4.7haの広大な敷地を既存樹を活かし9棟構成のつくり
全住棟免震構造 地下駐車場(C棟除く)採用した美しい街区計画
京王線「桜上水」駅徒歩3分から広がる約4.7haにもおよぶ広大な敷地を持ち昭和40年に建てられた「桜上水団地」。桜やイチョウなどの苗木を住民が植樹し、経年とともに緑溢れる美しい住環境を醸成してきました。コミュニティも形成され、築25年頃から団地の将来を考える動きが活発化したそうです。課題だったのは、耐震性やエレベーターが無くバリアフリーが未対応であった点と居住ニーズの変化。遮音性能の低さも大きな問題でした。平成11年には、建替えに向けて日建設計をコンサルタントに選定し協議を重ねていきました。建替えの為には、区分所有者の5分の4の決議に加え団地の場合は各棟の3分の2の賛成も要件になります。建替えをするためには、多くの住民が賛成するには合意形成できる計画が求められます。築年数の古いマンションが増えつつある中、建替えマンションが限られるのは、その難しさを表していると言えるでしょう。
事業パートナーに野村不動産と三井不動産レジデンシャルを選定し、平成21年に建て替え決議が成立。平成25年6月に着工。平成27年6月に竣工し平成27年9月から入居がスタートします。再生して誕生する「桜上水ガーデンズ」は、9棟構成の全878邸。団地が育んだ豊富な木立などの自然を残し緑豊かな環境を醸成するとともに、地下駐車場の設置、全住棟に免震構造を採用するなど美観とともに安全に配慮した先進的なつくりで、地権者住戸以外に分譲された全520戸は、1年半の短期間で完売しました。
敷地内に入ると、「桜上水団地」の歴史を感じさせる高木が迎えます。かつて団地内に植えられた木立は大きく成長。新しいマンションなのに何処となく風格や歴史を感じるのは、手間をかけて残した自然がここにあるからでしょう。これだけの規模の団地が、かつての良さを残しつつ再生できたのは、奇跡とも言えるのではないでしょうか。
敷地内を歩いて感じるのは、住棟間の間隔が確保されとても開放的であること。再生計画が住民間で話し合われた中で、住戸の日当たりや空地の確保をできるだけ従前のものに近づけるようにプランニング。地下駐車場を設け高層と中層に建物を組み合わせることで、風通しや採光を確保した住み心地良いランドスケープになっています。
住民の意向は、共用施設にも表れています。コンシェルジュ・集会室のあるレセプションハウスと住民間で利用するクラブハウスを設置。フィットネスルームやライブラリー、ゲストルームなど多彩な施設が用意されています。こうした施設は、既存のコミュニティの継承とともに新たなコミュニティの形成にも役立つでしょう。
マンションの敷地中央への入り口である大きな門、グランドゲートは、日中は開けられています。地域との結びつきを大切にする仕組みも地域のコミュニティを担ってきた大規模団地ならではの発想でしょう。
3~5戸に1基のエレベーターで独立性の高いプランニング
住戸に光と風を届けるゆとりある敷地計画
住戸のプランニングにも、桜上水団地の良さの継承がなされています。かつて間取りは、両面バルコニーで2住戸に1階段の独立性の優れたプランニング。「桜上水ガーデンズ」では、3から5戸に1基のエレベーターとすることで、両面バルコニープランなど独立性と通風・採光の良いプランニングに仕上がっています。敷地にゆとりを持たせるため、容積率を消化していないこともあり通常は、2mまでの奥行のバルコニーも一部の奥行を深く確保しており高い住み心地を実現しています。
隅々まで行き届いたプランニングのこだわりは、何気ないスペースでも感じます。例えば、住棟エントランス内の通路も幅をしっかり確保し意匠の凝らした風格のあるつくり。多くの意見を集約し一つ一つを丁寧に考え抜いた成果とも言えるのではないでしょうか。
事業にあたった野村不動産のプロジェクト担当者によると、こうした建替えプロジェクトを購入するメリットとして、1つ目に得難い好立地でマンションが購入できる点、2つ目に地権者のニーズが反映され既存樹の継承など商品性が向上すること、3つ目にコミュニティが既にあるマンションに住める安心感を挙げました。通常用地取得から分譲が開始までは2年~3年だと思いますが、プランニングに時間をかけた成果が形になって表れていると感じました。敷地内に受け継がれた壮観な樹木を見ると、『奇跡の再生プロジェクト』と言っても過言ではないでしょう。首都圏最大級の建替えということもあり多くの人の思いを感じます。
今後、全国で老朽化や住民の高齢化で課題を抱えるマンションはますます増えていくでしょう。その成功モデルの一つとして、「桜上水ガーデンズ」はきっと語り継がれていくと思います。そして、20年、30年経過しても古さを感じない。そういったマンションになっていくのではないでしょうか。