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白井剛×キム・ソンヨン『原色衝動』インタビュー!(5ページ目)

白井剛とキム・ソンヨン、日韓ふたりのダンサーが共演する『原色衝動』。写真界の鬼才・アラーキーの鮮やかな映像を背景に、同年代でもある両者がその関係性を舞台上に投影します。公演に先駆け、白井さんとソンヨンさんのおふたりにインタビュー! 創作の課程と作品への想いをお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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おふたりとも普段振付をされますが、一緒にクリエイションをしていく過程で、お互い違うなと感じる部分はありますか?

白井>僕が彼に振りをつくったり、彼の振りのなかで動いてみたり、それをまた混ぜてみたり……。それぞれのワークショップ的なことをやってみて、具体的な振付方法、身体性を交換したこともありましたが、やっぱりつくり方はすごく違いがあると思います。

僕の場合は、取りあえず思いつくことを何でもやってみるタイプ。テーマとして何となくこの辺りというものがあって、手数を重ねていきながら“これとこれが繋がってるな”“これをひっくり返すとこう見えるな”といったものを発見していく。やっていくうちに自分が何を言いたかったのかがだんだんわかってくる感じです。今回もそうしようとしている部分があるけれど、彼と考えの違うところでもあり、どう折り合いをつけていくかというのは一番難しい部分です。動きながらだったり、映像を編集してみたり、音楽をつくってみたり、小物を使ってみたりと、少しずつ試してはいますけど。今はそこのやりとり自体がテーマみたいになってますね。

ph

 

ソンヨン>韓国のダンスは身体性に優れ、日本のダンスは思想に優れているというのが僕の印象です。僕は15歳のときにダンスを始めて、韓国はもちろん、ヨーロッパやアメリカでバレエとモダンダンスを学んできました。最初の頃は、ダンスは身体だと、いいダンサーとはこういうものだとはっきりとした考えがありました。だけど、ダンスを続けているうちにどんどん考えが変わってきた。ダンスが身体であるということは変わらないけれど、ダンスはテクニックだけではなくて、動きが気持ちによって変わることがある。まず始めにムーブメントがあり、何かのテーマに対して動く。

人間は一度にふたつのことはできないから、まずは身体ありきだと考えていうのが僕の考え方。でも日本のダンサーを見ていると、内面から沸き上がってきているものを表現しようとしているように見える。ということは、そのとき身体はあまり重視していないというか、内面が先で身体が後から付いていく状態になっているのではと……。そこがとても違うところです。ふたりの違いというのがどんどんわかってきて、だから大変だし、疲れるし、でも興味深いところです。

ph

 

白井>僕の中では身体と思想は並列ですね。身体も頭も気持ちも全部が均等で、身体もウソを吐くと思っているし、身体が特権を持っている訳ではないと考えています。無意識になっているときの動きを美しいと思っていて、意識的にどこまで無意識的になれるかということを突き詰めていけば、美しさに繋がる気がします。

考えごとをしていたり、何かに夢中になっているときのふとした佇いとか、見せようとしていないときに出てきた動きに美しさを感じる。そこは彼と違う部分かもしれない。演奏家にしてもそうで、楽器を弾いてる姿をあえて良く見せようとすると格好悪いですよね。いい音を出すための身体のポジションと手の動きがあれば、それは美しい。そういうものを探している感覚はあります。



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