セクシュアルマイノリティ・同性愛/LGBT

号泣必至の超名作映画『キャロル』(5ページ目)

2月といえばバレンタイン。今月は愛をキーワードにコラムをいろいろお送りします。映画『キャロル』のレビューをはじめ、マドンナのゲイ愛、企業のアライの方たちの愛、ゲイ目線のミュージカル愛などなど。今月もボリュームたっぷりです!

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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ミュージカル愛が止まらない

ゲイはみんなミュージカル好きなどと一般化するつもりはありませんが、ミュージカル好きな友達ってたくさんいますし、座席について周りを見渡すと女性とゲイがほとんど…なんてことも珍しくはありません。映画好き、音楽好きな方ほど多くはないかもしれませんが、この世界では人気なジャンルのひとつです。

ゴトウはもともと大の演劇好きで(母親の影響で子どもの頃からよく観てました)、中学の頃は劇団四季に憧れて一人でバレエの真似事をしてみたり(股割りとかできました)、大学では学生劇団に入り、観劇サークルを立ち上げ、「やっぱり演劇の本場は東京だ!」と奮起して転勤のない東京の会社に就職し、休日はしょっちゅう下北沢に行っていました。ミュージカルもストレートプレイもバレエもダンスも満遍なく好きで、今でもお金と時間に余裕があれば、毎週行きたいくらいです。

演劇とかミュージカルの魅力は、やはり役者さんを直に感じられること。息遣いや汗、匂いまでも伝わってくるような臨場感です。それでいて、物語やドラマの世界に浸れるので、日常を忘れ、別世界へと誘われる、そんなエクスタシーが味わえます。時には舞台の世界に没入しすぎて過剰に興奮してしまったり、役者さんが素晴らしすぎて恋してしまったり…。

そんなゴトウが鼻息を荒くして「今年はスゴイ!」と断言します。ゲイにとって2016年はミュージカルの当たり年です。時系列は無視して、観るべき作品を独断と偏見でご紹介いたします。あわせてゲイ関連の舞台の情報もお送りします。

『プリシラ』

『プリシラ』

 

映画『プリシラ』が特別な思い入れのある作品になっている40代以上の方は少なくないに違いありません。最高にゴージャスなドラァグクィーンの衣装(第67回米アカデミー賞の衣裳デザイン賞を受賞)やショーの数々(エリマキトカゲとか、ゴム草履とか)。バスの上に巨大なシルバーのハイヒールを載せて風にたなびかせたり、エアーズロックをヒールで登ったり。そしてなにより、サントラが素晴らしかった。アガる曲しか入ってない、本当に素敵な名曲揃いでした。

そんな『プリシラ』のミュージカル版が、ついに日本でも上演されます! 2016年12月、日生劇場で。演出はあの宮本亜門さん(これ以上の方がいるでしょうか)。ブロードウェイではすでに10年前から上演されていたのですが、ようやく日本でも観ることができます。この日をどんなに待ち望んだことか…。亜門さんは「リオのカーニバルとオリンピック開会式をシェイクしてカクテルにしたような、ゴージャスでド派手なショーです!」「ドラァグクィーンたちが目指す先は、誰もが幸せになれる華麗なるステージ! 16年の冬は、名曲の数々にノって、キッチュなコスチュームで身を包む『砂漠の花』たちとエンジョイしてください!」とコメントしています。

気になる役者さんは『下町ロケット』で印象的な活躍を見せた山崎育三郎さん。「笑いあり涙ありの脚本、名曲ぞろいの歌、派手なダンスシーン、そして、ロンドン版と同じ奇抜でオリジナリティあふれる色鮮やかな衣裳とヘアメイク、これぞエンタテインメント!」「亜門さんは太陽のように明るくて、常に前向きなエネルギーにあふれ、周りを幸せな気持ちにされる方。そんな亜門さんと、こんなハッピーな作品『プリシラ』を一緒に作れることを本当に嬉しく思います」とコメントしています。

まだ詳しい情報は届いていないのですが、チケット発売が決定したら、また続報をお伝えしたいと思います。

『キンキーブーツ』

『キンキーブーツ』

ブロードウェイ版『キンキーブーツ』の1シーン。

こちらも元は映画(2005年、イギリス)です。経営不振となった靴工場を救うべく、跡取り息子がドラァグクィーンの協力を得てド派手なブーツを作ろうと奮闘し、最初は気乗りしなかった工場の人たちも次第に協力するようになり…というストーリー。2013年にミュージカル化され(脚本は『トーチソング・トリロジー』のハーヴェイ・ファイアスタインで、シンディ・ローパーが楽曲を提供しています)、トニー賞最多となる13部門にノミネートされ、作品賞、オリジナル楽曲賞(シンディ・ローパー)など6部門を受賞しました(ちなみにプロデューサーの川名康浩さんは日本人として初めてトニー賞を受賞。詳しくはこちら

おそらくですが、映画版よりもこのミュージカル版のほうが出来がよく(なんたってトニー賞に輝いてますから)、とても期待しています。

ドラァグクイーン・ローラ役に三浦春馬さん、跡取り息子のチャーリー役に小池徹平さん、ヒロインのローレン役にソニンさん、その他、玉置成実さん、勝矢さんらを迎えた素晴らしいキャスティングとなっています。また、日本版演出協力・上演台本に岸谷五朗さんが参加することも発表されています。プロデューサーの川名康浩さんは「本作が世界に向けて伝えてきたのは、"You change the world when you change your mind! (あなたの心を変えた時、あなたは世界を変えられる)"。小池徹平さん、三浦春馬さんには、日本のチャーリー、ローラとして、この大切なメッセージを日本の皆さんの心にしっかりと届けてくれるよう期待しています』

「キンキー」とは「ヘンタイ」という意味ですが、ドラァグクィーンという女装のゲイを田舎の人たちが次第に受け入れていく様は『パレードへようこそ!』的でもあり、そういう人たちがド派手なブーツを作るようになるなんて、本当に素敵!と感激すること請け合いな観劇体験になることでしょう。オススメです!

キンキーブーツ
東京公演
日程:2016年7月21日(木)~8月6日(土)
会場:新国立劇場 中劇場
大阪公演
日程:8月13日(土)~8月22日(月)
会場:オリックス劇場
料金:S席13,500円、A席12,000円(全席指定・税込)
チケット発売は4/9から

『ラディアント・ベイビー~キース・ヘリングの生涯~』

『ラディアント・ベイビー』

本家『Radiant Baby』の1シーン。

伝説的なアーティストであり、オープンリー・ゲイであり、1990年にエイズで亡くなったキース・ヘリングの生涯を描いたミュージカル『ラディアント・ベイビー ~キース・ヘリングの生涯~』が、2016年6月にシアタークリエ(これまでにも『RENT』をはじめ、ゲイテイストな作品をたくさん手がけてきました)で上演されます。

キース・ヘリングは、ストリートアートの先駆者とも呼べる存在で、1980年代アメリカ美術を代表するアーティストです。80年代初頭にニューヨークの地下鉄で、黒い紙が貼られた使用されていない広告板を使った通称「サブウェイドローイング」というグラフィティ・アートを始めました。そのコミカルで誰もが楽しめる落書きは、地下鉄の通勤客の間で評判となり、一躍キースの名を広めることになりました。

1980~86年には、次々とキース・ヘリングの展覧会が開催され、国際的にも高く評価されました。ニューヨークのタイムズ・スクエアのビルボードのアニメーションから、舞台デザイン、キースのグッズを販売するポップ・ショップもオープンするなど、制作活動は多岐に及びます。また、ニューヨークだけでなく、シドニーやメルボルン、リオデジャネイロ、アムステルダム、パリなど世界中で壁画を制作したり、ワークショップなども開催し、HIV予防啓発や恵まれない子どもたちへのチャリティなど社会的なプロジェクトも数多く手がけました。Act Against AIDS(AAA)の最初のポスターを描いたのもキースです。

1988年にはHIV陽性と診断され、その翌年に財団を設立しました。1990年に31歳の若さで亡くなるまで、キースはアート活動を通してHIV/エイズ予防啓発運動に最後まで積極的に関わりました。

NY・オフブロードウェイで2003年に初演されたミュージカル『Radiant Baby』は、世界中で今もなお愛され続けるキース・へリングが自分の信じる世界を描き、駆け抜けた生涯を、心揺さぶるロック&ポップミュージックで描く作品です。その日本版が上演されることになったのは素晴らしいことです。

日本初演となる今回の公演でキースを演じるのは、舞台『デスノート The Musical』の夜神月役や『ライオンキング』のシンバ役などを演じた柿澤勇人さん。ほかにも平間壮一さん、松下洸平さんらも出演します。演出は岸谷五朗さんです。

岸谷五朗さんは「1993年より23年間継続しております、HIVと闘う子どもたちへの支援「Act Against AIDS」の最初の出発点は、キースが描いてくれた絵が我々のシンボルとなり始まりました。我々に多大な勇気をくれたのがキースの心とその絵でした。そんな彼の生涯をエンターテイメントミュージカルとして演出できる事に、大きな運命的な繋がりを感じています。彼への恩返しと共に観客へ素晴らしい作品が届けられるように、スタッフ・キャスト一同頑張っていきたいと思っています」とコメントしています。

ラディアント・ベイビー~キース・ヘリングの生涯~
日程:2016年6月6日(月)~6月22日(水)
会場:日比谷 シアタークリエ
料金:S席10,800円、A席8,800円(全席指定・税込)
チケット発売は4/2から

燐光群『カムアウト』

『カムアウト』

 

27年前、まだ日本じゅうが「カミングアウト」という言葉を知らなかった頃、燐光群によって「女を愛する女たちの演劇」が生まれていました。『カムアウト』は、共同生活を送るレズビアンたちの小さなコミュニティを舞台に、時には社会や家族との関わりの中で様々な壁に直面し抑圧を受けながらも、自身の性や生き方と向き合い、またお互いの違いを認め受け入れ合いながら、しなやかにたくましく生きる彼女たちの姿を描いた作品です。

渋谷区や世田谷区による同性パートナーシップ証明が始まった昨今、多くのメディアでLGBTという言葉を目にする機会が増えました。ジェンダーやセクシャリティに関する話題は多くの人々の関心を集め、急速な広がりを見せ、理解も深まりつつあるように感じられます。しかしその一方で、当事者以外にとっては身近な問題としてイメージしにくく、無意識の偏見も多くあり、差別的意識が根強く存在することも否定できません。この問題が、「人間とは何か」というより普遍的なテーマを内包しているからです。

1989年に『カムアウト』で描かれた彼女たちが生きた世界は、いまの私たちの目にどのように映るのでしょうか。27年前に描かれた彼女たちのコミュニティを、2016年に生きる人たちが再構築し、いまだからこそ描ける“現代のカムアウト”が描かれます。

3月24日(木)19:00の部のアフタートークは、ゲストとして遠藤まめたさん(「やっぱ愛ダホ!idaho-net.」呼びかけ人代表)が、3月26日(土)19:00の部は上川あやさん(トランスジェンダーの世田谷区議会議員)が出演します。ぜひそちらの回に足をお運びください。

燐光群『カムアウト』
日程:3月19日(土)~31日(木)
会場:ザ・スズナリ
料金:2,000円~4,200円(前売:一般3,800円)

劇団フライングステージ第41回公演「新・こころ」

『新・こころ』

 

劇団フライングステージが「新・こころ」を再演します。たぶん中高生の頃に読んだ方も多いだろう夏目漱石の「こころ」を、明治の男たちの恋と友情の物語として読み直し、明治と現代を行き来しながら展開される、オール男性キャストでおくるキャンプな「こころ」です。

座長の関根信一さんは、「森鴎外の自伝的小説「ヰタ・セクスアリス」(明治42年)では、旧制高校の寄宿舎における「男色」の流行が当たり前のことのように描かれています。男色と同性愛が別のものであることは承知の上で言わせてもらえば、時代に許容されていた男同士の恋愛が、大正になった途端、エロ、グロ、変態性欲ということになってしまう。この世の中の大きな変化、そのまさに転換点に、漱石の「こころ」があり「先生」がいるんじゃないだろうか。そう思ったときから、漱石の人物たちは違った顔を僕に見せ始めました」と書いています。

2008年にご覧になった方も、きっとまた違った感想を抱くでしょうし、初見の方なら新鮮な演劇体験ができるはず。会場は「gaku-GAY-kai」が行われている新宿3丁目「雑遊」の上に新たにオープンする多目的スペース「梟門(きょうもん)」です。最大70名収容の小さめなハコで、売り切れ必至!なので、チケットのお求めはお早めにどうぞ。

SPACE 梟門 オープニング企画
劇団フライングステージ第41回公演「新・こころ」

日程:2016年3月30日(水)~4月3日(日)
会場:SPACE 梟門(新宿区新宿3-8-8 新宿O・Tビル2F 都営地下鉄新宿線新宿三丁目駅C5出口目の前)
料金:前売(予約 全指定席)3,500円、ペアチケット6,500円、トリプルチケット9,000円、学生2,500円(入場時受付で要学生証提示)、当日券3,800円、当日学生券3,000円(入場時受付で要学生証提示)

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