パン/パン屋さん取材レポート(東日本)

ヨシダベーカリーで国産小麦を堪能する【富士見ヶ丘】

京王井の頭線富士見ヶ丘からすぐのところに、2012年にオープンしたヨシダベーカリーは現在、すべて国産小麦でパンを焼いています。シンプルで余計な装飾がなく、すっきりとしていながら味わい深いの店の様子は、そのままこの店のパンをも表しています。

清水 美穂子

執筆者:清水 美穂子

パンガイド

すっぴんで美人。国産小麦の素顔を味わう。

白、茶色、黒、ですっきりとした店内

白、茶色、黒、ですっきりとした店内

最近、国産小麦でパンを焼く店に注目して取材をするなかで、出合った一軒がヨシダベーカリーでした。店は井の頭線富士見ヶ丘の駅からすぐ。交通量の多い通り沿いにあるのに、そこだけひっそりと静かな空気が流れています。
料理に合わせたくなるパンがいろいろ

料理に合わせたくなるパンがいろいろ

白い窓辺に外に向かって置かれた小さなフレームには「ヨシダベーカリー」と手書きの文字。店に入ると白いペンキが塗られた木製のショウケースに陶器の皿が置かれ、ブリオッシュが盛られています。店内は白と黒と茶色。シンプルで余計な装飾がなく、すっきりとしていながら味わい深いのは、この店のパンに通じているようです。
バゲットリュスティック

バゲットリュスティック

「フランスパンください」と年配の女性客が指差したのは「バゲットリュスティック」(200円)。バゲットにしてはちょっと太めでバタールほども長くない、小ぶりのそのパンはこの店のバゲットの役割を担っています。これはおいしいうちに食べきって、また買いに来たくなる(実際すぐにまた買いに行ってしまった)大きさです。味が濃厚でパンチがきいている。同じリーンな生地でも「チャバタ」はライトでやさしく、みずみずしい味わいです。
バゲットリュスティック断面

バゲットリュスティック断面

コックコートにコック帽をかぶっているのは、店主の吉田稔さん。昔ながらの変わらぬパン屋さんのイメージ、だけれどひとつひとつのパンは吉田製2015年型。昨年、2014年からすべて日本の小麦でつくられています。
白いショウケースが味わい深い

白いショウケースが味わい深い

「国産小麦には香りや味がある」という吉田さん。「プレーンなパンが好きで、生地そのままでおいしいようなパンが作りたいと思っています。とくにキタノカオリはそれに適している。この食パンを食べてみてください」
「キタノカオリ」食パン

「キタノカオリ」食パン

普通サイズの食パンもあるけれど、いちおしの小さな食パン「キタノカオリ」(360円)は、もっちりとした弾力と甘味、そしてカスタードのような黄色みがかった、ふんわりとした生地。小さいのは食パンの一番おいしい部分「ミミ」がたくさん食べられるように、なのだとか。
サンドイッチやタルティーヌも

サンドイッチやタルティーヌも

同じ大きさの焼き色のついていない白い食パンは、砂糖控えめのパン。あんぱんなど、菓子パンの生地にも使われています。これが想像していた味と違って、バゲットのようにシンプルなのに力強く、奥ゆきがある。乳製品としてバターのみが使われています。
ミルククリームとさっぱりした生地のバランスが絶妙

ミルククリームとさっぱりした生地のバランスが絶妙

ヨシダベーカリーのパンはどれも「シンプル」なのだけれど、そう一言では片付けられない。わたしは、これは国産小麦の素顔だと思いました。素っぴんでも美人。ノーメイクで結構なのだと。

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