メンタルヘルス

心の病でCT検査?精神科受診時に画像診断をする理由

不安や抑うつ、幻覚などの精神症状を理由に精神科を受診すると、画像検査を行う場合があります。「心の病でCT?」と不思議に思われる方も多いかもしれません。今回はうつ病や統合失調症などの心の病気に対して画像検査を行う理由と、診断時のCTやMRI、fMRIなどの画像診断機器の使い分けについて、詳しく解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

不安や抑うつ、幻覚…精神科の検査の1つに画像診断がある

CT

例えば「幻聴が聞こえる」という訴えだけで、統合失調症と診断を確定することはできません。まずは脳に器質的な異常がないかを確認することが大切です

不安や抑うつなどの心の病気は一般にあまりなじみがなく、精神(神経)科を受診する流れはなかなか分かりにくいかもしれません。気持がひどく落ち込む、不安が強い、あるいは幻覚が現れるなどの精神症状が現われている場合は、精神科への受診が望ましいです。

では、実際精神科を受診した場合、どのような診察が行われるのでしょうか。たとえば、気持ちの落ち込みを主訴にはじめて精神科を受診した場合、どのような診察が行われると思いますか? 精神科医のカウンセリングやアドバイス、もしくは抗うつ薬の処方が行わるのかな……とそんなイメージを持たれる方が多いかもしれません。しかし、時折、初診で画像検査をする場合があります。カウンセリングだけのつもりで受診をして、突然CT検査と言われると、「何か深刻な病気になったのではないか……」と不安にかられる方もいらっしゃるかもしれません。

ここでは精神科での画像診断についての不安や疑問を取り除けるよう、画像検査を行う理由と検査でわかることについてご説明します。

画像検査の目的は、器質的な異常がないか確認するため

うつ病や統合失調症など心の病気は、検査をしても明確な問題が現れないことがあります。また、精神疾患で現れる症状は身体疾患の症状と類似する部分もあるため、精神疾患の病名を断定することは困難な場合があります。

たとえば、20代前半の男性が突然幻聴が聞こえるようになったとします。通常は統合失調症などの精神疾患を疑いますが、こうした症状は身体疾患によって引き起こされる可能性もあるのです。具体的には脳腫瘍のために幻覚が現れることもありますし、何らかの薬物が症状の引き金になっている場合もあります。ですから、初診時の問診で統合失調症の可能性が示唆されても、診断を確定するためには、同じような症状が出現するその他の病気と鑑別する必要があります。その必要な検査のうちの1つが画像検査です。

精神疾患を受診した後、画像検査を受けることになれば、その目的は恐らく通常脳内に器質的な問題がないことを念のために確かめるためです。

精神疾患の鑑別に使われるCTとMRIの特徴と違い

精神科領域おける画像検査の中で、一般的によく行われるのはCTです。医師の判断によっては、CTだけではなく、MRIを行う場合もあります。

■精神科でのCT検査でわかること
CTは脳の精密なレントゲン写真です。簡単に言うと、X線の吸収率の相違によって脳の内部を表すというものです。被験者の頭部にさまざまな方向からX線を入射させ、それぞれが頭部を通過する際、頭部組織に吸収されるものとしないもので、吸収率の相違にコンピューター処理をかけ、脳の内部を画像に写し出しています。腫瘍がもしそこにあれば、その大きさや位置、そしてある程度、そのタイプまで知ることができます。

■精神科でのMRI検査でわかること
MRIは脳の内部を探るために磁場を用います。CTとは異なる原理で脳の内部を探るため、CTでは分かりにくかった問題もMRIではっきり分かる場合もあります。代表的な例は脳梗塞の早期です。CTでは明確な所見が現れにくいのですが、MRIで見るとはっきり見える場合が多くあります。また、MRIは検査中磁場を作るため、CT装置よりかなり大きい音がします。

画像検査は造影剤を用いることもありますが、通常非侵襲的に行われます。検査の最中に注射をされたり、内視鏡などが体内に入るといった事はないため、検査中に痛い思いをすることはないので、安心して受けていただけると思います。

より高度な画像検査…fMRI・PET・SPECTとは

通常、精神科の初診で行われる画像検査はCTかMRIです。しかし、受診病院が研究機関を兼ねる大学病院であれば、高度な技術を搭載した画像検査を受けられる場合もあります。たとえば、fMRI、PET、SPECTといった機器です。

fMRIは脳内の血流動態測定に特化したMRIです。PETは脳内を探る手段にポジトロン粒子、SPECTは光子を用いることが特徴的です。こうした先進の画像検査はいずれも脳内の血流動態すなわち、その時その部位にどのくらいの血流があるかを測定することができます。その結果、血流が多ければ脳の活動レベルは大、反対に少なければ脳の活動レベルは小となり、血流が測られたその部位が担う機能をある程度評価できます。

脳の血流動態を測定した状態で、患者さんに認知課題を行っていただくこともあります。目の前にある何かを少しの間記憶してもらうという認知課題を課し、遂行最中の脳内血流動態を見ます。この検査では、短期記憶に関連する機能をある程度評価することができます。つまり、その疾患が脳内に引き起こしている問題をより精密にとらえることができるのです。

以上、今回は初診後に受ける可能性がある検査の中から画像検査を詳しく解説しました。検査自体は簡単でベッド様の台に横になるだけです。自動的にベッドが機械内へ移動しますので、狭い空間が苦手な人にとっては少々苦痛に感じることもあるかもしれませんが、痛みなどはない検査なので安心してください。また、MRIについては、検査時間が長く30分程度その状態のままになりますので、目を閉じてリラックスして受けるのが良いでしょう。
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