読書は人にとって最高レベルの「知的活動」
読書をすると心が健康になるのはなぜか
近年ではスマホなどのデジタルデバイスに多くの時間が費やされています。単行本を手に取って読むことは、ほとんどない、という方もいるかもしれません。
しかし、読書は古くから人の主要な余暇の過ごし方のひとつでした。読書をしているときは、人間の認知機能である、集中力・記憶力・思考力そして言語能力などが総動員されます。本の中の世界に接することは、静かでありながら、人の知的活動の中でも最高レベルの過ごし方とも言えるでしょう。
認知機能は筋肉と同じく、長い間使わないでいると機能が低下してきます。また、加齢によっても徐々に低下していく傾向があります。日々の小さな積み重ねは、大きな差を生み出すのです。
読書は認知機能をほぼ全般に動員するという面からも、知的鍛錬の手段としては理想的です。実際に、読書を習慣化している方の間では認知症の発症率が低くなっているという研究報告もあります。日々の知的鍛錬の一手段という面から、読書を見るのも良いことかもしれません。
読書とメンタルの意外な関係……本を読むと気持ちが楽になるのはなぜ?
読書の目的はさまざまでしょうが、なかには「本を読むと気持ちが楽になる」と、読書を一種の精神安定剤のような位置づけにしている方もいらっしゃるようです。読書はメンタルに影響するのでしょうか? 精神医学的に考察してみましょう。人の気分は、さまざまな要因で落ち込むことがあります。思いがけない嫌な出来事はもちろん、不安定な天気や、その日の体調から、冴えない気分になることもあるかもしれません。
その気分がさらに大きくなってしまうかを大きく左右するのが、その人の「思考」です。もし誰かに言われたネガティブな言葉にとらわれて、そのことばかり考えてしまうと、気持ちの落ち込みはさらに大きくなってしまうかもしれません。
気分を安定させ、落ち込みそうな気持を改善するには、「ネガティブな思考」にいかにうまくストップをかけられるかがカギになります。これは精神療法のひとつである「認知行動療法」にもつながるもので、実際に、うつ病の治療に役立つ心理的要素です。うつ病を増悪させやすいネガティブな思考パターンにストップがかかれば、症状の改善につながります。
日常の冴えない気分に対しても、悪い思考に上手にストップをかけることを意識していきたいものです。その手段として、読書は有効です。たとえ、その時の自分には関係のない物語であっても、読書をしている間は、ネガティブな思考も含め、他のことを悶々と考えることがなくなります。
本の内容がすいすいと頭に入り始め、うつうつとしていた気分が楽になったような感覚がある場合、このメカニズムが作動しているのだと思ってください。
読書は「心の健康維持」にも有効
ここまで解説したことも含めて、読書の心の健康効果はさまざまです。- 読書に集中することで、ネガティブな思考をとめることができる
- 加齢などによる認知機能の低下を防ぐためにも、理想的なトレーニングになる
- 本の内容に感動したり、感情が刺激できる。また、他人への共感力もつけることができる
- よくない方法でのストレス発散(暴飲暴食や衝動買いなど)をそらす手段になる
- 語彙が豊かになるなど、言語能力が上がり、コミュニケーションのストレス軽減にも役立つ
今回は読書のメンタル面への効果を詳しく解説してみました。もちろん、読書を単に楽しみのひとつ、あるいは新しい知識を得るための実用面を大切にされている方も多いでしょう。いずれにしても、読書の内面にもたらすプラスの効果にも注目することで、読書の新しい魅力も感じながら、楽しんでもらえればと思います。