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乳酸発酵「くず餅」が再注目!あの「葛餅」とは別物?(2ページ目)

東京や神奈川、千葉の寺社門前名物「くず餅」。発酵食品だと知っている人は少ないかも!? あの葛粉を使う「葛餅」とは全く別物で、江戸時代から作られている歴史あるお菓子なのです。

原 亜樹子

執筆者:原 亜樹子

和菓子ガイド


山信食産の「江戸久寿餅」作り

小麦でん粉

1年半、乳酸発酵させた「小麦でん粉」

「江戸久寿餅」の作り方を拝見。材料は、1年半、乳酸発酵させた「小麦でん粉」だけ。独特の弾力とプルリとした食感は、長期発酵により生まれるのだそうです。理想の弾力と風味を出すため、小麦の、中心の白いでん粉と、外側の灰色のでん粉をブレンドして使います。

水洗い

1週間かけて水洗いし、アクを除く。水に晒しすぎるとコシのない餅になる。職人歴30年の熟練でも、見極めが難しい

まずは、余分な発酵臭や酸味を除くため、でん粉を水洗い。小麦でん粉を入れたタンクに、水を張って撹拌し、沈殿したら上水を抜くことを1週間繰り返します。

ろ過

ろ過したら、ようやく原料の出来上がり

1年半と1週間かかって、ようやく出来上がった「原料」をろ過します。

蒸気

蒸気で加熱し、

高温の蒸気を入れて、

湯がく

蒸気を入れながら湯がき、糊状にする。でん粉の状態を見極めるには長年の経験を要する

「湯がく」作業。職人さんが撹拌し、糊状にします。

晒

生地を流し入れる木枠に晒を敷く

木枠に一枚一枚晒を敷き、

蒸す

生地を流し入れて蒸し上げる。ここでも職人さんの経験と勘が頼り

生地を流し、蒸し上げます。

蒸し上がり

蒸し上がり。手早く晒を外す

熱いうちに晒しを外し、

扇風機

送風しながら常温に冷ます

風を送りながら常温に冷ませば、もっちりプルリとした、艶やかなくず餅のできあがり!

カット

1枚1枚型に入れてカット

小山さんは子どもの頃、学校から戻るとお皿を持って戸口に立ち、一番おいしい出来立てをもらって、おやつにしていたのだそう。その美味しさを伝えたいと始めたのが工場直売なのです。

卸

卸用のくず餅。真空パックし、加熱殺菌

長い時を経て完成した「くず餅」ですが、このままでは2日しか持たないため、卸用にはもうひと手間。真空パックと加熱殺菌により、日持ちを良くします。

時間も手間暇もかかる「江戸久寿餅」。乳酸菌という、いわば生き物が相手なので、アクの抜き方や蒸気での湯がき加減、蒸し加減は毎日変わり、熟練職人さんにとっても難しい作業です。そんな難しさもあり、作り手は減る一方。東京で製造しているところは現在、片手で数えられるほどしかないのだそうです。

山信食産では、工場直売を始めてから、お客さんの「おいしい」の声が、直接職人さんに届くようになりました。その声は励みとなり、顔の見えない相手に対して作っていた時よりも、モチベーションはグンと上がっているそうです。

洒落のきいた新パッケージは、手土産にも◎

新パッケージ

小山さんの友人のグラフィックデザイナーによるデザインと、その方の書道の師による筆文字。(写真提供:山信食産)

取材時、流れるような美しい筆文字が目に留まった新パッケージ。3つの三角からなる山の連なり9列と、3本の線からなるデザイン。これは様々な意味が込められているそうで、「久寿餅・きな粉・黒蜜」の三位一体、3代目、山信の「山」、くず餅の三角、9と3で「く・ず(9・3)」、地元工場街で作っていることから工場、さらに江戸川の波もイメージ。「山」という字のごとく、三というバランスの良さを大切に……。

さらに、舟をこぐ船頭さんも、ひっそりと描かれています。遊び心を忘れない、小山さんらしさを感じるデザインです。

「山信食産」60周年記念感謝祭

プレジャーB

60周年記念感謝祭。「プレジャーB」のショーも開催! (写真提供:山信食産)

先日、取材も兼ねてお邪魔した、山信食産60周年記念感謝祭。仕事関係、ご友人、知人、地元の皆さんで、750席のホールは、ほぼ満席でした。著名なクラウンK率いる、クラウンファミリー「プレジャーB」のショーもあるというので、お子さん連れの方もたくさん。

小山さんの挨拶も、60年の歩みを伝える自作のムービーも、ショーも、終始一貫、関係者からお客さんまで、自社を支える全ての人への感謝にあふれたものでした。マスコミや関係者向けではなく、本来の意味での感謝祭を、参加費無料で大規模に開催したのは、小山さんの心意気。

人の声に耳を傾けながら、商品開発や新規市場開拓に励み、情報発信もしっかり。1人で抱え込まず、その道のプロに相談することで、グングン磨きがかかる。その1つ1つに感謝しながら、どんどん前に進む小山さんに、関係者も仲間もお客さんも惹きつけられてゆく。ものを作るのも売るのも、「人」なのだと改めて思います。

工場直売のほか、地元を盛り上げようと、金曜日には都営新宿線・船堀駅改札前へも出店。伊勢丹新宿店やエキュート品川への催事出店も果たし、地元以外にもファンを増やしています。これから「山信食産」の「江戸久寿餅」を口にする機会は、益々増えることでしょう。

<店舗情報>
■ 「山信食産」(毎週火曜日、工場直売日のみオープン)
所在地:東京都江戸川区東小松川4-20-12
都営新宿線「船堀」駅より徒歩約10分
電話:03-3656-4460
地図:Yahoo!地図情報
<販売場所・販売日時>
工場直売
場所:山信食産工場前(上記参照)
日時:毎週火曜日12:00~17:30※売り切れ次第終了
船堀駅 催事販売
場所:都営新宿線 船堀駅 改札前
日時:毎週金曜日15:30~20:30※売り切れ次第終了
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