世界の同性カップルの出産・育児状況
同性カップルの子育ては米国では普通
イギリス、フランス、スペインやオランダなどといった西欧諸国及びアメリカでは、出産・育児をしている同性カップルがいます。日本では同性カップルが出産・育児をすることはいわば現行の法律内では想定外のことなので、権利としては認められていません。アメリカ合衆国国勢調査局が2011年に発行した”同性カップルの世帯” というレポートによると、2010年時点でアメリカには593,324組の同性カップルが世帯として暮らしており、そのうち115,064組の同性カップルは子どもを育てていると答えました。異性カップルほどではありませんが、調査結果を見る限り、アメリカでは多くの同性カップルが子どもを育てているということがわかります。
精子を東急ハンズにある容器で注入
日本でも子どもを育てている同性カップルはいます。私は去年、LGBTの社会状況の調査の一環で子どもを育てている同性カップルの方にいろいろとお話を伺うなど、精子提供に関して調査をしたりしたことがあります。レズビアンカップルの場合は、男性から精子提供をしてもらうことで自分たちで出産をすることができます。しかし、インターネット上に存在する「精子バンク」などと書いているホームページは、すべて、個人的に行われています。アメリカの精子バンクは国や州の統括にある組織が運営しているため、性感染症の有無や精子の損傷がないかなど厳しくチェックされていますが、日本の”精子バンク”は国や自治体、医療関係組織は一切関与しておらず、個人的に行われているため性感染症の感染や損傷した精子を提供されるリスクがあります。また、ストレートかつ生殖に関して何かしら障害のあるカップルであれば病院で体外受精を行うことができますが、病院は同性カップルの体外受精には応じません。そのため東急ハンズなどにある注射器のような容器を買い、生理のタイミングを計らって「今日がベスト!」という日に男性の友人に精子を提供してもらい(あらかじめ性感染症チェックを受けておいてもらいます)、容器から直接女性器に注入するしかないというのが現状で、実際に子どもを授かろうとしているレズビアンカップルはこのような方法で妊娠を試みています。
アメリカの精子バンクから精子を購入して日本に輸入するという方法もあります。しかしこれをするためには精子を冷凍して輸入する必要があるので、冷凍庫とともに自宅に届きます。私は見たことがないので明確にはわからないのですが、話によるとこの冷凍庫が結構大きく、かつ非常に重いそうです。また医療用のため扱いが一般人には難しいので、できれば受け取ってくれる病院を探す必要が出てきますが、これを受け取ってくれる病院を見つけることは非常に難しいです。
現実に制度が追いついてきていない
友人の男性から精子提供を受ける場合、親権は出産した女性の方とその男性にあるのであってレズビアンカップル2人にあるわけではありません。よって、どんなにその男性が良い人だったとしても、ある日いきなり男性が親権を主張してきた場合、対抗することができません。事前に三者の間で親権に関して契約をしっかり交わしておくリスクヘッジ策はありますが、判例が存在しないため契約書の有効性は定かではありません。
また「同性カップルの体外受精に病院は応じない」、「精子提供の冷凍庫を受け取ってくれる病院を見つけることは非常に難しい」と先述しましたが、これは決して病院が悪いわけではなく、「日本産婦人科学会」の出している倫理見解の1つ、「体外受精・胚移植に関する見解」が原因なのです。
病院の専門医は、不妊治療や生殖医療の手段として行われない体外受精の手助けをすると、日本産婦人科学会に警告を受けたり、除外されたりしてしまいます。警戒や除外によってどのような不利益を病院や医者が具体的に被るのかまでは私は分からないのですが、とにかく病院や医者は日本産婦人科学会の見解に反した行動をとりたくないので、同性カップルを助けたくても助けられないのです。体外受精・胚移植(以下、本法と称する)は、不妊の治療、およびその他の生殖医療の手段として行われる医療行為であり、その実施に際しては、わが国における倫理的・法的・社会的基盤に十分配慮し、本法の有効性と安全性を評価した上で、これを施行する。
体外受精・胚移植に関する見解 - 日本産婦人科学会
子どもがかわいいと思うのはLGBTも同じ