危機遺産リスト掲載の物件は7件増えて計55件へ!
ウズベキスタンの世界遺産「シャフリサブス歴史地区」のアク・サライ。ティムールが建築した夏の離宮で、ふたつの塔の一部が残されている
2013年に世界遺産リストに登録された「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」について、日本が提出した保全状況報告書の内容が審議され、25の構成資産を「ひとつの存在」「ひとつの文化的景観」と位置づけて保護・保全していく方策が評価され、承認された。
ただ、マイカー規制や入山料の導入等々、先送りされた課題も多く、これらについては2018年7月までに適正な登山者数を割り出して施策の見直しを行うとしており、今後もモニタリングが続けられる。
<危機遺産リストから削除された物件>
■ムツヘタの文化財群
ジョージア、1994年、文化遺産(iii)(iv)
スヴェスティツホヴェリ大聖堂、サムタヴロ修道院、ジュワリ聖十字聖堂で構成される世界遺産だが、遺産を構成する石材やフレスコの劣化が著しく、適切な保護・保全が行われていなかったことから2009年にリスト入りしていた。しかしながら政府の努力が実り、状況が改善されたことからリストからの削除が決定した。
<危機遺産リスト入りした物件>
■ジェンネ旧市街
マリ、1988年、文化遺産(iii)(iv)
大モスクをはじめ泥と木材で造られたスーダン・サヘル様式の建物を特徴とする世界遺産。風雨による浸食の被害を受けている一方で、都市化などによって適した建築素材が得られないことなどから保護・保全状況が悪化しており、危機遺産リスト入りすることとなった。
■シャフリサブス歴史地区
ウズベキスタン、2000年、文化遺産(iii)(iv)
シャフリサブスはティムールの出身地であり、ティムールが築いた華麗な都市遺跡が残されている。しかしながら周辺にホテルをはじめとする近代的な建物が次々と建設されており、世界遺産の景観に不可逆的な影響を与えつつあることから危機遺産となった。
■ナン・マトール:東ミクロネシアの祭祀遺跡
ミクロネシア、2016年、文化遺産(iii)(iv)(vi)
今回の世界遺産委員会で登録された物件で、ミクロネシア初となる世界遺産。人工島の上に宮殿・寺院・墓・住居等が築かれているが、砂の堆積などによって水路が塞がれ、マングローブ林が遺跡を侵食するなどの被害が出ていることから、世界遺産登録と同時に危機遺産リストに記載された。
■レプティス・マグナの古代遺跡
リビア、1982年、文化遺産(i)(ii)(iii)
■サブラータの古代遺跡
リビア、1982年、文化遺産(iii)
■キレーネの古代遺跡
リビア、1982年、文化遺産(ii)(iii)(vi)
■タドラット・アカクスのロックアート遺跡群
リビア、1985年、文化遺産(iii)
■ガダーミスの旧市街
リビア、1986年、文化遺産(v)
以上5件はリビアの世界遺産だが、今回リビアのすべての世界遺産が危機遺産リストに加えられた。2011年に42年続いたカダフィ政権が倒れて以降、各勢力が支配範囲を巡って事実上の内戦状態に陥っており、一部では破壊行為が確認されているほか、保護・保全が期待できる状況でないことから今回の措置となった。
リビアのように所有する世界遺産がすべて危機遺産リストに記載されている国には、アフガニスタン(2件)、シリア(6件)、パレスチナ(2件)、ソロモン諸島(1件)、ミクロネシア(1件)、ベリーズ(1件)、ギニア(1件)、コンゴ民主共和国(5件)がある。
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