「くださる」と「いただく」の違いはこれ!知っておきたい敬語表現
「○○くださり・いただき」と、日頃何気なく使うこの2つ言葉も、ときには不自然になってしまうこともあります、どのような点に気をつければいいのでしょうか?
まずは、基本となる「くださる」と「いただく」の言葉の意味を見直してみましょう。「くださる」「いただく」は、それぞれ「くれる」「もらう」の敬語です。もっと詳しく述べると、「くださる」は「くれる」の尊敬語。「いただく」は「もらう」の謙譲語になるわけです。相手が「くださる(くれる)」ということは、自分が「いただく(もらう)」ということのため、内容としては同じことを表しています。
では、どう違うのか、ひとつは、物事を見たり考えたりする位置・観点の違いのようなものがあります。
■「くださる(くれる)」
物のやりとりを考えた場合、「くれる」は渡す側から見ているので、観点は渡す側になります。
「(あなたが)送ってくれる」
■「いただく(もらう)」
「もらう」は受け取る側から見ている。観点は受け取る側になります。
「(わたしが)送ってもらう」
渡す側の行為から見た「(あなたが)くれる・くださる(尊敬語)」が、尊敬語なのだから正しくて、受け取る側から見た「(わたしが)もらう・いただく(謙譲語)」は間違いなのではないかと思ってしまう場合があるようですが、それは違います。「(わたしが)もらう(謙譲語)」も、「わたし」を低めることによって、相手を高めている働きをもつと考えられますので、尊敬語で表すか、謙譲語で表すかの違いであって、間違いという類のものではありません。
ただし、個人の受け取り方の違いや、使う場面によっては不自然なこともあります。では、再度場面ごとの例で「くれる・くださる」と「もらう・いただく」を考えてみましょう。
例文で解説!「くださる」「いただく」の微妙な違いを学ぼう
■例1:自分が注文した本が届いたことを他人に話す場合「ネットで注文した本を、送ってくれた」
これは何だか不自然さが残ります。「くださった」にすると余計にその感が強まります。別にお店を高めてはいけないということではありませんが、聞く側は、お店とは関係がありませんし、自分が頼んだのだからという気がしてしまうものです。ここは「送ってもらった」が自然でしょう。
このように、「くれた」はどちらかというと、自分が相手に頼んだのではなく、相手の意思で何かをしてくれるような場合に使われることが多いと言えます。ですから、この例のように、自分が相手に頼んだような場合には、「もらう」を用いるほうが自然なものです。
■例2:自分が相手に依頼した場合 その1
「本をお渡しくださいましてありがとうございます」
渡してくれた相手に敬意を表したいという意味では間違いではありません。しかし、こちらも1の例と似ていますが、自分が無理に相手に頼んだような場合は、「(勝手を申しましたのに)お渡しいただきまして、ありがとうございました。お陰さまで助かりました」などの表現がよりしっくりくると感じます。
■例3:自分が相手に依頼した場合 その2
「あらかじめ、調べてくれる・くださる項目はこちらです」
この場合は明らかにおかしいですね。「もらう・いただく」を使って、「あらかじめ、調べてもらう・いただく項目はこちらです」ということはできても、文例のように「くれる・くださる」を用いて表現することはできず、誤用であることがわかります。
■例4:相手の行為にお礼を述べる場合
「ご利用いただきましてありがとうございます」
これは「いただく」「くださる」どちらも用いることができるものです。 頼んだわけでもなくお客様の意思で、店に来た・利用したという点では、「くださいまして」が、お客様への敬意をより強めている感があり適切と感じます。
しかし、文例の「いただきまして」も、自分側が利用してもらったという意味で、自分側を低め間接的に相手に敬意を表しているわけです。また、相手に恐縮な気持ちや厚意を受けた感謝の気持ちなどを述べていると考えられますから、その意味ではどちらも使うことができると言えます。
「このたびは、お菓子をお送りいただきましてありがとうございます」なども、似ています。この場合も、自分がお菓子を送ってくれと頼んだのではなく、相手の意志で送られてきたのですから、本来は「お送りくださいまして」のみが適切なように思われますが、こちらも相手の厚意によって行われたと解釈して、相手からの厚意に恐縮する、感謝するような気持ちで「いただく」という謙譲表現が使われるのではないかと感じます。
このように、少々複雑でどちらもほぼ同じように使われる「くださる」と「いただく」ですが、使い分けの注意点を強いてあげるならば、文例1,2,3のように、自分から頼んで相手に何かをしてもらった場合や、無理を言って相手にお願いした場合などは、「くださる(くれる)」は不自然に響くという点です。このような点に注意しつつ、使う場面によって、より自然にしっくりくる語を選り分けるということが一番大切でしょう。
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