この記事では、学習方法や学習時間・時期について具体的に解説したいと思います。
「試験問題がやさしければ合格しやすい」は間違い
平成28年度の宅建士試験は、昨年度までと比べてやさしく比較的解きやすい問題が多い年でした。私も東京の会場で受験しましたが(毎年受験しております)、受験後の雰囲気は思っていたよりも解けたという安堵感が顔に現れている方が多かったように思います。ただ、問題がやさしかったということは、当然に合格ラインも上がるので実質的な難易度は問題の内容には左右されません。宅建試験は合格者の数が約3万人程度という枠があるだけで、何点以上が合格できるという絶対評価ではありません。
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学習時間は少なくとも236時間は必要。人によってはその倍も!?
ゼロからはじめてどれくらい勉強すれば合格できるのか、という観点から逆算して、1日にとれる学習時間とその時期を考慮して、いつから学習をはじめるべきかを計画しなければなりません。ここでは、私の経営するスクールでの60%以上の合格率をキープする社内研修を例に挙げて説明します。- インプットとなる講義が、権利関係(民法等)で21時間、宅建業法等で18時間、法令上の制限・税法・不動産の評価で15時間です。それぞれの科目について総まとめのアウトプットとなる演習講座(25問程度の問題演習と解説)が3時間ずつです。
- 総まとめの短期集中講座を同様に3つの分野について実施しています。8月に権利関係について7時間のインプット講座と5時間以上のアウトプット講座(満点とれるまで演習問題を繰り返すもの)、同様に9月に法令上の制限・税法・不動産の評価、10月に全科目の総復習演習講座(50問の予想問題とその解説講義、および満点とれるまで繰り返す宅建業法の演習講座)があります。
- 予想模擬試験を5回実施します。2時間の試験と1時間の解説講義からなります。
- 宅建前日等に5時間の全科目の総まとめ講座があります。
以上を合計すると、インプット系で80時間の講義、およびアウトプット系で33時間の演習の合計113時間の講義となります。
もちろん、この講義を受講するだけでは合格できません。受講者には各自で自主学習をするように強く要請しています。その内容は問題演習です。具体的には、4肢択一式の過去問250問程度、1問1答式の過去問1200問程度を最低3回繰り返すことを要求しています。前者で約63時間、後者で約60時間程度となります。
以上を合計すると、自主学習時間は123時間となります。
上記の講義と自主学習を合計すると236時間となります。
もちろん個人差はあります。社内研修を長く手掛けてきている経験から、大学で民法等の法律学を履修している方で入社して間もない方は、上記のプログラムで40点台の得点で余裕をもって合格します(ある意味、勉強し過ぎ状態です)。逆に、受験勉強自体に慣れていない社員、40歳を過ぎ学習から長く離れている社員の場合はこの時間では合格するかどうかギリギリの状態になります。
1日に1時間程度の時間を毎日とれる場合は、約8カ月間となります。その倍の時間がとれる場合は4カ月間となります。ただ、単純に数字を割っただけなので注意が必要です。すなわち、早い段階での学習は人間の記憶力の限界から、試験日に記憶が残っている可能性は低くなるので、同じ内容を直前期に再度繰り返す必要があります。
また、仕事やその他やむを得ない事情があると思うので、毎日学習時間を確保することは困難でしょう。また、この数字はあくまでも信頼のおける講師の授業を受けるという前提なので、独学の場合はこの数倍の時間が必要となると思ってください。
結論を言えば、宅建試験に合格するためには試験1か月前からの詰め込み学習は絶対に必要です。したがって、直前期には平日に1日4時間、土日祝日に1日8時間の学習時間を確保することを予定し、それまでは1日1~2時間程度の余裕をもった学習時間の確保がベターです。
そうすると、3月~5月くらいまでには学習をスタートしておく必要があるでしょう。
ベターな学習順は人によって違う!「民法」か「宅地建物取引業法」か?
何から勉強するかは重要!
ただ、独学の場合は、人によっては深みにはまってしまう可能性があります。本格的に民法を学習しだすと2年も3年もかかってしまうくらい深い法律科目です。したがって、独学の場合は、深入りしてもマスターするのに時間のかからない「宅地建物取引業法」からスタートするのもよいでしょう。
「法令上の制限」については、建築会社に勤務している等で、仕事で使用しているような場合でない限り、後回しにするべきです。というのは、法令上の制限という法律科目は、民法で定められた土地や建物に対する所有権等の自由を制限するという意味なので、民法を学習する前に学習することはリスクがあるからです。また、法令上の制限で出題される法令は、宅地建物取引業法に定められている重要事項説明書面に記載しなければならない法令です。そもそも重要事項説明とはどういった性質のものなのかをわからずに、法令上の制限を学習すると目的を見失って出題される可能性の低いところまで深入りするリスクがあるからです。
以上から、スクール等に通い、信頼のおける講師に質問ができる環境を整えられるのであれば、民法→宅地建物取引業法→法令上の制限→その他と学習を進めましょう。
独学で学習をする場合は、宅地建物取引業法→民法→法令上の制限→その他の学習と進めるのもベターです。
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