福建の土楼の構造
米の升に似ていたことから命名された洪坑土楼群・如升楼。最小の円楼としても知られる
高北土楼群、左の円楼が承啓楼、右の方楼が世澤楼。土壁が地層のようだ。世澤楼は石のプラットフォーム上にある
形は円形・楕円形・正方形・長方形・五角形・六角形といった幾何学的な形状をとることが多い。屋根の高さが変わる鳳楼や、宮殿の形をまねた宮殿式と呼ばれるものもある。
外壁は石や岩のベースに鉄筋コンクリートのように木の骨組を入れ、土や砂・石、あるいはレンガを積み重ねて1.8mほどの厚みをもって造られる。洪水や襲撃に備えて1階は石造りで窓がないか小さいものが多い。壁は非常に堅牢で、19世紀末の太平天国の乱の際にいくつかの土楼が砲撃を受けたが、小さな穴が開いただけだったと伝えられている。
一般的な土楼では、中庭の中央部には先祖の霊を祀る祖廟が置かれ、その周囲に炊事場や洗濯場・浴場・集会所・食道などの共有スペースが設置されている。2階は倉庫で、3階以上が居室や寝室となる。中庭を中心に置いているため、いずれの部屋からも他の部屋が一望できる。
高北土楼群の文明楼。このような木組みをベースに各階を構築していく
こうした土楼が3万以上存在するといわれるが、世界遺産「福建の土楼」に登録されたのは以下の6群4棟、計46棟だ。
■龍岩市永定区
洪坑土楼群(7棟)、初渓土楼群(10棟)、高北土楼群(4棟)、衍香楼、振福楼
■ショウ州市南靖県(ショウはさんずいに章)
田螺坑土楼群(5棟)、河坑土楼群(13棟)、懐遠楼、和貴楼
■ショウ州市華安県
大地土楼群(3棟)
世界遺産の土楼群 1. 洪坑(こうこう)土楼群
均整のとれた土楼王子・振成楼の内観。中央の祖廟はギリシア建築の影響を受けており、折衷様式であることがよくわかる
土楼王子・振成楼の外観
最大の見所は「土楼王子」の異名を持つ振成楼(しんせいろう)。1917年に完成した土楼で、直径57mを誇る4階建ての外円に、2階建ての内円を備えている。約220の部屋があり、中央の祖廟はコリント式の柱を持つギリシア風の造りになっている。
長き軒先を持つ華麗な屋根と純白の城壁が特徴的な奎聚楼
1900年前後に建設された如升楼(じょしょうろう)は直径23mのかわいらしい円楼で、最小の土楼といわれている。これ以外にも洪坑土楼群には福裕楼、九威楼、朝陽楼、景陽楼をはじめ多数の土楼があり、見所が多い。