食と健康/健康的な体型づくりと食生活

食べ過ぎの健康リスク…「食事を残す」選択も必要

【管理栄養士が解説】食べ過ぎが体に悪いことはよく知られています、一方で「残さず食べよう」「食べ物を粗末にしてはいけない」という考えも、多くの日本人が持つ美徳です。健康のために“食事を残す勇気”が必要な場合とは? 食事の適量について解説します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

「食事を残さず無理して完食」は不健康?

大量の料理で食べすぎには要注意

食べきれないと思ったら、ムリして食べるより残す勇気を持つことが大切なときがあります。それはどんなときでしょうか。

「食事を残してはいけない」と、両親や学校できつく教えられてきた人は少なくないでしょう。食材をつくってくれた農家の人や、調理をしてくれた人を想う日本人の美徳です。

提供する側が食べる人の適量を知っていて料理を出した場合は、「残す必要がない」=「残してはいけない」という状況もあります。例えば、小学校の給食などでは、その年齢の子供さんに見合った量を提供しています。成長や体調の違いもありますので、絶対にいけないとまでは言いませんが、基本的には残さずに食べることが望まれます。

しかし、外食など自宅以外の場所で食事をする場合、食べる人にとっての適量ではない場合もあります。そして「残してはいけない」という美徳にとらわれて、無理をしてでも残さず食べきるようにしている人も多いようです。

以前の記事でもご説明しましたが、実は食べ過ぎは疲労を生み出し、老化を早めてしまうなど、体に悪影響を与えることが知られています。もし美徳を守ることで将来の健康が危ぶまれるのであれば、勇気を持って、残す選択をすることも大事なことのように思います。

<目次>  

食べ過ぎの対処法は「一食分」を知ること

食事をする女性

何よりも、あなたが健康であることが重要です


食事を残すことができる人とできない人の差は、「一食分」の食事をどのように考えるかという、定義の差です。

食事を残すことができる人は、「一食分」を自分の胃袋の容量に見合った量として考えることができます。食べ終わったときの自分の感覚で「もうちょっと食べられるけれど、体調が悪くなっては意味がない。このくらいでやめておこう」というように、身体との対話で食事を終わらせることができるのです。

逆に、食事を残すことができない人は、出された皿に乗っている量が「一人前」なので、自分の適量に見合っていないとしても、周りの目を気にして何とかして食べきろうとしてしまいます。

「残してはいけない」という美徳や、料理・食材に関わる方への感謝を持つことは大切ですし、近年ではフードロスなどの社会問題もしばしば報道されています。食べ物を粗末にしないことはとても大切なことですが、身体に負担をかけて健康を害するような食べ方を続けることもまた問題です。諸外国には恵まれない子供たちがいて、また国内であっても、満足な食事を食べることができない方がいるのだから……と考える方もいらっしゃいますが、残念ながら目の前に出された食事を諸外国や今困っている方にすぐに届けることはできないのです。

確かにもったいないと思いますが、無理をして食べて肥満や生活習慣病を助長するよりも、健康を守って元気に働き1円でも多く収入を得て、その中から恵まれない子供たちや問題を解決するような福祉サービスなどに少しでも寄付すると良いでしょう。そちらの方が本当に恵まれない子供たちを守り、総合的によりよい状況を作っていることにつながるのではないでしょうか。
 

食事を残さない・食品廃棄を防ぐ方法……オーダー時や買い物での注意

残した食事が廃棄されるのは抵抗があるのでしたら、最初に残さなくて済む量をオーダーすることが大切です。外食ではおかずの量の調節は難しいかもしれませんので、米飯やパンなどで調節することになります。

ありがたいことに、最近では外食産業でも細かく「小盛」「大盛」などのオーダーをきいてくれるお店が増えてきました。このような背景が出てきたのは、「残したくない」というお客様の要望が強くあることをお店側でも察知していること、そしてお店側でも食べ残しがあるより、気持ちがいいということではないでしょうか。
冷蔵庫

安いからといって量を考えず購入すると、使い切るために量の多い料理を作ることになります


また、自宅で購入する食材の量も、「安い」からではなく「食べきれる量」を購入するようにしましょう。自宅では、食卓で料理を残すこと以上に、冷蔵庫の中に食材を入れっぱなしにしたまま忘れてしまい、ダメにしてしまうことも多いと思います。冷蔵庫の中は常に整理整頓をして、何が入っているかがひと目で分かるようにしておきましょう。

冷蔵庫にある材料を全部使い切りたい、と言って大量に作ってしまうことも往々にしてあるようです。冷凍保存できる料理は小分けにして冷凍保存すればよいですが、保存がきかない料理の場合は食べきれる量だけを作るようにしてください。

いずれの場合も、食事を残さなければならないのが辛いことは間違いありません。しかし、“食事を残す勇気”を持つ必要があるシーンでは、食べ物と自分の身体のどちらが大事かという二択になります。この二択は恋と仕事を比べるというように、どちらとも選び難いものとは違います。食べ物は代わりがあっても、自分の身体にはスペアはないのです。日に何度も行うので軽い選択のようではありますが、チリも積もればなんとやらです。ぜひ、賢い選択をしていきましょう。

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