ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

Star Talk Vol.32 城田優、「前例」は自分が作る(5ページ目)

岸谷五朗さんと寺脇康文さんが主宰し、95年から多彩なオリジナル演目を発表してきた「地球ゴージャス」。その第14弾公演『The Love Bugs』で新たな役どころに挑戦中なのが城田優さんです。黄泉の国の帝王から音楽の天使まで、これまでも演じる諸役を輪郭鮮やかに演じてきた彼ですが、今回はどんな魅力を発揮してくれるでしょうか?*観劇レポートを掲載しました!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

常に「昨日より今日」「今日より明日」の精神で成長し続けたい

『4 Stars』写真提供:梅田芸術劇場

『4 Stars』写真提供:梅田芸術劇場

――そんな城田さんにとって、ミュージカルとの出会いは必然だったと思われますか?

「生まれて今日までのすべてのことが必然なんじゃないかと思ってますが、正直なことを言いますと僕はミュージカルスターになりたいという夢もなかったし、自分はミュージカルスターだとも思っていません。けれどもエンタテインメントの世界で一番難しくて一番達成感のある仕事ができてることを非常に誇りに思いますし、最近は「日本を代表するミュージカルスター」とお世辞で書いていただけるレベルになっていることは嬉しく思ってます」

――お世辞ではないと思いますよ!13年にレア・サロンガ、ラミン・カリムルー、シエラ・ボーゲスと共演したコンサート『4Stars』で、ブロードウェイを代表するあの3人と並んで全く遜色がなかったことにびっくりしました。

「遜色があったらその時点で、僕としては引退すべきだと思います。(彼らと)同じくらいのレベルにしないとお客様に失礼ですよね。自分が納得できません。僕は常にうまくなること、1ミリでも成長することしか舞台に立つときには考えてなくて、この仕事をやるうえで「こんなものでいいだろう」ということは絶対ダメだと思っています。今日より明日、明日より明後日、確実にうまくなっていかないと。一か月前にやった時の記録映像を見て「くそ下手だな」と思わないといけない。で、今日、鏡の中で踊ってる自分を見て(1か月前より)「うまくなったな」と思ったとしても、1か月後にはそれが「下手」に見えるようになってないといけない、と思うんです。

『4 Stars』の時にも稽古初めから本番までの間にはおかげさまで努力が報われ、ステップアップができたと実感できました。『エリザベート』のトートにしても、5年前に演じたトートと今のトートを聞き比べると、僕自身でもわかる違いがありますね。声においてもテクニックにおいても、全然違います。でも5年前の24歳の時は、自分なりの「限界」まで出し尽くしてやっていました。こういうスタンスをずっと続けていけばもっともっと上手になれるんじゃないかと思いますし、いいエンターテイナーになれるんじゃないかなと思っています。逆にそれを怠れば、のびしろのない、つまらない役者になるのだ、とも」
『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

『エリザベート』写真提供:東宝演劇部

――今言及されたトートについては、5年前と今年では役柄の理解も変化しましたか?

「わざわざ変えるつもりはなかったし、同じ感覚で稽古に入ろうと思っていたけれど、5年違えば、僕自身の経験値が異なります。最初に台本を読んだ時の「ドライアイスのような存在」という感覚を大事にやっていても、時間が経つことで「以前はここには全然アクセントつけてなかったけどつけたくなるな」「ここって歌い上げたくなるな」となって、それが役作りの変化につながっていきます。もう一つ、芝居は一人で作るものではないので、周りの方々によっても変わっていきます」

――『エリザベート』は来年も再演があり、楽しみですね。

「僕は、トートのあり方を難しく考えすぎているのか、トート=死=完璧というイメージがあって、完璧に演じなくてはいけないというプレッシャーを自分にかけてしまうんです。だから楽しみではないです、つらいです(笑)。人間の役を演じている時には声がぶれたり台詞を噛むことも、人間の役ならあり得るし、それが直接的な何か意味を持つようにはとられないと思いますが、トート役となると僕の中では、咳やくしゃみはもってのほかだし、鼻をかいたりするだけでその役のイメージが変わってしまう。容姿だけなく歩き方、歌い方、手の出し方おさめ方、首の角度に目線まで、全部意味があると思うから、きついんですよ。舞台でめちゃめちゃ疲れます。自分の求めるトート像が「完璧」なので、それをやらなくちゃいけないのがきついですね」

――今年、ダブルキャストだった井上芳雄さんとは対照的なお言葉ですね。井上さんは「何をやっても許される役だからすごく楽しかった」とおっしゃっていました。

「そうですね、捉え方の違いだと思います。『死』という役なので、確かにそうなのだと思うけど、僕の「死」は完璧じゃないといけないと自分で決めちゃっているので、自分が思う通りにやらなくちゃいけないんです。それなのに一度、階段を下りるときに服が装置にひっかかって、自分で取り払ったことがあって、その時はそれだけで『ごめんなさい、お客様…』とへこみましたね。自分が許せなかったです」

*次頁では『The Love Bugs』の後に初挑戦する演出作品、そして今後のビジョンについてうかがいます。
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