動があります。
銃を撃って弾切れになるとリロードしなければいけません。その時どうするのか。リロードボタンを押すんじゃありません。右手で銃を持っているとしたら、空いている左手でマガジンを拾うんです。そしてそのままマガジンを拳銃のグリップエンドに入れれば……ガシャンとリロードできます。これは気分があがります。
そのうち銃撃戦になります。カーチェイスをしながら次々に現れる周りの車やバイクを撃っていくような場面も。激しい攻防が続くと、リロードを急ぐあまり、目で確認しないでマガジンを握るようになります。車の右側を走るバイクを狙いながら、左手でダッシュボードの中にあるマガジンを掴んで、リロードの準備をするんです。
この時、マガジンは見ていないんですが、現実にもそういうことができるように、ゲームの中でも、手を出してこの辺にあるだろうというものを掴んで、使うことができるんです。これは、考えてみると本当に不思議な感覚です。見えているものがリアルとか、グラフィックの作りこみとか、そういうレベルの話ではないんですね。自分がその場に居るから、その場に居るようにふるまってしまう、というリアリティです。
スマートフォンから音が出ていることに驚く
スマートフォンは、「サマーレッスン:宮本ひかり セブンデイズルーム」でも使われています。そしてやっぱり「スマホから音がする!」と驚きます
ロンドンハイストでチュートリアルが終わると、ゲームは暗い部屋の中で始まります。左側から物音と男の声が聞こえます。すると、プレイヤーは自然と左側を向くわけです。VRでは基本的にゲームのカメラというのはプレイヤーの目です。ですから、ズームやパン、カットといった映像的手法よりも、プレイヤーの注目を引いてそっちを見させる、という表現が使われます。
音を使った演出で面白いのがスマートフォンです。ゲーム中、スマートフォンを手渡されるんですが、そのスマートフォンから音がしているんですね。スマートフォンから音がするというと当たり前なんですが、VR空間上にあるスマートフォンのその位置から音が聞こえてくる、というのがとても不思議で面白いんです。右耳にあてれば、当然右耳から音がしますし、ちょっと離せば遠くなります。目の前に置いてみると、目の前のスマートフォンから音が出ています。
VR空間上に見えている位置と、音がなっている場所が一致することで、そこにスマートフォンがあるという実在感がはっきりとします。それ自体が不思議で面白いので、耳につけたり、離したり、動かして遊んでしまいます。
葉巻を吸ったら煙がでて嬉しい
初めて遊ぶ人に葉巻吸ってごらん、と勧めると、みんな驚きます
目の前のテーブルに葉巻とライターが置いてある場面がありまして、吸えそうだと思って、右手で葉巻を持って、左手でライターを持ち、普通にタバコを吸うようにですね、葉巻を口で加えるような位置に持っていき、その先端にライターの火をあてます。タバコを吸う人は分かると思うんですが、火をつける時は吸うんですよね。なので、息をスーッと吸い込みます。すると、葉巻の先端がオレンジ色に光り、ジジジジと音を立てるじゃないですか。そのまま葉巻を口から離して今度はフーッと息を吐くと、白い煙が口から出てくるわけです。
これがもう、臨場感抜群。禁煙中の方はやめておいた方がいいくらいです。端で見ていると、PS Move2本を口元に当ててすーはーすーはー言っているわけで、まるで馬鹿みたいなんですが、やっている方は、おお、本当に葉巻が吸えるぞ、と夢中になってるわけです。
カラクリは、VRヘッドセットに仕込まれたマイクです。マイクがプレイヤーの息の音を感知して、あたかも葉巻を吸っているかのように演出しています。似たようなことは携帯ゲーム機のゲームにもよくあったりはしますが、画面に向かって息を吹きかけるというのと、実際にライターと葉巻を手にもって、自分の口から煙が出ているというでは、体験がまるで違います。
浮かんだ球をコントローラーで殴るのがこれほど楽しいか
これまでのゲームとは違うところに、その面白さがあります(イラスト 橋本モチチ)
ロンドンハイストには、2つのモードがありまして、そのうちの1つはいくら銃弾を体に受けてもゲームオーバーにならないモードになっています。そんなモードではゲーム性が削がれてしまって面白くないと思うでしょうか? そんなことはないんですね。何故なら葉巻を吸うだけで面白いからです。
もう1つ面白い例を挙げたいと思います。ロンドンハイストが収録されているPlayStation VR WORLDSというタイトルは、ロンドンハイストだけでなく5種類のゲームが遊べるパッケージになっていて、タイトル画面でどのゲームを遊ぶか選択します。そのタイトル画面に、球体が浮かんでいます。自分の目の前です。ゲームごとに、隕石のようになったり、金属の球になったりと、姿を変えます。
ただの飾りのようにも見えるこの球体、実はコントローラーで触れるんですね。PlayStation VR WORLDSのタイトル画面では、PS4のコントローラーであるデュアルショック4が、VR空間上に表現されています。自分の持っている位置に、ゲーム空間上でも、コントローラーがあるわけです。
例えば、ロンドンハイストを選択すると、弾丸をイメージしてか、球体は金属になっています。コントローラーで触れてみると、カチンとぶつかって音がします。思い切ってコントローラーで球体を殴ってみると、ガーンと飛んで行って、色んな所に跳ね返り、また戻ってきます。PS VRをお持ちの方は体験版でも試すことができますので、ぜひやってみていただきたいと思います。なにしろ、これがやたらと面白いんです。
任天堂がWiiを発表してから、ゲーム業界には様々なモーションコントローラーとそれを使った遊びが開発されましたが、モーションコントローラーを完成させるのはVRだったのか、と思えるほど、自分の動きが画面に反映されることと、自分がゲームの中に入って動くことでは違いがあります。浮かんだ球に触れるだけでこれほどの楽しさがあるのかと驚かされます。
ゲームの世界に居るということが、今までのゲームにはない新しい面白さを次々に生み出していきます。ロンドンハイストは、PS VRの機能を自在に使って、世界に居る感覚を演出してくれました。しかし、PS VRはまだ発売されたばかり。これからさらに、ゲームの世界を楽しめる様々なコンテンツが出てくることが、期待できそうです。
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