会社員が抱える職場のストレス ワースト5から見えるもの

ストレスを抱える職場原因ワースト5

人事異動、仕事のミス、モラハラ、つきあいにくい同僚や上司…働く人にとってストレスは避けられないものかもしれません

産業医面談で多いのは、やはりストレスに起因する就業上の問題です。「ストレスのない仕事はない」といえるほど、多くのビジネスパーソンが何かしらのストレスを抱えています。過剰なストレスに対処できず健康を損なっているケースもあれば、ストレス管理が不十分で不調を感じているケースもあります。

ここ15年、精神障害による労災請求件数と労災支給決定件数はうなぎのぼりに増加の一途をたどっています。平成26年度の請求件数は1,456件、決定件数は497件と、いずれも過去最多を記録しました。ビジネスパーソンにとって怖いメンタル以外の問題は脳発作や心臓発作ですが、精神障害とは対照的に脳・心臓疾患に関する労災補償事案は減少傾向です。そこで今回は、精神障害に関する原因の中でもよくあるものを知っていただくために、ビジネスパーソンのストレスの原因となるもののワースト5をご紹介します。このランキングを見て、それぞれがストレスへの対処方法を模索するきっかけにしていただければと思います。

今回は、厚生労働省が発表している、平成25年、26年度の「過労死等の労災補償状況」データを元にしました。精神障害の原因となった「出来事の類型」をグルーピングをすることで浮かび上がったストレスワースト5を、以下で発表します。

第5位:職場の環境変化によるストレス(6.4%)

「昇進したことを妻も喜んでくれたのですが、やっぱり部下に指示するのが苦手で……。日曜の夜になると、会社に行きたくないと思ってしまいます。」

職場の環境変化とは、勤務形態の変化、配置転換、転勤、昇進・昇格、人事異動(上司、同僚)などが該当します。多くの人は職場の環境変化によってストレスを感じますが、その理由は今まで慣れ親しんだネットワークやルールに変更が発生するからです。どこに何があって、誰に聞けばわかるのかといった、その部署特有のルールに慣れているからこそ、効率的に仕事が行えています。特にルーティン業務に関しては、暗黙知があることで機械的に作業することができ、効率的に仕事が進められるわけです。

しかし、職場の環境変化が発生すると、獲得した社会関係資本がリセットされてしまうため、またイチから構築していく必要があります。従って、これまでのスピード感で仕事をすることができないばかりか、今まで正しかったやり方が明日からは間違いとされる可能性もあり、環境変化に伴うストレスが発生します。もちろん家庭環境の変化もストレスの要因になりうることは言うまでもありません。

昇進や昇格などは本来嬉しいことのように思われますが、これらも含んだ環境変化をきっかけに、軽度の不安感から寝つきの悪さ、意欲がわかないといった症状が出現することがあります。重症化してしまった場合、適応障害や抑うつ状態と診断されることもあるのです。

第4位:社内や取引先からの強要(10.1%)

「派遣先企業のプロジェクトマネージャーがひどいです。毎日繰り返し『死ね』と言われ、何か言い返すとお仕置き時間と称して余計に面談をさせられたりします。さすがに限界を感じました。」

社内や取引先からの強要には、達成困難なノルマ、取引先からの無理な注文、セクシュアル・ハラスメントなど、業務に関係する強要から業務外の強要までが、幅広く該当します。派遣先や常駐先、地方の営業先といった本社から比較的目の届きにくい、小規模な部署や事業所で発生するケースが多いように感じます。

ハラスメントに対する教育を受けることなく知識のない若く未熟な管理者が増加したこと、開発の短納期化による負担増、数字管理による目標の厳格化などがこのケースの背景として影響しています。少人数の組織だからこそ孤立したときの影響が大きく、トラウマに近い症状が残ってしまうケースも数多く見受けられます。その場合、自分の問題が解決した後でも、別の人がそのような状況に置かれて罵声を浴びているような状況を目にすると、自分は関係ないにも関わらず、動悸や冷汗、めまい、気分の悪さなどが出現し、パニック発作やパニック障害に似た症状が出る場合があります。

第3位:業務上のミスや事故(17.6%)

「最近寝付きが悪くて、なかなか寝られず、遅刻することが増えています。寝る前になると『あの仕事やったかな…』と仕事の不安が浮かんでしまうんです」

ここには部署や会社全体に影響を及ぼすような業務上のミスや事故を起こしてしまうケースが該当します。重大なミスや事故を起こしてしまった場合、その後はミスがないかの確認作業が必要となり、事故後の業務効率が著しく悪化することがあります。周囲もその影響に気がつきます。

また、ミスや事故を起こした本人のみでなく、同僚が事故に遭遇するところを目撃したり、同僚が上司から常軌を逸したレベルの叱責を受けているところを目撃したりすることで、目撃者が大きなストレスを感じ、身体的異変が起こるケースもあります。女性の方が他人の不安を自分事に感じやすいのかもしれませんが、男性よりも女性に多い傾向があります。

症状としては、非常に不安感が強くなり、多くのケースで不眠症に至ります。失敗した場面と同じような場面を避けようとしたり、思い出して涙が出たり、辛い記憶から逃れられなくなって職場に戻ることができなくなってしまう場合もあります。

第2位:負担に感じる業務内容と業務量(18.6%)

「ひとりが病気になって休んだ分を、チーム内で回さなくてはならなくなりました。採用をいくら頼んでも、全然人が補充されないんです」

これは働いている人なら誰もが一度は経験したことのある、就労上の課題でしょう。特に負担に感じる業務内容としては、一人でこなさなければならない代わりの利きにくい業務や、身の危険を伴う業務などが挙げられます。負担に感じる業務量とは、45時間以上の残業が発生している場合が該当します。

これらの就労状況が長く続くと、気持ち的には頑張れていても身体的な疲労感が蓄積し、緊張下で業務に忙殺されるようになり、優先順位をつけて仕事をしたくてもどれも優先順位が高いように見えてきたりします。完全に行き詰った状態です。

このような状況下に陥った場合、「上司に理解を求めるための状況周知」「捨てるものを決める」「計画性のある業務処理」を実行に移しながら、睡眠時間だけは最優先で確保していく必要があります。身体的疲労感を解消できる唯一の方法が「睡眠」です。

残業が多くなると、家帰って気分転換でテレビを見て、夜中までゲームをしたくなるのはわかります。しかしその行為が、負のスパイラルの始まりとなるので要注意です。このような場合は、余暇の時間を減らし、逆に睡眠時間を30分増やしたほうが良いくらいです。症状としては、元気が出ない、いらいらする、疲労感が中心となります。

第1位:人間関係 (32.8%)

「上司のことを本当に頑張って、頑張って受け入れようとしたんです。上司からの愛情は理解しているつもりです。でも生理的に受け付けなくて…」

第1位は人間関係で、全体の32.8%にものぼります。32.8%のうち、上司とのトラブルが18.1%、嫌がらせやいじめが11.4%です。職場の人間関係は永遠のテーマであり、「上司と親は選べない」とはよく言ったものです。選べるものなら選びたいというのが部下の偽りなき本音でしょうし、逆に上司も部下を選びたいと言うでしょう。

人間関係のトラブルにおいて、重要なキーワードは「別の見方」です。上司が部下に指示を出すケース一つとっても、上司の立場で見れば問題のなさそうな指示でも、限られた情報しか共有されていない部下から見たら理解できないこともあるでしょう。それぞれの立場同士がお互いの立場にたって別の見方ができるようになると、人間関係は劇的に変わります。多くのメンタルヘルス研修やレジリエンス研修で、このような認知行動療法の要素を取り入れているのは、ストレス耐性を養うためには事象の「別の見方」が重要だからです。

人間関係が一度悪化してしまうと、徐々にそのストレスが積み重なり、話をしているだけでも気分が悪くなってきます。症状としては、いらいらや怒り、動悸、冷汗、胃痛、意欲低下などが見られます。

5つのストレスタイプを知り、ストレスと上手に向き合おう

「精神障害による労災状況」と聞くと何となく大ごとのようで、自分たちにはあまり関係のないデータだと思われた方もいるかもしれません。しかし、ここで挙げた結果は、ビジネスパーソンのストレス問題と日々接している産業医や産業保健師、カウンセラーの肌感覚とも一致していると思います。

ここで挙げた5つのストレスは、それぞれにおいて予防と対処法が異なります。もし今現在、仕事でのストレスを感じているとしたら、まずは自分のストレスがどのタイプに属するものかを理解した上で、適したストレス対処を行うのが良いでしょう。

最後にこれだけは言っておかないといけません。

ストレスの悪い部分を取り上げて筆を進めてきましたが、ストレスは決して悪いだけのものではありません。ストレスがあるからこそ、ものごとに前向きに挑戦することができたり、やりがいや達成感を味わうことで人生の満足度を高められたりする側面もあるのです。

しかし、ストレスと上手に向き合うことが出来なかったり、過剰に溜め込んでしまったり、逆にストレスのない生活を望み過ぎて適度なストレスまで避けていると、逆に健康を害することもわかっています。

ストレスと上手に向きあい、対処していく方法を身につけていくことで、継続して充実した日々を送ることが可能となるのです。

▼参照
厚生労働省ホームページ:平成26年度「過労死等の労災補償状況」を公表
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