ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

気になる新星インタビューvol.16 宮澤エマ(4ページ目)

宮本亜門さんに見出されて『メリリー・ウィー・ロール・アロング』でミュージカルに進出、新人離れした(?!)カメレオン女優ぶりで活躍中の、宮澤エマさん。最新作の『ドッグファイト』では“いけてない女の子”に扮し、素敵な恋を演じます。ブロードウェイ期待の若手作曲・作詞家コンビによるとびきりの青春物語、どんな舞台になりそうでしょうか?*観劇レポートを掲載しました*

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

NGも「境界線」も無い女優を目指したい

『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを』写真提供:東宝演劇部

『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを』写真提供:東宝演劇部

――その後が『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』の、ちょっと気弱なシスター・ロバート役。『メリリー』でのお役との落差が激しかったです(笑)。

「“今度はかわいい役でよかったですね”と皆さんに言われました(笑)。『メリリー』のときは銀河劇場という中劇場でしたが、それが今度は帝劇ですので、小さいお芝居をすると後ろのお客様には表情などは見えない、けれど繊細に心の動きを見せなくてはいけないという難しさもあったし、初めて70回以上という公演数も経験し、すごく勉強になりました。歌も地声で高いところで歌わないといけないので、70数回の公演の中でペース配分やコンディションのケアもありましたね。でもあの舞台で多くの方に私の存在を知っていただけて、ほかの作品につながっていきました。来年の再演もすごく楽しみです」

――続いてはアメリカの高校生の青春群像ミュージカル『bare』。美人なのにコンプレックスを抱えたお役でした。

「『ドッグファイト』にも通じますが、10代の子にとっては建前だったり評判だったり、表面的な部分が重要なんですよね。アイビーという子は見た目はきれいだけど、自分が抱える問題を上手に表現できなくて、周りからは“どうせ悩みなんてないんでしょ”と決めつけられています。言っていることと思ってることが違ってたり、かわいくないこともいっぱい言ってる女の子でした。その後、『ラ・マンチャの男』でも経験したのですが、台詞として伝える内容と本当はこう思っているというものが違うという表現の難しさを体験したお役でしたね。でも目の肥えたお客様や、二度ご覧いただいた方にはキャラクターの内面をもう一歩深く見ていただけたと思うので、すごくやりがいのある役でした」

――その『ラ・マンチャの男』では、半世紀近く主演されている松本幸四郎さんと共演されました。
『ラ・マンチャの男』写真提供:東宝演劇部

『ラ・マンチャの男』写真提供:東宝演劇部

「幸四郎さんは演出家として、稽古では最初代役をたててご覧になっていて、“そうじゃない”というときはまずやって見せて下さるのですが、それが私にはまず真似できないんです。台詞一つをとっても、目線だったり、間だったり。その絶妙な間が、幸四郎さんがやると本当におもしろくて、やっぱり間で変わるんだなあ、と傍で見せていただけたのが、何物にも代えがたい経験でした。

私の演じたアントニアは、一曲のナンバーの半分をソロで歌って、ちょっとお芝居して、最後にまたお芝居があるだけなので、登場するシーンはすごく少ないんですけど、幸四郎さんは“(出番が少ないのなら、あなたがすべきことは)役をどう魅力的に見せるかということだと思います”とおっしゃってくださいました。好かれるように、という意味ではなくて、嫌な役でも見とれてしまうとか、リアリティをもって演じるということを教えてくださって、今でもそれは課題です。舞台では、その人自身が魅力的なものを持っているかがやっぱり出てしまうと思うんですね。その引き出しの多さというものが、幸四郎さんはふんだんで。俳優としてだけでなく、人間として魅力的であることが大事なのだと、あの現場ではものすごく感じました」

――小劇場から大劇場まで、新作から古典ミュージカルまで。非常にバランスのとれたキャリアを積んでいらっしゃいますね。

「すごくいい作品に立て続けに出演できて、本当にラッキーだったと思います。長く下積みをされてきた方からしたら“ぽっと出”と思われても仕方ない状態なだけに、一つ一つの舞台で誰よりも早く吸収しなくては。“新人なのでわからない”とは言えないので、追いつけ追い越せのメンタリティでやってきました。今回の『ドッグファイト』では、今まで培ってきたものをどれだけ生かせるか。こんなに大きい役をいただいたのも初めてなので、どれだけ魅力的にできるか、頑張らなきゃなと思っています」

――表現者として、今度についてはどんなビジョンを抱いていらっしゃいますか?

「すごくありがたいことに、これまではいわゆる“ヒロイン”枠に当てはまらないことが多かったのですが、これからも“そんな役をやるの?”と思われるような、NGのない女優でいたいです。凝り固まっていきたくないというのと、できれば、ミュージカルにとどまらず、ストレートプレイとか、今、TVでコメンテーターもやらせていただいているんですけど、とにかく“No Boundary(境界線無し)”な自分でいたいです。それが舞台に繋がっていくのかなと思うんですね。芸歴が浅い分、いわゆる技術と言うものはあまり持っていないかもしれないけれど、普通に、20数年間一般の人として生きてきて、皆さんの経験していることも経験してきたし、たくさんの人が経験してないこともしていると思うので、それが私の芝居に生きているのかなと思います。表現者として、とにかく“No Boundary”にやっていきたいなと思っています」

*****
体当たりの“おばちゃん”役が“鮮烈”を超えて“強烈”だった『メリリー』でのデビューから、2年。この間、理想的ともいえるキャリアを築いているエマさんですが、その素顔は気さくで柔らか。これからも一つ一つの現場で多くを吸収し、さらに豊かな引き出しを蓄えた魅力的な女優になってゆくのでは、と期待がいや増したインタビューでした。そんな彼女が「今回、本当にいい舞台になりそうですよ~」と取材終了後も目を輝かせて語っていた『ドッグファイト』。これまでの各国版の中でも、決定版となるかも?!しれません。

*公演情報*ドッグファイト』12月11~14日=サンケイホールブリーゼ、17~30日=シアタークリエ、16年1月7~8日=東海市芸術劇場大ホール

*次頁で『ドッグファイト』観劇レポートを掲載しました!*
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