社会性と娯楽性の理想的なバランスを実現した
「ささやかにしてエネルギッシュな命たち」の物語

地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

アイリッシュ・ミュージックが流れる、開演前の客席。軽快なアコーディオンの音色に場内が和んでいると、場内は暗転、コオロギや鈴虫と思しき鳴き声にいざなわれるように、四方八方から虫役の俳優たちが集まって来ます。大原櫻子さんの力強いロック・ナンバーに乗って、傾斜舞台を縦横無尽に駆け抜け、踊る「虫」たち。一人ひとり異なるカラフルな衣裳は翅の部分が歌舞伎の仁王襷をアレンジしたものだったりと、和洋折衷で驚きに満ちています。目にも耳にも刺激的なこのオープニング、誰もが引き込まれずにはいられないでしょう。
地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

それぞれの種族の代表が集まり、「ベスト・オブ・ベスト」が選ばれるというこの夜。順に現れるメインキャラクターは、平間壮一さん演じるダンスが得意なブン太、大原さん演じる天真爛漫な天娘(てんこ)ら、地(?)を発展させた造形で、岸谷さんによる「アテ書き」が最大限の効果を発揮。どんなメスも魅了する圧倒的二枚目ながら、クールになりきれないスィンクルマン(城田優さん)、なにかというと酒瓶を取り出す謎の「おじさん」(寺脇康文さん)、やる気がなさそうに見えて、突然恋に燃えるシザーQ(岸谷さん)らのコミカルな芝居も多々盛り込まれ、前半は笑いと興奮に包まれながら疾走します。しかしいつしか、彼らの世界は不気味な影に覆われ、空気は一変。気が付けば暴力と恐怖が支配する中、彼らは「これは生きるための試練なのだ」と立ち上がります。
地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

虫たちのささやかな世界で起こるドラマを、ダンスや歌、そして立ち回りを駆使してダイナミックに、テンポよく描きつつ、世界情勢など今日的なテーマも織り込んだ舞台。岸谷さん、そしておそらく盟友・寺脇さんの思いを反映しているのであろうこれらの要素は観る者の腹にずしりと重いものを残しますが、その重さに偏ることなく、試練を乗り越え、「宿命」を自覚しながら生きる虫たちの「清々しさ」へと集約されてゆくのが、エンタテインメントの王道をゆく「地球ゴージャス」らしさと言えます。満天の星空を眺める「おじさん」と、思いのたけを叫んで歩むスィンクルマン。この上なく美しい構図の中で放たれるスィンクルマンのラストの台詞は、生きとし生けるものすべてに向けた、作品全体、そして地球ゴージャスからのメッセージとして、まっすぐに響いてきます。
地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

硬軟自在に物語を引っ張る城田さん、強さと美しさを兼ね備え、歌や踊りでも大活躍の蘭寿さん、初舞台とは思えない溌剌とした演技と、高音まで地声で引っ張る喉の強さで今後もミュージカルでの活躍が期待される大原さん、臆病気質を克服する過程をしっかりと見せる平間さん、様々な経験を積んできた流浪の虫を凛とした歌声で好演するマルシアさん、柔らかな演技の中にペーソスを漂わせる寺脇さん、岸谷さんら、それぞれに魅力的なキャストを得て、舞台はこれまでの地球ゴージャス作品の中でもとりわけ社会性と娯楽性がほど良くブレンドされ、結果的にメッセージの伝わりやすい作品に仕上がっています。本作を観た帰りには、思わず草むらでしゃがみ込み、そこに蠢く虫たちにじっと見入ってしまうか。はたまた、「おじさん」と同じお酒が飲みたくなるか…。いえいえ、やはり何より「明日を生きるパワー」が漲り、足取りが軽く感じられることでしょう。
地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』

地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』







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