それはアイテムの効果なのか、権利行使なのか
消費者を守るための仕組みなんですが、ゲームに関しては線引きがとても難しいのです(イラスト 橋本モチチ)
LINEは発表した見解の中でゲーム内のアイテムが前払式支払手段に該当するかどうかは「法令上も行政実務上も判断基準が明確でない」としてますが、実際その通りで、複雑に入り組んだゲームの中で扱われるアイテムをどう判断するのは極めて難しい話です。簡単に結論を断定することはできないというのが大前提です。
毎日新聞が報じた視点では、通貨として利用される実態があるかということがポイントでした。2015年に使える範囲を限定した仕様変更は、前払式支払手段として規制の対象にならないように対処したものである、という流れからの視点だと思われます。仕様変更以前は前払式支払手段に該当し、仕様変更をしたことで該当しなくなったということであれば、毎日新聞の報じた通り、資金決済法の規制を逃れるために仕様変更をしたのでは、という見方が成立します。
LINEの主張するように、仕様変更前から前払式支払手段には該当しないとするなら、もちろん問題はありません。しかし実は、仕様変更後も前払式支払手段に該当する、という考え方もあります。
というのは、前払式支払手段に該当するかというポイントが、通貨のように使えるか否かであるというのは、少し語弊があるからです。これは前述した「権利行使」についてどう考えるかが重要になります。
ルビーによって宝箱の鍵を手に入れた時点で、ユーザーが既に商品やサービスを受け取っている、と考えるのであればLINEの主張が通ります。この宝箱の鍵というアイテムは、ゲームの中でアイテムの機能として宝箱を開けて中身を取り出すことができます、という説明です。そして、仕様変更前は色んな機能がありましたが、それもゲームのアイテムとして色々機能があっただけですよ、ということですね。一般的に、例えば回復薬のようなものや武器や防具のようなものは、アイテムの機能として様々な効果が備わっていますが、それは権利行使にあたらないとして、規制対象にはならない場合が多いでしょう。
しかし、ルビーを宝箱の鍵に取り換えても、依然としてそれは宝箱の中身のアイテムと引き換えにする為だけのもので、まだ支払ったお金に対するものやサービスは手に入れていない、と考えると話は変わります。この場合は仕様変更後も宝箱の鍵は前払式支払手段とされる可能性があります。もともとこれは先にお金を払っている消費者を保護する為のきまりですから、ルビーを宝箱の鍵に変えて使える範囲を限定したらそれでよいのか、という議論はありそうです。
毎日新聞の記事では、LINEが資金決済法逃れをしている疑惑がある、というところにニュースバリューがあったためか、宝箱の仕様変更のところがポイントとなっていました。しかし、ゲーム業界的には、ゲームのアイテムのどこまでがどういう理屈で資金決済法による規制の対象になり得るのか、という点が大変重要であるように思います。
ゲームのアイテムのように複雑に役割を持つものに対して、資金決済法がどう適用されるかは一筋縄ではいかない難しい問題です。LINEのニュースは、今リリースされているゲームや、今後展開されるサービスとも、深く関わるものとなりそうです。
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