Kバレエ カンパニー3月公演『ドン・キホーテ』で主演のキトリを踊る祥子さん。役作りはどのようにされていますか?
祥子>Kバレエ カンパニーで初めて『ドン・キホーテ』を踊ったのは2007年。二度目は2012年で、今回で三回目になります。熊川版は振付けはもちろん、セットや衣裳、役柄が上手く作品世界に溶け込んでいるのですごく見応えがありますし、ストーリーを追いながら観てもらえる部分が一番の魅力ですよね。(C) TOKIKO FURUTA
『ドン・キホーテ』に初めて出演したのは2007年のキトリ役で、これまで全幕ではKバレエ カンパニー以外で踊ったことがありません。子どもの頃にヴァリエーションの練習をしたことがあるので雰囲気は何となくわかっていましたが、全幕通して踊るとなるとまた違いましたね。昔はキトリというとひたすらエネルギッシュなイメージがあったけど、最近は考え方も変わってきました。もっとお茶目なところを見せたり、ちょっと弱々しいところ、しっとり感を出した方が、ギャップの面白さが生まれる気がして。キトリにはこういう部分もあるんだ、こういうキトリもあるんだというものがお客さまに伝われば、また新たな楽しみが感じられると思う。
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だからこそ、最初から型にはめていきたくはない。誰がやっても同じでは面白くないですよね。熊川版『ドン・キホーテ』ではあるけれど、私のキトリを観てもらいたい。まずは自分なりの表現を見つけていって、最終的に熊川さんから“この振付はこうだからもっとこうして欲しい”と言われれば、それに従う形です。
以前はいろいろなダンサーのDVDを見ては、こういう表現があるんだと発見したものを自分の踊りに取り入れてました。けれど、今はリハーサルをしながら見つけるようにしています。今日はこんな感じで踊ってみようとか、いろいろ挑戦しながらつくり上げていく。そのためには、自分で意識していかなければだめ。毎回同じようなリハーサルをしてただテクニックを磨くのではなく、意識を変えればその日その日でまた何か違ってくるはず。私ならこうみせたいと考えるようになってから、本当に自分の役を楽しめるようになりました。
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昔はいくらリハーサルをしても、なかなかこれといったものが掴めずに、あせりを感じるようなこともありました。でもやっぱりそれは経験が解決してくれた。テクニック的にも余裕ができたのか、だんだん面白くなってきましたね。今までの経験上、決して諦めないことがどれだけ大切かわかっているので、本番直前でもとにかく挑戦してみる。掴めたのが本番のステージの上だったこともあります。後ろに戻らず、掴めないままでもやってみる。これでは終わりたくないという気持ちがあるし、きっと何かあるって信じているんです。
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今回は遅沢佑介さんとペアを組みます。パートナーとしての遅沢さんの印象はいかがですか?
祥子>すごく安心感があります。これまで何度か一緒に踊ってきたというのもあるけれど、私が“ここはこうありたい”というものをすぐ察知してくれる。崩れようがどうしようが、きちんと的確な場所に持っていってくれる。何より、女性をきれいに見せる方法がわかってる。だからこちらも思うように踊ることができるし、本当に素晴らしいですね。(C) TOKIKO FURUTA
自分がどうしたいかを言葉で伝えることもあります。あまり言葉にしないダンサーもいるけれど、私はものすごく言いますね。以前とあるインタビューの席で、遅沢くんに“祥子さんはうるさい”って言われちゃいました(笑)。でも遠慮してたらどこか縮こまってしまって、のびのび踊れないと思う。だから、お互い100%の力を出せるところまで私は言います。ただ自分の意見を押しつける訳ではなくて、“私はこうしたいけど、どう思う?”と聞く。例えば“もっと重心を前に欲しい”とか、“ここはもうちょっと近寄って欲しい”とか。本当に細かなことだけど、それによって動きが変わってきてしまうし、お客さまの受ける印象も違ってくると思うから。
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遅沢さん自身はあまり言うタイプではないけれど、私が相手のときはあえて言ってもらいます(笑)。“どう? これでいい? 大丈夫かな?”と答えを求める。そうすることで、彼自身も知らなかった部分が見出せるかもしれない。バレエって、これでいいと思ったら成長はない。相手が誰であってもそうで、引き出し合うようなパートナーでありたいし、刺激しなければレベルは上がっていかないと思います。