世界遺産/アジアの世界遺産

福建の土楼/中国(4ページ目)

森と畑が広がる深い渓谷に突如姿を現す直径70m、6階建ての巨大な建造物、客家土楼。個々の土楼が驚異的であるうえに、自然には不似合いな円形・楕円形・正方形・長方形・六角形といった幾何学図形が連なる様は感動的なほどに神秘的だ。近年中国では万里の長城や紫禁城に匹敵する人工建造物として人気は急上昇中! 今回はそんな中国の世界遺産「福建の土楼」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

世界遺産の土楼群 5. 田螺坑(でんらこう)土楼群

田螺坑土楼群

「四菜一湯」と呼ばれる田螺坑土楼群の5楼。上部の楕円楼が文昌楼、方楼が歩雲楼、手前が和昌楼、左が瑞雲楼で右が振昌楼

瑞雲楼

瑞雲楼。1階に窓がないのがわかる

永定土楼民俗文化村の南東約12km、ショウ州市南靖県にある土楼群。1棟の方楼を中心に4棟の円楼が連なっており、これが料理の配置に見えることから四菜一湯(一汁四菜)と呼ばれている。この5棟が世界遺産に登録されている。

もっとも長い歴史を持つのが方形の歩雲楼(ほうんろう)で、1662~1672年の康煕年間に建てられたが、1936年に放火により和昌楼(わしょうろう)とともに焼失し、1953年に再建された。ユニークなのが1966年に建てられた文昌楼(ぶんしょうろう)で、極端な楕円形をしている。

展望台が隣接しており、四菜一湯を含む見事な景観を望むことができる。

 

世界遺産の土楼群 6. 河坑(かこう)土楼群

河坑土楼群の美しい文化的景観

大自然に囲まれた河坑土楼群の美しい文化的景観。裕昌楼は少し離れた南靖県書洋鎮下坂村にある (C) Zhangzhugang

ジグザグに揺れる裕昌楼の柱

ジグザグに揺れる裕昌楼の柱

永定土楼民俗文化村の東約8km、ショウ州市南靖県にある土楼群で、13棟が世界遺産に登録されている。

特にユニークなのが直径54m、5階建ての巨大な円楼・裕昌楼だ。伝説では元代にあたる1308年の建設とされており、事実なら福建省でも最古の土楼になるが確証はない。異様なのが円楼を支える柱で、その多くが垂直に立っておらず、左右にゆがんだまま固定されている。大工が曲がったまま建設し、そのまま逃亡したと伝えられているが、こちらの詳細も不明だ。

河坑土楼群には他に永盛楼、縄慶楼、永貴楼、陽照楼、春貴楼、永慶楼などの土楼がある。

 

世界遺産の土楼群 7. その他の土楼

和貴楼

田畑との調和が美しい和貴楼。田螺坑土楼群や河坑土楼群に近いので、これらを訪ねる際についでに立ち寄ろう

これまで紹介した6土楼群以外で世界遺産に登録されている1群2棟を紹介しよう。

■大地(だいち)土楼群
永定土楼民俗文化村の北東約80km、ショウ州市華安県にある土楼群で、3棟が世界遺産に登録されている。ハイライトは1740年から30年かけて造られた二宜楼(にぎろう)で、直径73mは福建の土楼でも最大規模を誇る。外壁の厚さは下部で2.5mにもなり、二重円楼に213室を備えている。内部装飾が美しいことでも知られ、226の壁画、228の絵画、349の彫刻などが楽しめる。

■懐遠楼(かいえんろう)
永定土楼民俗文化村の東約12km、ショウ州市南靖県梅林鎮坎下村にある土楼で、田螺坑土楼群や河坑土楼群からほど近い。1905~1909年の建設で、直径38m、祖廟を中心とした二重の円楼からなる。こちらも土台の石が非常にしっかりしている。

■和貴楼(わきろう)
永定土楼民俗文化村の東約12km、ショウ州市南靖県梅林鎮長教村にある土楼で、懐遠楼が近い。1732年に建設された5階建ての方楼で、高さ22mを誇る。田畑と沼沢に囲まれた美しい環境とスマートなたたずまいから天下第一楼の異名を持つ。
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