世界遺産/アジアの世界遺産

エフェソス/トルコ(4ページ目)

地中海に点在する古代ローマ遺跡の中でも随一の美しさを誇る古代都市エフェソス。その周辺には「世界の七不思議」に選出されたアルテミス神殿跡や、パワースポットで知られる聖母マリアの家、使徒ヨハネ最期の地・聖ヨハネ教会など数多くの見所が点在する。今回は2015年に世界遺産登録されたばかりのトルコの世界遺産「エフェソス/エフェス」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

エフェソスの構成資産3. 聖母マリアの家

聖母マリアの家

聖母マリアの家。マリアの命日である8月15日には世界中から多くの巡礼者が訪れている

聖母マリアがエフェソスで暮らしていたという伝説は伝わっていたが、19世紀までその場所は明らかになっていなかった。

聖母マリアの家の黒いマリア像

聖母マリアの家の黒いマリア像。黒い理由はハッキリしないが、アルテミスなどの地母神と一体化したためなどといわれる

19世紀のある日、ドイツで病床にあった修道女アン・カスリーン・エメリッヒの頭の中に、イエスとマリアの生涯の映像が飛び込んでくる。そしてマリアが最後に過ごした場所がエフェソスの近く、エーゲ海に浮かぶサモス島を見下ろす丘の上にあることや、家の形までもを明確に伝えた。

アン没後の1881年、彼女の言葉を頼りに司祭らが古代都市エフェソスの南7kmほどの丘の上を探索していると、それらしい建物を発見。1891年には1世紀のものと思われる遺跡が出土した。

1951年、アンの証言に基づいて聖母マリアの家が再建された。1896年にはローマ教皇(法王)レオ13世が訪問し、1950年にはピウス12世が聖地として公認。1967年にパウロ6世が訪れると巡礼地として広く認知され、世界中から多くの巡礼者を集めるに至る。

 

聖母マリアの家の願いの壁

聖母マリアの家の願いの壁 (C) Jose Luiz Bernardes Ribeiro

実際にマリアやヨハネが暮らしていた証拠が発見されているわけではないが、紀元前1世紀まで遡る遺跡が出土しており、ヘレニズム~ローマ時代の遺跡であることは間違いない。

聖母マリアの家はパワースポットとしても人気を集めており、「聖なる泉」の水は幸福・癒やし・豊穣を与える奇跡の力を持つといわれ、「願いの壁」に望みを託した紙や布を貼り付けるとその願いが叶うといわれている。

 

エフェソスの構成資産4. チュクリチ古墳

チュクリチ古墳

まだまだ謎が多いチュクリチ古墳。2015年には9000年前の装飾品が発見されて話題になった (C) N. Gail (OeAI)

古代都市エフェソスの南東200mほどに横たわる古墳で、21世紀に入ってから発掘が進み、現在も調査が進められている。

5層ほどからなる村落跡で、最古の層は石のプラットフォームと泥壁によって築かれており、紀元前7000年ほどまで遡る宝石類が出土している。この頃から土器や石器を用い、ヒツジやヤギ・ブタなどの家畜を飼育して定住生活を行っていたようだ。

紀元前5000~前2500年ほどの青銅器時代の層からは青銅の刀剣や大理石を用いた装飾品・日干しレンガの住居跡、紀元前2500~前1200年のエーゲ文明の層からは彩色陶器や交易品が発見されるなど、それぞれの層からさまざまな時代の遺物が発掘されている。

まだまだ未発掘部分も多く、新たな発見が期待されている。
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