都市部での新築分譲マンションの供給戸数が弱含む中、ここ数年存在感を増す大規模マンション。今回は、大規模マンションを新築で購入するメリットを考えてみたいと思います。
ランドマークとしての存在感と多彩な共用施設。ソフトサービスや豊富なプランバリエーションも魅力
大規模マンションといっても、立地や構造、ランドスケープなどの商品特性は物件によって異なり、一括りで語ることは難しいです。特に、立地の面では既成市街地でのまとまったマンション用地の取得は困難が伴うため、好立地のマンションの中には、小・中規模のものが多いのも事実です。とはいえ、戸数規模の大きな大規模マンションには、そのスケールだからこその魅力があります。大規模マンションの魅力として一つ目に挙げたいのが、ランドマーク的な価値と多彩な共用施設です。
2015年9月に記事で紹介した桜上水ガーデンズを参考物件として紹介します。
■「奇跡の再生プロジェクト 桜上水ガーデンズを見学」
約4.7haもの敷地にゆとりある多棟構成のランドスケープデザインは、まさに圧巻。キッチンスタジオやライブラリーなど多彩な共用施設も揃っています。何といっても、共用部から敷地内の植栽が借景となって眺められるのも心地よい感じがします。
敷地が広ければ、ランドスケープデザインも選択肢も豊富です。経済性を考慮して容積率をどこまで消化するかは、プランニングの制約要件ですが経済性と商品性をいかに併せ持つかは、各社のプランニング力の見せどころだと思います(建て替えプロジェクトである桜上水ガーデンズは、ランドスケープデザインを優先し容積率を消化していません)。
さらに、「Brillia City 横浜磯子」や「ザ・パークハウス 横浜新子安ガーデン」のように、敷地内にスーパーなどの利便施設や「学童保育施設」や「認可保育園」を併設するものも登場しています。地域に必要なインフラの整備を一体で行えるのも大規模マンションの魅力です。
二つ目の魅力として挙げたいのが、コンシェルジュなどの多彩なサービスとセキュリティ・防災面です。
マンションのエレベーターなどの共用部の電気代や保守・運営などの管理コストは、管理費によって賄われます。世帯数が少ないと管理費の合計額が少額になりやすく、管理サービスに活用できる経費も限られてきます。管理形態についても、複数のマンションを巡回して管理するマンションは、戸数規模の小さいマンションに多く見受けられます。一方で、日中は、管理スタッフが常勤し夜間は警備員を配置する24時間有人管理のマンションも大規模マンションでは珍しくありません。
宅配便の取次などの各種サービスをサポートするコンシェルジュサービスも大規模マンションに良くみられるサービスです。忙しい時に相談できるスタッフがいると、それだけでも暮らしに余裕が生まれるでしょう。マンションによっては、焼き立てパンやカフェの提供サービスも。ちょっと寛げる演出ができるのも大規模マンションの魅力です。
立地によっては、JR総武線「平井」駅から徒歩15分の地に建つ全567邸の大規模マンション「アクラス」のように通勤時から終電にかけてシャトルバスを運行するマンションも登場しています。多くの人が集まって住むからこそ実現するライフスタイルは、大規模マンションのメリットです。
三つ目に挙げたいのが、専有部の設備仕様と間取りの選択肢が豊富であることです。
日常的に生活する専有部は、暮らしを支える重要な場所です。住み心地を高める設備仕様の充実や家族にフィットした間取りを選べることは、長く快適に暮らすために大切なポイントです。
設備面では、清潔感を保ちやすいディスポーザーは、大規模マンションの採用率が高い設備です。専用の浄化槽が必要となるため小規模物件での採用は、高級マンションに限定されます。
また、大規模マンションの場合、南向き中心でプランニングされることが一般的だと思いますが、販売面も考慮して面積バリエーションやプランバリエーションが豊富な企画にするケースが多いです。セレクトプランが用意されている場合もあるので、より家族の実情に合った間取りも選びやすいでしょう。
続いては、さらに購入環境面での大規模マンションのメリットを挙げたいと思います。
需給バランス的に割安感が出るケースもある。価格上昇トレンドのマーケットなら、コスト面での優位性にも期待
購入環境面で見た、大規模マンションを新築で購入するメリットとして挙げられるのは、結果的に割安になる可能性があることです。マンション価格を決めるのは、まず一つ目が需要と供給、二つ目が土地価格や建物価格などのコスト面です。この両面で大規模マンションは、小・中規模マンションと違いがあります。
まず、需給面で考えると継続的に新築マンション供給があるエリアに、大規模マンションが供給されると需要と供給のバランスで価格設定が抑えられやすくなります(価格設定は、ディベロッパーの販売方針にも左右されます)。例えば、3年間全く新築マンションの供給がなかった街で総戸数30戸のマンションを売るのと、前年に新築マンションが5物件、計200戸供給された街で、さらに300戸の新築マンションを供給するのでは、販売計画や集客戦略も異なります。後者の方が価格設定が安くなる可能性が高いのは言うまでもありません。
もう一つのコスト面を見てみましょう。新築マンションの分譲スタートと用地取得時期は、一定の時間差があります。
一般的に、小・中規模のマンションは開発に大きな障害がない場合、マンション用地取得から販売開始まで1年程度が目安とされていますが、大きな敷地を持つ大規模マンションは、行政との調整やプランニングに期間を要するため複数年要するものが多く現在販売中のマンションの中にも10年以上前にマンション用地を取得したものもあります。地価上昇トレンドの中で、早期に用地取得できていることは事業計画を容易にし、商品企画に時間だけでなく予算もかけやすいです。結果として今のような地価上昇トレンドで工事費が高止まりしている環境では、魅力的な新築マンションを供給しやすくなります。また、規模が大きいほどスケールメリットで工事単価も抑えられやすい。結果的にコストパフォーマンスが高いマンションを供給しやすくなります。
価格上昇で、売れ行きが鈍化しているせいか、マーケットを見渡せば魅力的な大規模マンションのラインナップが目立つ2016年。納得感のあるマンション選びのモノサシをつくるうえでも、ぜひ大規模マンションのモデルルームを見学してみてはいかがでしょうか。