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LINE POPから考えるゲームのアイテムと資金決済法(2ページ目)

毎日新聞は、2016年4月6日朝刊で、コミュニケーションアプリ「LINE」を提供し、ゲームメーカーでもあるLINEに関東財務局が立ち入り調査をしたことを報じました。「LINE POP」に使われている宝箱の鍵が、資金決済法で規制されるゲーム上の通貨である可能性がある、との話です。さて、宝箱の鍵が通貨であるというのは、いったいどういうことなんでしょうか?

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

アイテムを買うアイテムは通貨である

パズドラの図

パズドラの魔法石のようなものは、アイテムではありますが、ゲーム内通貨のような役割も持っています

プリペイドカードのようなものを発行するにはきまりがある、ということはお分かりいただけたと思いますが、問題は、ゲームにおいては何がプリペイドカードのようなものに当たるのか、つまり「前払式支払手段」に当たるのか、というのが重要になります。

ゲームユーザーに分かりやすい例では、ガンホー・オンラインエンターテイメントが提供する「パズル&ドラゴンズ」の魔法石がそれに当たります。ユーザーが現金で購入し、ガチャを回すのに使ったり、モンスターのBOXで保管できる数を増やしたり、あるいはコンテニューをするのに使ったりできます。魔法石、という名前ではありますが、実質上はゲーム内通貨的な役割を持っています。このような役割を持つアイテムは多くのモバイル端末向けのゲームに登場します。

LINE POPでこの魔法石に当たるのがルビーで、実はこのルビ-に関してはLINEは前払式支払手段として届け出をしていて、ゲーム内で資金決済法に基づく表示もしています。そして問題になっている宝箱の鍵は、このルビーで購入するアイテムです。

宝箱の鍵は通貨なのか?

LINEundefinedPOPの図

宝箱を開けてアイテムを手に入れるのに必要な鍵は、役割としては通貨といえるのでしょうか?

ちなみに、前払式支払手段に該当するには、対価を得て発行しているもの、という条件があります。無料で手に入るポイントなんかには該当しないよ、ということです。ゲームでは現金で購入できるアイテムでも、ゲーム中に無料で手に入る場合があります。この場合、無料で手に入る分に関しては該当しない、と解釈することができます。

ルビーにしても、宝箱の鍵にしても、ゲーム中無料で手に入る分に関しては該当しません。一方で、ルビーで購入する宝箱の鍵に関しては、ルビーが前払式支払手段に該当し、それをもって消費者が対価を払っていると考えられるので、この条件に当てはまります。

もう1つ重要なポイントがありまして、商品を購入したりサービスを受けたりする支払いに対して利用できる、という条件があります。法律には「代価の弁済のために提示、交付、通知その他の方法により使用することができるもの」と書いてあります。これを「権利行使」と呼びます。色々なアイテムなどを購入できるルビーはゲーム内通貨のようなもので、この条件に該当します。じゃあ、宝箱の鍵はどうなのか、ということです。

LINE POPの宝箱の鍵は、ゲーム中に手に入る宝箱を開けるのが主たる役割で、宝箱の中にはゲームを有利に進めるアイテムや、ルビーなどが入っています。毎日新聞によると、以前は宝箱を開ける以外にも、ゲームを先に進めたり、キャラクターの獲得などに使え、通貨に近い役割がありましたが、2015年7月に仕様変更をし、宝箱を空ける役割に限定したことで、前払式支払手段に該当しないように内部処理したと報じています。

この点に関しLINE側は仕様変更前でも「外観や使用場面等を総合考慮して前払式支払手段に該当しない」としつつ、関東財務局と協議を進めています。

さて、毎日新聞とLINEの主張の食い違いはどこからくるのでしょうか?
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