「良い自分」への執着と「悪い自分」への不安
何気なく口をつく言葉が、いつも「良いか、悪いか」に二極化していませんか? たとえば、「あの人は良い人、悪い人」「こんな私は良い私、ダメな私」「勝っているか、負けているか」というように。そして、こうした二極化の発言が目立つ人は、毎日がストレスでいっぱいではないかと思います。
価値観が「良いか、悪いか」に分裂していると、自分の状況に安心することができず、心はいつも不安定です。たとえば、優秀で人から賞賛される「良い自分」でなければ、何の価値もない「悪い自分」に思えてしまう。そのため「良い自分」でい続けるための強迫的な努力を続けますが、そんな自分をキープする緊張感で心はいつも張り詰めているのです。
そして、一度ぶざまな「悪い自分」に堕ちてしまったら、自分には何の価値もないと思いこんでしまいます。そんな自分にならないようにと細心の注意を払っても、何かのきっかけで一度「悪い自分」に堕ちてしまうと、そこから再起できず、底なし沼にはまってしまう人が少なくありません。
他人や環境も「良いか、悪いか」に二極化してしまう
そんな「良い自分」「悪い自分」の価値観は、外界にも投影させていきます。そのため、いつも「良い人」や「良い状況」に囲まれていなければ安心できず、そうでないと不安でたまらなくなります。自分と同じ考えを持ち、自分と同じ行動をする人は「良い人」。だけれど、自分の意見に異を唱えたり、自分の価値観から少しでもずれた人は、その瞬間から「悪い人」に転落です。環境に対しても同様です。自分の理想通りの先生や上司がいて、理想通りの指導をしてくれれば「良い学校、良い会社」だけれど、少しでも理想と離れてしまうと「悪い学校、悪い会社」に転落。こんな二極化思考が日常であり、安心できる安定した自分と環境を経験できないのです。
つまり、「良い」と思えばその対象に全面的に信頼を寄せますが、少しでも理想と違うと「悪い」と感じて敵意でいっぱいになるのが常。しかし、自分の思う通りに人が同意し、思い通りの環境が用意されることなどありえないので、いっとき信頼を感じてもすぐに「裏切られた」と思い込みます。そうして、しまいには「世の中に信用できることなど何もない」という虚無感に陥ってしまうのです。
では、その二極化思考にはどのように対処すればいいのでしょう? 次のページで考えてみましょう。