男の靴・スニーカー

3万円台で買える上に“語れる”革靴!

名実ともに「足元を見られる」この時代、優れた革靴は紳士に不可欠な存在。良いモノほど高いのが世の常ですが、たった3万円台でも、高級靴に勝るとも劣らない革靴があります。さらにはウンチクまで語れてしまうという、名作モデルを紹介します。

柚木 昌久

執筆者:柚木 昌久

メンズファッションニュースガイド

語りたくなるウンチクまで備えた、手頃に買える良革靴とは

安くても魅力的な革靴は存在する!

安くても魅力的な革靴は存在する!

「良い靴は履き主を良い場所に連れて行ってくれる」という言葉は知っていましたが、MonoMaxの編集長としていろいろな会合に出るようになって、いよいよ実感するようになりました。

足元、よく見られるんです。上の立場になると初対面の人とお話をする機会が増えますが、共通の話題が見つからないと、お互いに「天気」や「食べ物」「時事」などの定番ネタに飛びつきます。その中のひとつに「服装」もあるのですが、モノ雑誌の編集長という立場上、そこに触れられることが多く、靴にも注目されるのです。

なにも、僕が高級靴を履いていると自慢したいわけではありません。上等な靴ほど高額になるのは事実ですが、3万円台でも魅力的な靴がありますし、語りたくなるウンチクまで備えたモデルも存在しているんです。

「そんなに安いの!?」と驚かれたらしめたもの! 品質と価格がイコールにならないケースがあること、さらには、ちょっとしたウンチクまで披露すれば、「慧眼を持つ人物だ!」と思われることでしょう。

……と、いろいろ理屈を述べましたが、とにかく手頃に買える良靴がある! という話。僕が知る「買える上に“語れる”革靴」の4ブランドをご紹介します。


1.鬼才デザイナーが手掛ける「フットストック オリジナルズ」

サービスマンシューズ \¥33,000~(税抜)アッパー:ステア/スエード ソール:レザー/ラバー 製法:セメント サイズ:7(25.0cm)-9.5(27.5cm)

サービスマンシューズ \¥33,000~(税抜)アッパー:ステア/スエード ソール:レザー/ラバー 製法:セメント サイズ:7(25.0cm)-9.5(27.5cm)


まずご紹介するのは、「フットストック オリジナルズ」。シューズデザイナーである竹ヶ原敏之介さんが手掛けたブランド、と聞いて、「あの!?」と気づかれた方は革靴通です。

1994年より自らのブランドを立ち上げた後は、「ジョージ・コックス」「トリッカーズ」「パラブーツ」など、そうそうたる老舗シューズメーカーでデザインを手掛けて腕を磨いたという傑物。「フットストック オリジナルズ」は、そんな彼が「こだわり抜いた素材、木型、ソールを用い、世界に誇る熟練した日本の職人技術で作る」をコンセプトに、2014年にスタートさせた最新ブランドなんです。

靴作りへのこだわりは、この「サービスマンシューズ」を見れば一目瞭然でしょう。ミニマルなデザインですが、素足で履いてもくるぶしが美しく見えるよう配慮された履き口のラインや絶妙なバランスを見せるアイレットの配置など、ディテールが凝っています。それに、昔の米陸軍の軍靴を現代的にアレンジしたというUSアーミーラストが使われていて、トゥがややポッテリとしているのに、全体のシルエットに野暮ったさはゼロ。こういうところも、さすがの一言です。ミリタリー由来のインペリアルソールもグリップ力が高いし、ステアハイドのアッパーも耐久性があって……などなど、このように語りだしたくなるシューズである、ということを証明してくれました。

(問)ギャラリー・オブ・オーセンティック
03-5412-6908
http://footstockoriginals.com/


2.酸いも甘いも噛み分けてきた「トレーディングポスト オリジナル」

CTP3802E \¥36,000(税抜)アッパー:カーフ ソール:ラバー 製法:グッドイヤー サイズ:6(24.0cm)-8.5(26.5cm)

CTP3802E \¥36,000(税抜)アッパー:カーフ ソール:ラバー 製法:グッドイヤー サイズ:6(24.0cm)-8.5(26.5cm)


革靴をよく知る者といえば、愛好家の方々だけに限りません。さまざまなブランドのシューズを商品として手に取り、情報を知り尽くした上で顧客に提案するセレクトショップ関係者も、この道のプロフェッショナル。そんな、酸いも甘いも噛み分けた彼らが直接手掛けるオリジナルブランドも良作揃いなんです。

そのひとつが、「トレーディングポスト オリジナル」。トレーディングポストといえば、「クロケット&ジョーンズ」や「トリッカーズ」の正規代理店としてもおなじみですよね。1980年代からインポート事業を手掛けていますが、実は同時期の1984年からオリジナルブランドの開発にも着手していたのです。

このクォーターブローグ「CTP3802E」でも、世界中の名靴を手掛けてきたノウハウが最大限に生かされています。たとえばアッパーのカーフは、高級靴の定番ともいえるイタリア産原皮なのですが、独自の生産ルートでなめすことでコストを抑制。それでいてグッドイヤーウェルト製法で仕上げ、完成度の高いつり込みで心地良い履き心地を実現しています。エレガントなセミスクエアラストを使ったパンチドキャップトゥで、普段でもフォーマルな場でも使えます。

ショップオリジナルブランドはあまり脚光を浴びない存在ですが、その完成度には目を見張りますし、「ステイタスブランドばかり追いかけまわしていない人」だと相手に印象づけることもできます。

(問)トレーディングポスト 青山本店
03-5474-8725
https://tradingpost.jp/



3.国際色豊かな経歴も面白い「ジャラン スリウァヤ」

98321 \¥28,000(税抜)アッパー:カーフ ソール:レザー/ラバー 製法:ハンドソーンウェルテッド サイズ:5(23.5cm)-9.5(28.0cm)

98321 \¥28,000(税抜)アッパー:カーフ ソール:レザー/ラバー 製法:ハンドソーンウェルテッド サイズ:5(23.5cm)-9.5(28.0cm)


低価格なのに高品質なシューズブランドとして一番に頭に浮かんだ
のが、インドネシアの「ジャラン スリウァヤ」でした。モノがすばらしいのは当然なのですが、ブランドの歴史も興味深いんです。創業したのは1919年。同地は17世紀からオランダ領でしたから、同国経由で製靴技術が到来しており、外国人向けの軍用靴を製造していたそうです。その後に国が独立、平和な時代がやってきたことで、経営者の息子がイギリスやフランスに渡り皮革産業やハンドソーンウェルテッド製法を学び、2003年に自社ブランドを設立。日本へもすぐに上陸を果たしました。

それ以来、売り上げ1位を記録しているロングセラーが、このストレートチップ「98321」。ビスポークシューズにも使われているハンドソーンウェルテッド製法を採用しているため足なじみが良く、履き心地は抜群です。素材もフランス・デュプイ社のカーフが使われていて、高級靴たる風格を備えています。

これだけの品質なのに3万円以下で済んでしまうのは、人件費の安さもありますが、日本とインドネシアが経済連携協定(EPA)を結んでいるため、関税が優遇されているというのも大きな要因。これがヨーロッパのブランドだったら、3割増の価格になるのは間違いないでしょう。インドネシアブランドですが、オランダ、イギリス、フランスと、国際色豊かな土壌を背景にしている点や、経済連携の国際的な動きなどなど、……世界に目を向けている人も増えてきていますから、「ジャラン スリウァヤ」をきっかけに会話も弾みそうですね。

(問)GMT
03-5453-0033
http://www.jalansriwijaya.com/



4.モノ作りの国、日本の心を宿した「三陽山長」

堅三 \¥35,000(税抜)アッパー:牛革 ソール:ラバー 製法:セメント サイズ:39(24.5cm)-44(27.0cm)

堅三 \¥35,000(税抜)アッパー:牛革 ソール:ラバー 製法:セメント サイズ:39(24.5cm)-44(27.0cm)


国際色豊かというキーワードはどのジャンルでも広まっていますが、世界との距離が短くなるほど、よりくっきりと浮かび上がってくるのが自分の立ち位置。つまり、日本という存在です。本誌でもたびたび「メイド・イン・ジャパンモノ」を特集しますが、いいモノが多いなと改めて思いますし、読者の反響も良くて、関心の高さがうかがえます。

日本で革靴といえば、「三陽山長」でしょう。世界最良の素材を駆使し、日本の伝統職人の匠の技による物作りで、『和』をベースとしたオリジナルテイストを表現するブランドです。皮革製造における熟練の国内職人が手掛け、日本人の足に合った靴を生み出しています。モデル名が「友二郎」「勘之介」「弥伍郎」といった和名なのも面白いですよね。

今回ご紹介する「堅三」も個性的で、ドレスシューズの外見とスニーカーのような履き心地を融合した「ドレススニーカー」シリーズのひとつなんです。ソールはクッション性が高くて快適ですし、シューレースはゴムでできているので、結んだり解いたりする手間がいりません。それでいて、このドレス顔ですから、一度利用すれば手放せなくなるでしょう。

「和」の心を宿した「三陽山長」。海外からやってきたゲストに自慢してみるのもいいかもしれません。

(問) 三陽山長銀座店
03-3563-7841
http://www.sanyoyamacho.com/

いかがでしたでしょうか? 今回は価格だけでなく“ウンチク”にもフューチャーしましたが、知識だけでは得られる情報に限りがあるのも、また事実。実際に目で見て履いてみて、それぞれのモデルの魅力を体感してみてください。

月間500点の最新ファッショングッズをチェックするモノ雑誌編集長・ガイド柚木の最新情報は、プロフィールをチェック!
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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