株取引の確定申告でも節税ができる!
令和元年分の確定申告の期間は令和2年2月17日(月)から3月16日(月)。令和元年(2019年)に株式や投資信託の取引をした人、株式の配当金や投資信託の分配金を受け取ったという人は、1年間の取引の決算をするという意味も含めて、確定申告の準備をしましょう。<目次>
- 株取引の確定申告でも節税ができる!
- 株の売却益や配当金にかかる税金は、いくら?
- 証券口座の種類によっては確定申告不要な人も
- 源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収選択口座)でも確定申告すべき場合
- 複数の証券口座を持っているときは、どうする?
- 損をしたときこそ繰越控除の確定申告を忘れずに!
株の売却益や配当金にかかる税金は、いくら?
まず、投資商品の税率や課税方法を確認します。株式や投資信託の売却益は、給与所得とは分けて課税される申告分離課税。次項で詳しく説明しますが、証券口座の種類によって納税が完了している場合と、確定申告で納税をする必要がある場合に分かれます。
配当金などの利子所得も、基本的には申告分離課税です。しかし、これは支払い時に源泉徴収されているため、受け取り時点で納税は完了しています。
税率は、いずれも20.315%(所得税15.315%、住民税5%)。所得税の本則は15%ですが、令和19年(2037年)までは復興特別所得税分として0.315%が加算されています。
証券口座の種類によっては確定申告不要な人も
証券口座には4種類あり、それぞれ証券会社の管理方法が異なります。まずは、それぞれの口座について簡単に説明しましょう。●特定口座(源泉徴収あり)
源泉徴収選択口座ともいいます。証券会社が1年間の取引を集計して「年間取引報告書」を交付、利益が出ている場合は納税まで代わって行ってくれます。ですから、基本的に確定申告は必要ありません。
●特定口座(源泉徴収なし)
簡易申告口座ともいいます。交付された年間取引報告書をもとに、利益が出ている場合は確定申告をして納税する必要があります。
●一般口座
取引明細をもとに自分で1年間の損益を計算し、利益が出た場合は確定申告をして納税します。ただし、年収が2000万円以下の会社員(1カ所から給与所得を受け取っている)で、証券取引以外の雑所得がなく、利益が20万円以下の場合は、確定申告、納税ともに不要です。
このとき注意したいのは、「20万円」は売却額ではなく、売却益だということ。売却益=売却価額-(購入価額+購入手数料+売却手数料)ですから、投資額が少額なら、利益があっても確定申告が不要な場合もあります。
●NISA口座
NISA(少額投資非課税制度)の口座は、投資元本120万円(2014~2015年は100万円)までの利益が非課税です。どんなに利益が出ても確定申告は不要です。
源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収選択口座)でも確定申告すべき場合
先に記したとおり、源泉徴収ありの特定口座の場合、基本的に確定申告は必要ありません。ですが、確定申告をする権利は失っておらず、以下の場合は「源泉徴収あり」でも確定申告をすると税金が戻ってくることがあります。(1)利益が所得控除(基礎控除や扶養控除)の範囲内に留まる ※ほかにパートなどの収入のない専業主婦のような人、ただし扶養から外れないように注意が必要
下で説明しますが、以下のケースでも確定申告をすると来年以降にメリットがあります。
(2)複数の証券口座を保有していて、その合計額が損失=マイナスだった場合
(3)令和元年は取引をしなかったが、平成30年に譲渡損失の繰越控除の申告をしている場合
複数の証券口座を持っているときは、どうする?
証券会社とネット証券、証券会社と銀行など複数の金融機関に証券口座を持っている人もいるでしょう。この場合も、基本的な考え方は同じです。まず、それぞれの口座ごとに損益を計算します。「特定口座(源泉あり)」だけの場合は、どんなに利益があっても確定申告の必要はありません。それに対して「一般口座」のみの場合は、前述した通り20万円超の利益が出ていたら確定申告をする必要があります。
少し複雑になるのが、種類が違う口座を持っている場合です。まず、すべての口座の損益を通算し、利益が出ている場合は確定申告が必要です。
「特定口座(源泉あり)」の損失よりも「特定口座(源泉なし)」または「一般口座」の利益が多い場合は、必ず確定申告をして納税しましょう。「特定口座(源泉あり)」では儲け「特定口座(源泉なし)」または「一般口座」で損失を出した場合は、確定申告すれば源泉徴収された税金が還付されます。「特定口座(源泉あり)」の損失が「特定口座(源泉なし)」または「一般口座」の儲けより多い場合は確定申告の義務や税金の還付はありませんが、損失の申告をすることで翌年以降の税金を軽減することができます。
損をしたときこそ繰越控除の確定申告を忘れずに!
前項で「特定口座(源泉あり)」の利益よりも「特定口座(源泉なし)」または「一般口座」の損失の方が多い場合は税金が還付されると説明しましたが、口座をひとつしか持っていなくてもこれと同じことができる制度があります。それが繰越控除です。1年間の株式などの取引で損失が出た場合、確定申告をしておくと、その後3年間にわたって損失を繰り越すことができます。その間に得た上場株式などの利益と相殺、つまり損益通算することができるのです(詳しくは下図を参照)。
簡単にいうと、譲渡益や配当金などから申告してある損失分を引くことができるため、支払う税金が少なくて済むわけです。
株式の譲渡益や配当金などの税率は20.315%(復興特別所得税を含む)ですから、5万円の利益があったら約1万円は税金。投資をしていれば、損をする年もあるでしょう。そんな損失を少しでも軽減するためには、必ず確定申告をして損失を繰り越しておきましょう。
注意したいのは、この制度を3年間利用するためには毎年、確定申告をして損失を繰り越す手続きをする必要があること。取引をしなかったり納税するほど利益がなかった年も忘れずに確定申告をしましょう。
利益は正しく申告して納税、損失は繰り越して将来の利益を圧縮。個人投資家にとっての確定申告は、この作業をすることで1年の投資状況を振り返ることにもつながります。国税庁のホームページには申告書作成フォームがあり、初めての人でも画面に従って入力していけば簡単に作成できます。
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