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Kバレエ カンパニー 中村祥子インタビュー!(3ページ目)

昨年末より日本に拠点を移し、Kバレエ カンパニーのゲストプリンシパルとして新たなスタートを切った中村祥子さん。2016年春公演『ドン・キホーテ』に出演し、主演のキトリを踊ります。ここでは、リハーサル中の祥子さんにインタビュー! 作品への想い、日本での新生活と今後の展望についてお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

バレエガイド


バレエ一筋だった少女が今や一児のママとなり、舞台の傍ら育児もこなす。その変化とバイタリティに驚かされます。

祥子>私も最初はどうなるかと思っていたけれど、意外と乗り越えられたというか、経験を積む内に自分のリズムを見つけていった感じです。家ではいろいろやることが多すぎて、トゥシューズも縫えないから、スタジオにいる間に100%やり切ってしまう必要がある。帰宅すると時間が経つのなんて本当にあっという間ですよね。子どものご飯をつくって、お風呂に入れて、遊んで、歯を磨いて、寝かせて。本番前だろうが何だろうが子どもにとっては関係ない。“ママ明日本番だから早く寝てね”というのはムリだし、それに慣れるしか方法はない。

だけど、自分でもよくやれるなって思います(笑)。子どもだからよく熱を出したりもするけれど、それが必ずといっていいほど本番前なんです。本番の前日熱が出て、夜中ずっと抱っこして、翌日パパと交代してレッスンに行き、本番を終え、熱が下がらないからと舞台用の頭のまま救急病院に連れて行って、夜中の三時、四時に帰ってくる、なんてこともありました。結局バレエダンサーだからって関係ないんですよね。ダンサーだから子どもが産めないとか、育児ができないとか、そういうことはないんだなって感じます。

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(C) TOKIKO FURUTA


多忙な日々を乗り越えるために、やはり食生活には気を遣っているのでしょうか? 抜群のスタイルを維持する秘訣は?

祥子>みなさんによく“ささみしか食べてないんじゃない?”って言われるんですけど、そんなことは全くなくて。昔はダイエットをしていた時期もありましたけど、もともと食べることがすごく好きで、今は食べたいものを食べてます。ただ朝はレッスンがあるからあまり食べられなくて、コーヒーとヨーグルトやバナナ、ミューズリーといったものを軽く摂るくらい。レッスンの後にリハーサルが続くとお昼は食べられないので、きちんとした食事は夕飯だけ。その分夜はディナーからデザートまでしっかり食べます。どこかで見つけてきたおいしいスイーツをデザートにしたり、クレープをつくって息子と巻いて食べたり、フルーツのときもあるし。それもひとつの楽しみです。

家では和食やイタリアン、ポーランド料理だったり、いろいろですね。息子はカレーライスが好きって言ってます。好き嫌いがあるから、ブロッコリーやほうれんそうなどいろいろな野菜を細かくしてチャーハンにして食べさせたりと、栄養もちゃんと考えて料理してるつもり。つくったものを全部食べてくれるとすごく嬉しいですね。

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(C) TOKIKO FURUTA


日本のバレエ界に現在足りないものは何だと思いますか?

祥子>ダンサーの環境としては、やっぱりもっと舞台が沢山踏めたらいいですよね。あと何より、いろいろな作品を踊れたらなと思います。海外には有名な方から若い方までいろいろな振付家がいて、クラシックからコンテンポラリーまでさまざまな作品を踊るチャンスがある。日本はそういう方たちとの出会いが少ないから、ダンサーの動きも広がりがなかったり、お客さまもクラシック一辺倒になってしまいがち。もっといろいろな作品が上演できる環境になれば、バレエにはこういう作品もあって、こういう表現もあるんだと知ってもらえるし、もっとお客さまに足を運んでもらえる気がします。

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(C) TOKIKO FURUTA


海外と比べて、日本のお客さまは熱心ですよね。“この舞台のために来ました!”という想いが伝わってきます。海外はチケットも手軽に買えるし、日々何かやってるから、“今日はこれを観てからディナーに行こう”という感じで気軽に足を運ぶことができる。

日本にもっとバレエを浸透させたいという気持ちがあって、だからこそ私たち日本人ダンサーがより表現を深めなければいけないと思う。チュチュを着てキレイに踊るだけがバレエとなると、お客さまもチケットを買って観に行こうとは思ってもらえない気がします。そういう意味ではKバレエ カンパニーは素晴らしいですよね。熊川さんの振付やセットも普通とは違うスペシャルなものがあるから、お客さまを引き込ませるし、観たいと言ってもらえるんだと思う。もちろん振付やセットだけではなく、もっとダンサーも表現していく必要がある。深い表現があるからこそ引き込まれて、観ている方もいろいろな気持ちが沸いてくる。舞台作品の魅力にダンサーの表現がプラスされることで、はじめていいものができると思うんです。

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(C) TOKIKO FURUTA


今後の展望をお聞かせください。

祥子>まずは、日本のお客さまにこれまでとはまた違った役や表現を観てもらいたい。こういうバレエもあるんだということを伝えたいし、お観せしたい。物語性があるものでもいいし、コンテンポラリーでもいい。何かお客さまの心を掴めるような作品を踊って、新しいものを伝えていきたいです。

この先教える方にエネルギーを注ぐ時期が来れば、これまでの経験を伝えていきたいとも思っています。ただ今は、自分の踊りや作品を伝えたいという想いが一番であり、いい作品をつくるために日々レッスンに全力を尽くす。もちろん人間なので、ときには気分が乗らない日もあります。だけどやっぱりバレエがないと自分ではなくなってしまう。バレエがあるからこそ楽しいし、毎日頑張っていられるような気がします。

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(C) TOKIKO FURUTA





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