運動と健康

準備運動の意味と運動強度の目安…筋肉痛・ケガ防止に

【アスレティックトレーナーが解説】運動習慣のない人が急に激しい運動をすると、思わぬケガや筋肉痛などの不調を起こすリスクがあります。まずは少しずつ運動に身体を慣らしていくことが大切です。運動前の準備として、ウォームアップが大切な理由と初心者でも簡単にできるコツ、運動強度の設定方法について詳しく解説します。

西村 典子

執筆者:西村 典子

アスレティックトレーナー / 運動と健康ガイド

高まるマラソン大会人気の一方で、運動によるリスクも

マラソンランナー

マラソン大会に参加する人は年々増えている

近年のジョギングブーム、マラソンブームによって、日本全国でマラソン大会が開催されています。一般の人でも気軽に参加できるのが魅力のようですが、東京マラソンのように10倍以上の倍率を潜り抜けないと参加できないものもあるように、人気の大会は、あっという間に定員に達してしまうものも少なくないようです。マラソンブームはこれからも続くと見られ、運動熱や健康志向は今後ますます高まっていくのではないかと思います。しかし運動習慣のない人にとって、急激な運動はあまりオススメできるものではありません。その理由と対策法を、ぜひ知っておいていただきたいと思います。

健康目的が逆効果? 急なスポーツはケガ・不調の原因に

運動は健康維持には有用ですが、急な激しい運動が大きなケガに繋がるリスクを忘れてはいけません。特に、今までさほど運動習慣がなかった人や、「マラソン大会に当選したからトレーニングはしていないけど走ってみよう!」と思ったりする人は、大会を途中で棄権しがちなだけでなく、ケガや体調不良から救護室に駆け込むケースも実際には少なくありません。

しっかりと準備をした上で、当日のコンディションを考えて途中棄権してしまうのはやむを得ません。しかし、明らかな運動不足にも関わらず、体力レベルにあわないような激しい運動やランニングを行うのは避けるべきです。荷重関節(体重のかかる関節)を中心に、下肢全般に痛みを生じることが多くみられます。また、マラソン大会の救護室を訪れる選手の中には、睡眠不足や前日までの体調不良などによるコンディショニング不足により、ウォームアップを行う時間が取れなくて、いきなり走り出してしまったという方もいらっしゃいました。

一般的に運動は身体によいといわれますが、正しく準備を行わないとケガや不調の原因にもなることを、まずは知っておいてください。

ウォームアップは必須! 準備運動の3つの意味・効果

ウォームアップ

運動負荷を段階的に上げていこう

久しぶりに身体を動かすときには、少しずつ運動強度を増やしていくことが重要です。「いきなり」「急に」「激しく」「長時間にわたって」運動を行うとケガのリスクが高まりますので気をつけましょう。

また、準備運動、いわゆるウォームアップが大切ということは何となく理解されている方も多いと思いますが、実際にウォームアップが身体にもたらす影響についておさらいしておきましょう。

  1. 体温を上昇させる
    文字通り準備運動をすることによって、身体の温度が上昇します(Warm-Up)。身体が温まれば、筋肉や腱などの柔軟性が高まり、関節のもつ可動域(関節の動く範囲)もより大きくなります。
  2. メインの運動へと身体を慣らす
    いきなりメインの運動(たとえばマラソンなど)を始めてしまうと、身体が十分温まっていないため、筋肉や腱の動きが硬かったり、関節の動きがぎこちないものになったりします。その状態でさらに運動を続けていると複雑な動きや、とっさの動作に対応できずにケガをしてしまうこと可能性も高くなります。
  3. 身体とともに心も準備する
    ウォームアップそのものが、「これから運動を始めるぞ」という合図になり、やる気をコントロールするホルモンであるアドレナリンが多く分泌されて、運動に対する心理的な準備が整うといわれています。

ウォームアップは激しい運動に移行する準備として、段階的に強度を増やすようにしていくとよいでしょう。最初は軽くウオーキングや早歩きなどから始め、温まった筋肉をストレッチなどでより動きやすくして、そこから少しずつメインの運動強度に近づけるようにすると、運動によるケガを予防することにつながります。ウォームアップについては、「寒い時期だからこそ行いたいウォームアップ」もあわせてご覧下さい。

リスク管理にも大切な自分にあった運動強度の目安を知る方法

ウォームアップ不足でケガをしてしまうことは避けたいですが、より気をつけたいこととして、狭心症や心筋梗塞などの心疾患が挙げられます。激しい運動になればなるほど、運動中の心疾患リスクは高くなる傾向があります。久しぶりに運動を再開するという方は、より軽めの運動から行うようにしましょう。また、持病があったり、治療の一環として運動が処方された場合には、医師の診察を受け、必ず運動強度などを確認した上で運動を行ってください。

特に気をつけたい危険因子としては、運動不足や家族歴、年齢の他に、喫煙、肥満傾向、糖尿病、血液中の脂質異常、メタボリックシンドロームなどの生活習慣に関連するさまざまな要因が挙げられます。こうした項目に該当する場合にはマラソンなどの激しい運動は避け、軽い負荷の運動から始めるようにすると安心です。

関節や筋肉の負担になるスイング動作前にもストレッチを

スイング動作

同じ動作の繰り返しにも注意

多くの人が楽しむテニスやゴルフでは、ランニングに比べて心臓への負担は小さいと言われています。しかし、スイング動作などを何度も繰り返すため、関節や筋肉のある一部分に大きな外力が加わりやすく、特定の関節や筋肉に大きな負担をかけてしまうのです。ケガのリスクを最小限にするためには、使う筋肉を中心に運動の前後でストレッチをしておくことが大切です。

運動を始めたいなと思ったら、はじめは運動負荷を軽めに設定し、少しずつ時間や頻度、運動強度を挙げていくようにしましょう。このような運動設定を心がければ、身体に大きな負担をかけることなく、運動を楽しむことが出来ると思います。心身の準備を整えるためにも、運動前のウォームアップは欠かさず行ってください。

「運動と健康」について、さらに詳しく知りたい方は「どうせやるなら!効果が高まるウオーキングフォーム」「良い成果を出すための運動習慣のつけ方」「マラソン大会に向けて!初心者のためのランニング計画」もあわせてご覧下さい。
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