ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

気になる新星インタビューvol.19 岡村美南(4ページ目)

1974年の劇団四季版初演から42年、このたび新演出となった『ウェストサイド物語』に、アニタ役で出演する 岡村美南さん。生き生きとした演技で輝きを放つ彼女ですが、今回の新版はこれまでにない経験だったのだそう。演出のポイントとは? 米国で修業を積んだ“チャレンジャー”の半生ともども、大いに語っていただきました!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド


オーディション合格、たちまち
意外な作品で「即戦力」デビュー

『劇団四季ソング&ダンスundefined55ステップス』撮影:下坂敦俊

『劇団四季ソング&ダンス 55ステップス』撮影:下坂敦俊

――在学中に一時帰国して四季のオーディションを受けたのですよね。

「アメリカですといろいろな作品があっても、例えば私はアジア系なのでアニタは演じられませんし、『ライオンキング』のナラもできません。人種的な制約があるんですよね。でも日本ならば人種の制約なく、いろいろな役を演じることができるんです。

オーディションを受けたのは劇団四季だけです。四季しか観たことがなかったですし、これだけ大きな劇団でもあり、日本なら劇団四季だな、と。それまで英語で歌う時はいつも発音がどうとか気になっていたので、オーディションでは久しぶりに日本語で歌えてものすごく嬉しくて。とても気持ちよく歌えましたね」

――そして合格、いきなり即戦力として『劇団四季ソング&ダンス 55ステップス』に出演。とまどいはありませんでしたか?

「ヴォーカルコースで合格したので、初舞台がダンスパートだったのには驚きました。周りがダンサーばかりだったので、毎日遅くまで練習したことを覚えています。
『ウィキッド』撮影:荒井健

『劇団四季ソング&ダンス 55ステップス』撮影:下坂敦俊

実は当初、私は『コーラスライン』のはじめの10分ぐらいしか出てこない役でデビューする予定 だったんです。それが体調を崩してキャストから外れることになり、その時は“一生懸命練習したのに”とすごく落ち込みました。でもその稽古で演出家に判断していただき『ソング&ダンス~』に出演することになりました。そしてその公演が千秋楽を迎えたタイミングで、また次に繋がっていきました」

――2年目の『ウィキッド』エルファバ役ですね。

「ちょうどその時、新人発掘オーディションをやっていました。参加をしたら“エルファバを歌ってみなさい”ということになったんです。自分からエルファバを狙いにいったわけではなくて、いつか俳優人生の中でできればと思っていた役でしたので、言われた時には本当にびっくりしました。『ソング&ダンス~』はレパートリーを集めたショー形式の作品でひたすら踊っていましたので、舞台で台詞をしゃべったことがまったくありませんでした。まずは四季の方法論から、当時の公演委員長にマンツーマンでご指導いただいたりと大変でした。先輩方にはとてもお世話になりました」

――私が初めて岡村さんを意識して拝見したのはその翌年の『夢から醒めた夢』でした。ばっちり出来上がった新人さんだなあ、と思ったのを覚えています。

「ピコも驚きましたね。絶対やらない役だろう、と思い込んでいました。ピコは子供という印象が強くて、長身の私にはチャンスは無いだろうと思っていたので、座内オーディションがあるとは聞いていましたが受けようともしていませんでした。しかしひょんなことからそのオーディションを受けさせていただけることになったんです」

「無我夢中」が数珠つなぎになり、いつか
形になる日を夢見て

――これまで演じた中で特に思い出深い役は?
『ウィキッド』撮影:荒井健

『ウィキッド』撮影:荒井健

「全部です。エルファバはとても大変でしたが、ゼロの段階から始めた役なので、その後一年に一度くらい出演させていただいているのですが、その都度自分の成長が感じられる役ですね。ピコは1年間ずっと演じたことがあり、一つの役をずっと演じ続けるということの大変さを経験しましたが、そこを乗り越えるとまた見えてくるものがありました。私が生まれて初めて観たミュージカルでもあり、それに出演させていただけた、さらにその時のピコ役だった先輩が直接教えて下さったということもあって、すごく心に残っています。

『クレイジー・フォー・ユー』のポリーも大変でした。コメディなので、間合いはもちろん、そこにリアルにいられないとお客様も引いてしまうので、いかにリラックスできるか試行錯誤を重ねました。今でも挽回したいところはたくさんありますが、あの時、集中して苦戦していた経験が今のアニタにすごく役立っているようにも思えますね」

――一つ一つの経験が数珠つなぎになって活かされてきているのですね。

「そうなっているといいですね」

――どんな表現者になっていきたいですか?

「毎日の公演一回、一回を追いかけるので精一杯ですが、そこで毎回100パーセントを出してゆくことがすごく大変なことなので、そこに集中しています。そうして経験を重ねていくうちに、ある日振り返った時に何かが見えてくればいいですね」

――今はひたすら蓄積の段階、でしょうか。

「そうかもしれないですね」

――歌もダンスもアピールポイント、というのが岡村さんの魅力ですよね。

「でも自分では“突出するところがない、全部が中途半端だったり器用貧乏というのはいやだな、と思ったことがあります。周りはスーパーダンサーばかりなので、今回もみんなで踊るシーンでは“アニタが一番”に見えるよう、バレリーナを目指すくらいの気持ちで(笑)バーレッスンをやっています」

――体育館でのアニタのダンス、素敵ですよ!

「そうですか?たくさんダメ出しもらっていますけど(笑)。頑張ります!」

*****
溌剌として、ちゃきちゃきしたところもある岡村さん。だれにも頼らず飛び込んでいったアメリカで技術を磨きながらも、自分の良さを認め、伸ばそうとする現地のショーマンシップを身に着けてこそ、劇団四季入団以降、たちまちの大役続きにも臆することなく、のびのびと役を生きていらっしゃるのだと感じられます。そんな彼女が「新たな、大きな経験」と感じる今回の『ウェストサイド物語』は、彼女のみならず劇団四季のミュージカル史においても、大きな節目となるかもしれません。目撃必至、の舞台です。

公演情報*『ウェストサイド物語』上演中~16年5月8日=四季劇場「秋」 その後6月からは全国公演を予定




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