山信食産の「江戸久寿餅」作り
「江戸久寿餅」の作り方を拝見。材料は、1年半、乳酸発酵させた「小麦でん粉」だけ。独特の弾力とプルリとした食感は、長期発酵により生まれるのだそうです。理想の弾力と風味を出すため、小麦の、中心の白いでん粉と、外側の灰色のでん粉をブレンドして使います。まずは、余分な発酵臭や酸味を除くため、でん粉を水洗い。小麦でん粉を入れたタンクに、水を張って撹拌し、沈殿したら上水を抜くことを1週間繰り返します。
1年半と1週間かかって、ようやく出来上がった「原料」をろ過します。
高温の蒸気を入れて、
「湯がく」作業。職人さんが撹拌し、糊状にします。
木枠に一枚一枚晒を敷き、
生地を流し、蒸し上げます。
熱いうちに晒しを外し、
風を送りながら常温に冷ませば、もっちりプルリとした、艶やかなくず餅のできあがり!
小山さんは子どもの頃、学校から戻るとお皿を持って戸口に立ち、一番おいしい出来立てをもらって、おやつにしていたのだそう。その美味しさを伝えたいと始めたのが工場直売なのです。
長い時を経て完成した「くず餅」ですが、このままでは2日しか持たないため、卸用にはもうひと手間。真空パックと加熱殺菌により、日持ちを良くします。
時間も手間暇もかかる「江戸久寿餅」。乳酸菌という、いわば生き物が相手なので、アクの抜き方や蒸気での湯がき加減、蒸し加減は毎日変わり、熟練職人さんにとっても難しい作業です。そんな難しさもあり、作り手は減る一方。東京で製造しているところは現在、片手で数えられるほどしかないのだそうです。
山信食産では、工場直売を始めてから、お客さんの「おいしい」の声が、直接職人さんに届くようになりました。その声は励みとなり、顔の見えない相手に対して作っていた時よりも、モチベーションはグンと上がっているそうです。
洒落のきいた新パッケージは、手土産にも◎
小山さんの友人のグラフィックデザイナーによるデザインと、その方の書道の師による筆文字。(写真提供:山信食産)
さらに、舟をこぐ船頭さんも、ひっそりと描かれています。遊び心を忘れない、小山さんらしさを感じるデザインです。
「山信食産」60周年記念感謝祭
60周年記念感謝祭。「プレジャーB」のショーも開催! (写真提供:山信食産)
小山さんの挨拶も、60年の歩みを伝える自作のムービーも、ショーも、終始一貫、関係者からお客さんまで、自社を支える全ての人への感謝にあふれたものでした。マスコミや関係者向けではなく、本来の意味での感謝祭を、参加費無料で大規模に開催したのは、小山さんの心意気。
人の声に耳を傾けながら、商品開発や新規市場開拓に励み、情報発信もしっかり。1人で抱え込まず、その道のプロに相談することで、グングン磨きがかかる。その1つ1つに感謝しながら、どんどん前に進む小山さんに、関係者も仲間もお客さんも惹きつけられてゆく。ものを作るのも売るのも、「人」なのだと改めて思います。
工場直売のほか、地元を盛り上げようと、金曜日には都営新宿線・船堀駅改札前へも出店。伊勢丹新宿店やエキュート品川への催事出店も果たし、地元以外にもファンを増やしています。これから「山信食産」の「江戸久寿餅」を口にする機会は、益々増えることでしょう。
<店舗情報>
■ 「山信食産」(毎週火曜日、工場直売日のみオープン)
所在地:東京都江戸川区東小松川4-20-12
都営新宿線「船堀」駅より徒歩約10分
電話:03-3656-4460
地図:Yahoo!地図情報
<販売場所・販売日時>
■工場直売
場所:山信食産工場前(上記参照)
日時:毎週火曜日12:00~17:30※売り切れ次第終了
■船堀駅 催事販売
場所:都営新宿線 船堀駅 改札前
日時:毎週金曜日15:30~20:30※売り切れ次第終了