無理に明るく、忙しく生活していませんか?

打ちひしがれる男性

「心のよりどころ」を失った苦しみを無理に忘れようとしていませんか?

人は誰しも、なんらかの「心のよりどころ」を頼りにして、生きているものです。たとえば、生きがいとなる仕事や夢、愛するパートナーや家族、ペット、愛着のある住まいやコミュニティ、そして自分自身の若さや健康な体――。

しかし、長い人生の過程では、こうした「心のよりどころ」となる対象を失う日も訪れます。そのことを「対象喪失」と呼びます。対象喪失は、事故や災害、ライフイベントの変化などをきっかけに突然生じることもありますが、少しずつ対象との関係が風化していき、ふと、喪失していることに気づくこともあります。

対象喪失は、心にとても深い悲しみをもたらします。その悲しみを振り払おうとして、無理に明るく振る舞う人もいますが、気がつけばもとの悲しみに戻ってしまうものです。また、無理に忙しくて忘れようとする人もいますが、一人になった瞬間などに、もとの苦しみに襲われてしまうものです。

では、私たちは、どのように対象喪失の悲しみを乗り越えていったらいいのでしょう?

「喪の作業」の4つの段階とは?

対象喪失の悲しみを乗り越える方法に、「喪の作業」があります。「喪の作業」とは、対象喪失の悲しみから脱するまでの“心のリハビリ過程”を意味します。精神分析の創始者であるS.フロイトが提唱し、その理論をさまざまな学者が発展させましたが、有名なものにJ.ボウルビーが紹介した4つの段階があります。

その理論によると、対象喪失に直面した人は、まずそのショックから「情緒的危機」を経験します。強烈な衝撃と混乱を経験し、不安や心細さに襲われ、情緒が非常に不安定になります。

次の段階では、対象喪失の現実に憤り、さまざまな「抗議」を試みます。たとえば、去って行った人との関係を修復しようと躍起になったり、原状回復のために奮闘したりするのがこの段階です。

対象喪失が決定的なものであることを感じると、次に「絶望と抑うつ」を経験します。「もう何をやっても無駄だ」と絶望し、自宅に引きこもり、人との交流を避けるようになるのもこの時期です。

これらの3つの時期を過ぎると、ようやく「離脱」の段階が訪れます。対象喪失を受け入れることができ、対象への執着から卒業して、新しい生活の構築に向けて歩き始めるのです。

対象喪失の悲しみは、いつか必ず癒える

このように、J.ボウルビーの「喪の作業」では、4つの段階を経験して対象喪失の悲しみを乗り越えていくと考えられています。その期間は、失った対象によっても異なりますし、個人差もあるため、一様ではありません。

あなた自身、そして周りの人たちが「心のよりどころ」を失い、ショックや悲しみに襲われたときには、ぜひこの「喪の作業」を思い出してみてください。

無理に明るく振る舞ったり、無理やり忙しくして、対象喪失の悲しみを回避しようとしても、その悲しみが消えてくれることはありません。やりきれない気持ちや怒り、憂うつ感といった自然な感情が表出するプロセスも十分に味わい、それぞれの感情を大切にすることが、傷ついた心の回復には必要なのです。

時薬」(ときぐすり)という言葉があるように、対象喪失の悲しみもいつかは癒え、新しい生活に気持ちを向けられる日が必ずやってきます。だからこそ、「喪の作業」における自然な心の反応を大事にし、自分の気持ちと折り合いをつけられる日が来ることを信じて、待ってみませんか?

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