契約社員が知っておきたい法律知識とは?
契約社員は、労働契約法の内容を把握して、会社との労働契約を理解するようにしなければなりません
一般的には「契約社員」は期間を定めて締結された雇用契約で、正社員未満アルバイト以上といった待遇の社員に対して用いられることが多いと思います。
以後、本文ではこのような有期労働契約を結んでいる社員を「有期契約社員」と呼びます。なぜあえて「有期」をつけるかというと、「期間の定めがない契約社員」という立場の人も制度上あり得るからです。期間の定めのない契約社員を「無期契約社員」と呼ぶことにします。特に区別する必要がなければ、単に契約社員と呼びます。
労働基準法では、1回の契約期間は最長3年(60歳以上の労働者または専門的業務に就く労働者は最長5年)と定められています。
<目次>
労働契約法の大改正は、契約社員のあり方を変えた!
もともと契約社員といえば有期契約というイメージが強かったのですが、平成25年に労働契約法が改正されたことで、無期契約社員という形態にも注目が集まりました。改正された主なポイントは3つありました。ご覧のとおり、改正は有期契約社員の保護が主目的だと分かります。中でも、1.の無期労働契約への転換は従来の有期契約社員のあり方を大きく変える変更点です。1.同じ事業者のもと、5年を超えて数回有期労働契約を結んできた労働者は、無期労働契約への転換の申込みが可能とする。
2.反復継続された有期労働契約などの打ち切りには一定の要件を必要とする。
3.労働契約に期間の定めがあることでの差別待遇は原則禁止とする。
有期契約社員は5年働けば無期契約への転換制度も可能!?
従来、会社にとって、有期契約社員を雇用する最大のメリットは、派遣労働者と同様に雇用調整がしやすい点でした。有期契約期間中は契約で保護されるため、よほどの理由がない限り契約期間の途中での打ち切りはできませんが、会社もおおよその業務サイクルを考慮して契約期間を決めるので、1サイクルごとに雇用を継続するかどうかを決められる点において、有期契約社員は正社員を辞めさせるよりも負担が少なかったのです。
しかし、これでは労働者は不安定な立場を余儀なくされてしまいます。こうしたことを防止するため作られたのが、無期契約社員への転換制度です。
これにより、同じ会社で5年間働いた有期契約社員は、会社に無期契約社員への切り替えを申し込めるようになりました。申し込みといっても、会社側の拒否は認められていないため、実際には有期契約社員の希望次第です。5年間のカウントは平成25年4月1日からなので、転換は、最短で平成30年4月1日以降です。
無期労働契約の転換は、「待遇まで正社員並み」を意味しているわけではありません。転換に伴って会社と新たな取り決めをしない限り、期間の定めがなくなる以外は、給与や賞与体系、退職金などは従来のままですし、勤務地限定や転勤なしといった条件も引き継がれます。
有期契約社員に転換権を発生させない方法は、どこまで認められる?
契約期間が5年を超えると無期契約への転換権が発生するなら、その前に契約を打ち切ろうという会社が出てきてもおかしくはありません。このような取り扱いは認められるのでしょうか?有期労働契約が期間を定めて締結されるものである以上、こうした会社の対応は違法ではありません。しかし、次節で説明するように、有期契約といっても更新手続きが形骸化している場合や、契約更新することを会社が期待させるような言動を取るようなケースは、会社の取り扱いが認められない可能性があります。
それでは「最初から5年を超えて更新しない」といった契約はどうでしょうか? このような契約も有効ですが、毎年しっかりと契約更新手続きを取らないで、いきなり5年目に「はい、契約通り今年で終わりです」のような形だと、上記と同様に不合理な取り扱いとされる可能性はあるでしょう。
また、有期契約締結時に将来の転換権を行使しないことを契約させることは認められませんが、会社側が転換権の行使期間を定めることは、短すぎなければ問題ないと考えられます。
ずっと更新してきた契約がいきなり打ち切り、どうしたらいいの?
有期労働契約の中には、お互い何もいわなければ1年ごとに自動更新するといった契約もあります。労働者も契約のことは忘れてしまうくらいに更新してきたのに、突然今年で契約終了というケース、いわゆる雇止めに対しての防止も労働契約法で定められています。「何年も繰り返して契約を更新してきたのに、会社都合でいきなり更新しないとするのは、実質的に解雇と同じじゃないか」と、会社と争いが起こる事例は以前からありました。
こうした会社からの一方的な打ち切りによる争いについて、法律で基準を定めることで、有期契約社員の立場を保護しようということです。
とはいっても、法律には「何年更新された場合に適用する」などの具体的な数字は書いてないので、どの程度までが保護されるのかは、過去の例などを参考にケースに応じて判断されることになります。
自動更新を繰り返し行ってきたようなケースでは、会社の打ち切りが認められない場合もあります。逆に毎年契約期間を明示して契約書を取り交わしているような場合は、よほど更新を期待させるような言動を会社がとっていない限りは会社の取り扱いは問題ない、とされる可能性が高いでしょう。ちなみに5年超の場合の転換権を行使するなら、会社の契約打ち切りの問題は発生しないのはいうまでもありません。
契約社員は通勤手当なし、これって法律上OK?
正社員と契約社員の違いは、「雇用契約に期間を設けられること」「個別に労働条件を定められる」などがあります。多くの場合、正社員は就業規則などによって給与体系や勤務について定められています。一方、契約社員は個別の労働契約で正社員と異なる労働条件で締結されることもしばしばあります。
ここで注意しておかなければならないのは、労働契約法では、「期間の定めがあることにより」正社員と比べて不合理な労働条件を付けることは禁止されている、ということです。
たとえば、通勤手当は正社員のみ、業務上必須スキルを取得するための研修費の会社負担が正社員のみ、食堂の利用は正社員のみとする、などが該当します。
一方、給与体系やボーナス体系、退職金制度は、正社員は長期勤続を前提に決められているケースもあり、正社員と契約社員で差異があってもすぐに上記に違反するわけではありません。そもそも正社員は契約社員に比べ、仕事内容やキャリア設計、さらには転勤の可能性などの点で責任が重い場合が多く、その点を反映した取り扱いの違いについては、不合理な差異とはいえないのです。
私自身、1年間の有期契約社員として働いたことがありますが、正社員に比べて賞与の支給回数が少なかったという経験があります。「有期契約社員だから」という理由でしか説明できないような取り扱いの差異は違法ということですね。
さらに、2020年4月から施行される同一労働同一賃金のもとでは、具体的な職務内容に照らして設けられた差異でなければ違法になる可能性もあります。これまでのように、将来的な役割期待が異なるなどの具体的でない理由からの差異は認められなくなります。そもそも正社員とアルバイトなどでは実務力に差異があるとは思いますが、中には正社員ばりに働く非正規社員もいます。そうした人たちが「非正規だから」という理由で待遇に差を設けることは違法ということです。
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