「もう何も出ない…」というところまで
アイディアを出し尽くし、創り上げる

『エドウィン・ドルードの謎』

『エドウィン・ドルードの謎』

――その“素の俳優たち”ですが、台本上の彼らはプライベートなネタ?も盛り込まれていて、どの程度“実際のその俳優さん”なのか、どの程度“作者・福田さんの創作”なのかなと思ってしまいます。

「本当にそうですよね(笑)。ご覧になった方は“この人そういう人なんだ”と思うかもしれないし、実はそうじゃないかもしれないし。どこまでが決まっててどこまでそうじゃないかがわからないのが面白いのかもしれませんね」

――福田雄一さんの演出を、保坂さんは『フル・モンティ』で経験済みですが、今回の福田さん演出はいかがですか?

「初めてのことが多かったですね。『フル・モンティ』はしっかりしたストーリーのある作品で、親子のハートフルなエピソードとか男たちの寂しさだったり労働階級の人間の思いだったりが詰め込まれていました。どんなに面白い要素を入れても、根底にあるものがしっかりしていて、なおかつ楽しめる仕上がりだったと思います。

いっぽう今回のテーマは、稽古場でみんなが“おバカ”なぐらいに弾けるということ。福田さんは本当に面白くするということを徹底される方で、“面白くまとめるのは大丈夫ですから任せてください”とおっしゃって、あとはこちらが稽古場で、自分で面白いと思えるものをやり尽くすんです。“もう、なにも出ません”というところまで、みんな出し尽くすんですよね。そして福田さんのアイディアや、みんなで考えた台詞を追加したりしていく。これまでは決まったことをきっちりやるということが多かったので、この作り方は斬新でした。ネタを考えるみたいに、毎日“次は稽古で何やろうかな”と考えていますね。驚くこともいっぱいあるけど、自分がやってこなかったことだったりするし、面白い時間をいただけていると感じています」

――新しい保坂さんを拝見できそう…。

「新しいかどうかはわからないけど、自分と役とがぎりぎりのところでせめぎあっているという点では、新しいかもしれないですね。普通、舞台に実名で出ないじゃないですか。“保坂知寿さんです”と紹介されて、“恥ずかしい、どうしよう…”というのもありますが、保坂知寿を演じるとなったときに、その保坂さんってどういう人なんだろうって。でもそこもあまり考えないようにしています(笑)」

――他のご出演者も面白い役どころになりそうですね。支配人役の山口祐一郎さんは出ずっぱりですし、ジャスパー役の今拓哉さんは濃ゆい役ですし…。

「山口さんはみんなを仕切らなくちゃいけないのでそれだけのエネルギーが必要で、ものすごく大変だと思います。たくさん走っていますし(笑)。今さんも弾けてますよ。壮さん、平野さんはじめ、他の共演者の方たちも皆さんとても魅力的です。この作品はみんなものすごいテンションでやっていますね」

――いろいろなことが起こるわけですが、最後のナンバーでは“これがテーマだったのかな”と思えるような言葉が出てきますね。

「結構唐突なんですよね(笑)。最後はそういうことで終わるんだ、みたいな。強いメッセージを伝えるような作品というより、あくまでお客様たち全員に参加していただいて犯人を決めて、それを楽しんでいただくという舞台なんだろうと思います」

――候補としては“投票して!”というお気持ち満々ですか?

「たまには、してほしいですね。それぞれの投票結果に対して、“なぜそうなったか”という理由が説明されるのですが、その内容がそれぞれ面白いので、いろんなパターンを観ていただきたいですね。一度ご覧いただいて、“違うパターンも観たいな”と思っていただけたら嬉しいです」

*次頁からは保坂さんの「これまで」をうかがいます。いきなりストレート・プレイの主役を演じた衝撃のデビューに始まり、劇団四季で数多くのヒロインを演じた保坂さん。それを可能にしたものとは?