「変動vs固定」の議論、金利低下の影響は?
固定金利か変動金利か? シミュレーションをしてみると……
■マイナス金利下の「固定vs変動」シミュレーション
平成28年(2016年)6月の金利をもとに、固定金利と変動金利の比較シミュレーションを行いました。借入金額3500万円、期間35年間の元利均等返済です。ローン(1)は、全期間固定で金利1.1%。ローン(2)は、変動金利を想定し、当初0.575%で、5年ごとに0.25%金利が上昇(最終2.075%)。ローン(3)は、当初0.575%で、5年ごとに0.5%金利が上昇(最終3.575%)。比較の際に注目するところは、支払合計(元金と利息の合計)です。ローン(1)は、4218万円、ローン(2)は、4184万円、ローン(3)は、4528万円という結果でした。
※住宅ローンのシミュレーションは、住宅ローンのシミュレーション「みかローン」によって行いました
5年ごとに0.25%のゆるやかな金利上昇を想定するのであれば、固定金利よりも変動金利の方が、最終的に支払合計が少なくて済みます。5年ごとに0.5%の比較的金利上昇の幅が大きい状況を想定すると、変動金利よりも固定金利の方が有利になる結果です。5年ごと0.5%上昇で、最終的に3.0%金利上昇があるかどうかは読めませんが、ローン(1)とローン(3)の支払合計の差額は309万円で、1年間あたり8.8万円になります。現在の固定金利が、かなり低い状態になっているので、固定金利を選択する方が安心感はあるように感じます。
■マイナス金利導入前の「固定vs変動」シミュレーション
同じようなシミュレーションを1年前にも行っていて、ローン(1)の全期間固定の場合の金利は1.58%、ローン(2)と(3)の変動金利の当初金利は0.775%で、金利上昇のペースは、先のシミュレーションと同様です。全期間固定のローン(1)と、5年ごとに0.5%上昇を想定するローン(3)の支払合計の差額は118万円で1年あたり3.4万円です。差額118万円は、確かに大きな金額であるけれども、例えば、家計の収支に比較的余裕のある世帯であれば、変動金利も十分選択肢になり得ると考えられます。
マイナス金利になってからのお客様に対するアドバイスも1年前と比較すると、若干、伝え方のニュアンスを変えています。
マイナス金利の今後の行方は?
マイナス金利は、アベノミクスと同時に始まった、異次元の金融緩和と合わせて、インフレ2%の目標が達成されるまで続けるとされています。足元の経済指標をみると、目標達成にはしばらく時間がかかりそうです。また、マイナス金利をさらに拡大するかどうかは、読めないことですが、マイナス金利をいち早く導入した欧州中央銀行では、平成28年3月には中央銀行への預金金利を-0.3%から-0.4%に引き下げたという経緯から、日本でもマイナス金利の拡大の余地は十分にあると考えられます。ただ、金利を引き下げ、市場金利がさらに低下したとしても、大型消費や企業の投資拡大には、なかなか結びつかない状況ではないかと個人的には感じています。今回のシミュレーションは、机上の空論でしかありませんが、数字で実際に見てみると、マイナス金利が住宅購入やローンの借り換えにどのような影響を与えているか見ることができます。過去のシミュレーションと比較すると、今の状況は、住宅購入や住宅ローンの借り換えは、かなり有利な状況となっていると結論づけることができます。
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