衝撃の「主役デビュー」以降、
次々とヒロインを演じる

『スーザンを探して』写真提供:東宝演劇部

『パイレート・クイーン』写真提供:東宝演劇部

――ここからは保坂さんの“これまで”をうかがっていけたらと思うのですが、そもそも保坂さんはどのようにミュージカルに興味をもったのでしょうか?

「東京出身で、親子でミュージカルを観に行ったり学校行事で観劇するような機会が多かったんです。2,3歳の頃から記憶があるのですが、メイクをしている人が汗をかいて演じてるのを見て“すごい”と思ったのを覚えています。

本格的に観るようになったのは中学生の頃です。もともと児童合唱団に入っていて、発表会でミニ・ミュージカルを演じたこともあって、“こういうの、好きかも”と思い、バレエを習い始めました。

高校生になると舞台は確固たる夢になっていて、経験はないけど受けてみようかな、と劇団四季研究所の試験を受けることにしました」

――それが研究所に入って2年目に、劇団四季の代表作でもあるストレート・プレイ『オンディーヌ』のタイトル・ロールに大抜擢。2年目にして台詞術が出来上がっていた、ということですね。

「いえいえ、オンディーヌはアンダースタディとして、本役の方がお稽古にいらっしゃれない時とか、もしご病気とかで出られなくなった時のためのキャストとして勉強させていただいてたんです。何もわからなかったし、間や動きで本役の方と違うことをしたら他の方々の迷惑になるだろうと思って、私はとにかく(本役の演技の)コピーをしました。真似するしかなかったんですね。そんな中で、ちょっとずつ覚えていったと思います」

――ものすごい吸収力だったのですね。

「何も知らなかったから、逆にそれが良かったのかもしれないですね。そうして“ストレート・プレイ”でデビューさせていただいてから、ミュージカルにもたくさん出るようになりました。そのころ、世間でも“ミュージカル”というものが注目され始めた時期で、劇団の規模も今ほど大きくなかったので、自分なんかがあんなに(挑戦の)機会をいただけたんだろうなあ、ラッキーだったなあ、と思います。今思うと本当に贅沢なことでしたが、当時はとにかく必死でした」
『スーザンを探して』写真提供:東宝演劇部

『スーザンを探して』写真提供:東宝演劇部

――特に愛着のあるお役は?

「いろいろありますが、(入団数年目で)『ウェストサイド物語』のアニタとマリアの二役をやったんですよ。24歳くらいだったのですが、デビューがオンディーヌだったこともあり、キャラクターとしては自分では勝手に(お役をいただけるなら)マリア役かなと思ってたので、まずアニタと言われて“え? チタ・リベラさんや、日本だと立川真理さん、前田美波里さんたちがやってらしたカッコいい大人な役を?”と驚きました。演出家に“すごくありがたいんですけど、自分がやったら子供っぽ過ぎて、学芸会みたいになってしまう気がします…”とご相談したら、“いくつの役をやると思ってるんだ。マリアは15,16歳で、そのお兄さんの彼女の役なんだから、19歳かもしれないんだぞ”とご指摘いただきまして。

成熟した女性の役というのは私の先入観だったんです。確かに青少年の話なんだと納得し、とにかく挑戦させていただきますと稽古に入ったら、意外と(役に自分が)フィットしちゃったんですよ。今までやってこられた方のアニタとは全く違ったと思うんですけど、“わたしアニタ向きだったんだ”と思ったりして、それはすごい自分の発見でした。
『ドッグファイト』撮影:松島まり乃

『ドッグファイト』撮影:松島まり乃

自分はこうと思ってても、人から見たら違うかもしれない。ジャンプしてみれば、意外とつかみやすかったりすることがあるんだな、ということを教えられて、自分の色は自分で決めない方がいいんだと感じ自分で決めつけるのはやめよう、と思いました。そうしたら男勝りのヒロインですとか、自分でも思ってもないような役をやることが増えたんですよ。もしずっと自分で枠を決めていたら、そういうふうには広がっていかなかったのかなと思います」

――劇団四季時代の保坂さんについては“ロングラン女優”という印象もあります。お一人で一つのお役を連続して何百回も演じられて…超人的でした。

「全然超人じゃないんですけど(笑)、人間そういう環境に置かれれば頑張るものなんだなあと思いますね。でも確かに、もう一度同じことをやれと言われたら無理だなあというのはあります。よくやりましたね(笑)。

『キャッツ』では400回以上連続出演しましたが、当時は一週間の公演回数が今より多かったんですよ。先輩方も2か月以上のロングランはやっていなかったので、ロングランのコンディションの作り方を誰も経験したことがなくて、みんな手探りでした。だんだんwキャストになっていった中で、私の役(グリドルボーン)はたまたまそれが遅かったので、やり続けることになって。毎回、新鮮に演じなくてはいけないいっぽうで持続もしなくてはいけないという大変さは、なかなかできない経験でした」

*次頁では「歌」への思い、そして「演じること」への思いをうかがいました!