好きな中国茶を5つ挙げて下さいと言われたら、必ず、今回ご紹介するお茶「東方美人」が入ります。東洋の美人「オリエンタルビューティー」の楽しみ方をお伝えします。

  蜜の香りがする中国茶「東方美人」

東方美人。とても美しい名前のお茶ですよね。このお茶は台湾の烏龍茶(半発酵茶)で、中国大陸と合わせた数ある烏龍茶の中でも最も発酵度が高いお茶と言われています。紅茶に近いような味わいと思って頂ければわかり易いと思います。
東方美人。紅茶に近い水色。蜜のような甘い香りが魅力です

東方美人。紅茶に近い水色。蜜のような甘い香りが魅力です

このお茶の魅力は、なんと言ってもその芳醇な香りと味です。蜂蜜にも例えられる優美な甘い香りと味が素晴らしく、時に果物やスパイスの様な香りも感じられます。紅茶に近い味わいにこんな香りがするわけですから、中国茶の好きの中でも特に女性に人気があるお茶です。

東方美人の香りの秘密は緑色の小さな虫「ウンカ」

でもただのお茶なのになぜ蜜の香りや味がするの?と思いますよね。実はその秘密を握っているのは「虫」なんです。

ウンカの数でお茶のランクをつけていたものもあります。かわいいですよね

ウンカの数でお茶のランクをつけていたものもあります。かわいいですよね

東方美人が作られる時期は6月の始め、芒種(ぼうしゅ:二十四節気の一つ)の頃ですが、台湾ではこの頃に「ウンカ」という虫が発生します。5ミリくらいの小さな緑色の虫なのですが、この虫が東方美人の畑に飛来し、茶葉を噛むことで茶葉に変化が起こります(もっと詳しく知りたい方は「東方美人の香りの神秘」の記事を参考にしてくださいね)。このウンカが噛んだ茶葉を使ってお茶を作ると不思議な事に東方美人独特の甘い蜜のような香りが生まれます。

虫が噛んだお茶と聞くとびっくりされる方もいらっしゃると思うのですが、ウンカに畑に来てもらう為には農薬は使えないということになります。昨今、中国茶の世界でも有機茶の人気が高まってきているのですが、虫と茶葉が作り出す自然の味と香りは本当に不思議です。

以前、ウンカが噛んだお茶と噛んでいないお茶の飲み比べをやった事があるのですが全く違いました。ウンカが噛んでいない方のお茶は、東方美人特有の甘い蜜の香りがでておらず、ちょっと間の抜けた美人という感じになってしまっていました。

沢山の名前をもつ「美人」

それから、このお茶はいくつかの別名を持っている事でも有名です。今回は「東方美人」という名前でご紹介していますが、その他に、

・東方美人茶
・五色茶
・白毫烏龍茶(はくごううーろんちゃ)
・椪風茶(ぽんふうちゃ)
・オリエンタルビューティー
・香賓烏龍茶(しゃんぴんうーろんちゃ)

などがあります。それぞれ謂れがあるのですが、その中からいくつかを茶葉の写真と一緒にご紹介しますね。
出来たばかりの東方美人。まだ青さの残るフレッシュな茶葉です

【茶葉画像1】出来たばかりの東方美人。まだ青さの残るフレッシュな茶葉です

まずは「五色茶」。茶葉に五つの色が入っていることからこの名前が付けられたと言われています。【茶葉画像1】の写真は作ってきたばかりという東方美人を頂いた時のものですが、なるほど茶葉にまだ緑色の部分もあって、もしかしたら五色ありそうですよね。味は、緑の香りがかすかに香る、ダージリンのような甘くフレッシュなお茶でした。

次は「白毫烏龍茶」です。東方美人の茶葉は白毫(産毛に覆われた芽の部分)が混ざっているのが特徴です。【茶葉画像2】の写真は良いお茶の見本のような茶葉です。紅茶に近い褐色の茶葉に綺麗な白毫が混ざっています。繊細な産毛をつぶさずに高い発酵度の仕上げるには大変な手間と丁寧さが必要です。この白毫の様子からつけられた名前が「白毫烏龍茶」。もしもこれからこんな茶葉に出会ったら、それはきっと美味しいお茶だと思います。覚えておいてくださいね。
白毫が本当に美しい茶葉。丁寧に仕上げられているのが分かります

【茶葉画像2】白毫が本当に美しい茶葉。丁寧に仕上げられているのが分かります

それから「椪風茶」と「オリエンタルビュティー」。「椪風」というのは嘘つきという意味で、その昔、台湾で東方美人が作られた時に、美味しいお茶が出来たんだ!と言った人がいたのですが、周りの人々は虫に食われた茶葉なんかで美味しいお茶が出来るわけがない!と言ってその人を嘘つき呼ばわりしたそうです。でも実際はとても美味しいお茶だったので付いた名前が椪風茶です。

嘘つき呼ばわりされたお茶ですが、ヨーロッパに輸出されると大変な人気が出たそうです。ヨーロッパから見たアジアは「東方」ですよね。東方のとても美味しいお茶という事で現地では「オリエンタルビューティー」と呼ばれたのがこの名前の由来です。
年数を経ても美味しい東方美人。香りの変化も楽しみの一つです

【茶葉画像3】年数を経ても美味しい東方美人。香りの変化も楽しみの一つです

【茶葉画像3】の写真は2011年に作られた東方美人です。最初に烏龍茶の中でも最も発酵度が高いお茶とご紹介しましたが、この茶葉をみるとそれが良く分かりますよね。このお茶は本当に微かですがシナモンのような香りがするしっかりとした美味しいお茶でした。

美人もワインのように寝かせてみよう

さて、【茶葉画像3】の写真は2011年のお茶とお伝えしましたが、東方美人はワインのように寝かせてその変化を楽しむことができるお茶なんです。

【茶葉画像2】の美しい茶葉は実は2008年のもので、【茶葉画像3】の写真よりももっと古いものです。入手した時にあまりにも茶葉が美しくて美味しいお茶だったので、大切に保存していました。今回(2016年)、封を切ってみたのですが、以前よりもさらに蜜の香りがまったりとした美人に育っていました。茶葉の写真を撮っている時から甘い良い香りがして、飲んだ時は本当に幸せな気分になりました。こういうお茶に出会うとまた中国茶に魅せられてしまいます。

それから【茶葉画像1】の写真は、先に書いた通り、頂いた時はフレッシュな若い印象のお茶だったのですが、1年後に飲んだ時はその若さがすっかり落ち着いて、味と香りのバランスが整った美人になっていました。このお茶は「白鷺(台茶17号)」という比較的新しい品種で作られたお茶だったのですが、その特徴のさっぱりとした感じを上手く残して茶葉が落ち着いたのが面白かったです。
美味しいと思ったものは小分けにしてしっかり封をして保存しています。東方美人専用の箱

美味しいと思ったものは小分けにしてしっかり封をして保存しています。東方美人専用の箱

ちなみに、私が持っている東方美人の中で一番古いものは、2006年のものです。10年経ってしまいました。こうなるといつ開けようか……となってしまうわけですが、そうやって悩むのも楽しみの一つだったりするのです。

東方美人オンリー茶会のススメ

こんな風に、東方美人はワインのように年数を置いてその変化を楽しむことができます。これに加えて、その年のウンカの発生状況によってもお茶の味が変わってきます。もちろん作り手によっても味は変わりますから、飲みだしたらキリがありません。もっともっと飲んでみたいという気持ちになってきます。そんな時はお茶友達と手持ちの東方美人を持ち寄ってお茶会を開くのがお勧めです。
東方美人のお茶会は華やかに楽しむのがお勧めです

東方美人のお茶会は華やかに楽しむのがお勧めです

この時は他のお茶は飲まずに東方美人だけを飲み続けてみましょう。東方美人はその蜜のような香りの出かたが本当にいろいろなので、みんなで持ち寄ると様々なタイプの美人が集まってきます。

こうやって一度にいろいろな東方美人を飲み比べることによって、その違いをよく知ることができて、自分はどんなタイプの美人が好きなのかを知る手がかりになります。濃密なのが良いのか爽やかタイプが好きなのか。一度自分の好みを見つけると、次からお茶を買うときにブレずに好みのお茶を探すことができるようになりますよ。お勧めします。

お勧めのお菓子はちょっと小ぶりな「カヌレ」

そんな東方美人オンリーのお茶会にお薦めしたいお菓子が神戸芦屋のダニエルのカヌレ。紅茶のような東方美人にみっしりとしたフランスの焼き菓子がぴったり合います。普通のカヌレよりちょっと小ぶりなのも良いですし、果物のコンポート、チョコレート、ナッツ、抹茶といろいろな味があるのも楽しいです。それからなんと言っても見た目が最高です。
美人に負けない華やかなお菓子。神戸芦屋ダニエルのカヌレ

美人に負けない華やかなお菓子。神戸芦屋ダニエルのカヌレ

東方美人ばかりのお茶会を開くと部屋中に甘い蜜の香りが立ち込めるのですが、それにこんなかわいいお菓子が揃えば、幸せな気分になれること間違いなしです。

綺麗で美味しくて甘くて華やかで。たまにはこんなのもいいですよね。うっとりと楽しいひと時に、本当に気分が上がります。ぜひやってみてください。

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ダニエル(カヌレ) 
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